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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2006年07月09日

少年少女回帰 

ヒット商品応援団日記No79(毎週2回更新)  2006.7.9.

前号で「潮目が変わった」と書いた。片方に振れていた振り子が反対方向へと向かっていく。既にその予兆はあり、昨年「Always三丁目の夕日」を始め多くの現象を取り上げてきた。劇場型から日常型へ、洋から和へ、人工から自然へ、仮想現実から体験現実へ、極端からバランスへ、刺激から穏やかさへ、軽さから奥行へと。こうした価値観の揺れ戻しを現象面から見ていくと「回帰現象」となる。例えば、原点回帰あるいは基本回帰、企業でいうと創業への回帰であり、本業への回帰となる。個人でいうと、等身大の自分への回帰となる。虚飾や無理、背伸びといったことを削ぎ落とし、自身の感受性のままに戻ろうとすることである。生活者、特に都市生活者のライフスタイル変化として見ていくと、例えば”スープカレーも食べてきたけれど、やはり本格カレーはインドのチキンカレーよね”あるいは”やはりおふくろが作るじゃがいもカレーが一番”といった現象となって現れてくる。ファッションでいうと、茶髪から黒髪への変化であり、ダメージジーンズからリーバイスのようなオーセンティックなジーンズへの回帰となる。一時的なトレンド消費から、継続する定番消費への変化である。
既に、都心回帰、昭和回帰、あるいは日本文化回帰といった多くの現象が出現してきた。今、団塊シニアの動向が注目されているが、どんな回帰現象となって現れてくるであろうか。私は、まず「少年少女回帰」が始まると考えている。今流行のアンチエイジングの先、もっと生命力が、こころが輝いていた世界への回帰である。団塊世代の少年少女期はまだまだ物が乏しかった時代であった。食べることに精一杯であり、「遊び」道具にまでお金を投じることは少なかった。男性でいうと、その多くは野球少年であり、ギター少年であった。回帰の在り方からいうと、プロ野球でいえば、「マスターズリーグ」などは今後更に盛んになるであろう。ギター少年は周知の「おやじバンド」が全国隅々まで結成され広がるであろう。高額の楽器が不思議な程売れると思う。いやもう既に売れている。こうした趣味、スポーツでの回帰は益々盛んになっていく。ある意味ではコレクター、「大人のオタク」が遊び道具を求めて街の横丁・裏筋に出かけることとなる。3ヶ月程前のTV番組「人生の薬園」だと思ったが、子供の頃憧れの食べ物であったオムライスをメインにしたお店を夫婦二人でオープンさせるストーリーであった。今の若い世代にとって卵はありきたりの食品であるが、当時は大切な栄養源であった。朝食と言えばご飯にみそ汁、あとは納豆か生卵であった。周知の通り、今や「納豆ブーム」であり、「卵かけご飯専用醤油」が注目されている。ところで、話を元に戻すが、ご夫婦の店づくりに奥さんも協力するのだが、奥さんにも小さなやり得なかった夢がある。その夢は手芸であり、作られた手芸品を店のなかで販売することがオムライス店出店の条件であったという。こうした小さな起業も「少年少女回帰」の一つだと思う。つまり、全てがやりえなかった「自己表現=小さな夢」として回帰していく。好きな山登りが高じて、ヒマラヤを目指すシニア登山家、好きで集めたLPレコードを聞いてもらいたくてカフェを開店させる、こうした一見不思議に見える現象が至る所に現れてくる。少年少女期に描いた夢をかなえることの中に、いやその夢そのものに多くのビジネスチャンスが生まれてくる。社会人学校を含め、各人のテーマに沿った専門学校が流行り、シニアと若い世代が共に勉強するといった光景が増えてくる。再学習、再楽習といったスクール市場が大きくなり、百貨店や専門店、あるいは旅行代理店はこうしたスクールとネットワークを組むことになる。例えば、自然に囲まれたいと山歩きを始め、次第に本格的登山の講習を受けるようになる。当然、登山用具はまるでプロのようなものを求めるようになるだろう。そして、いつしか憧れの山、ヒマラヤに登ってみたいと思うようになる。このように単純に物語が進むとは思わないが、少年少女が青年・大人へと成長していく様を思い描くことは重要である。既に、こうしたプログラム化やネットワーク化については百貨店から始まっている。
井上陽水の初期に「人生が二度あれば」という曲がある。亡き父を想い「次なる人生を楽しんでもらいたかった」とする曲である。今や、二度目の人生を「少年少女」になって歩む時代となった。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:23Comments(0)新市場創造