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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2006年06月18日

キラーコンテンツ  

ヒット商品応援団日記No73(毎週2回更新)  2006.6.18.

キラーコンテンツという言葉は一時期流行ったので記憶に残っていると思う。ある商品やサービスを普及させるきっかけとなるコンテンツ(情報やサービス)のことをキラーコンテンツと呼んでいる。あまり良い例ではないが、家庭用のビデオ普及のキラーコンテンツにはアダルトビデオがそうであった。最近では、コンテンツを更に明確化しようと「キラーアプリケーション」「キラーソフト」など細分化されてきている。しかし、言葉の意味合いを少し範囲を広げれば、今回のワールドカップが薄型テレビの拡販に大きく働いていることもキラーコンテンツと呼んでもかまわないと思う。つまり、小売業的に言うと、全てのフロア・売り場が平均的に売れている訳ではない。そこには、キラーコンテンツに近い、ブランドや商品、時にはイベント・催事などを組み合わせ編集している。もっと平易に言えば、「強い目的買い」と「ついで買い」といっても、それほど間違いではない。いづれにせよ、強く引きつける情報&サービスのことであり、誰もがこのキラーコンテンツを探している。ある一つの物語、ある一つのプログラム、ある一つの使用方法、概念を広げればたった一店、たった一人、たった何かによって、市場が異なるフェーズ(相)へと移行してしまうコンテンツである。
どこにでもある金太郎あめのようなテナントの入った商業施設であった渋谷109が、どこにもない固有なティーンのファッションビルへと変貌していく点となったのは、やはり「エゴイスト」であろう。大人になるための儀式衣装として「セクシー系」のアイテムが並び、入学を望むティーンは渋谷に集まったのである。そこには祭司をつかさどるカリスマ店長がおり、儀式を終えた生徒は商品というお土産を買い儀礼を終えるのである。ネーミングにあるように、「私」を超えた「エゴ」のスタイルというコンセプトは、他との小さな違いではなく、全く違う世界を提示している。そこから、ガングロ・山姥という婆娑羅ファッションが生まれたのである。
さて、今やインポートブランドの代名詞になっているシャネルも同様だと私は思っている。ココシャネルには多くの逸話が存在している。「この服は売りに出せないわ。私のものになっていないから」「仕事は私の命をむさぼりくった。私の恋さえも」…過去の破壊者、自由に生きる恋多き女、激しい、怒り、…多くの人がそうココシャネルを評しているが、ココシャネルにとっての服とは、そうした生き方や生活、アイディア等、全てが一つのスタイルとして創られたことにある。逸話はそうしたスタイル創造の過程として必然的に出てきたものと思う。クチュール以外でも単なる臭い消しであった香水を清潔でエレガンスなものへと革新させ「No.5」「No.22」を出していくことは知っての通りである。
エゴイストがシャネルのようになれるかといったことではない。エゴイストは渋谷109を一変させ、シャネルはヨーロッパ社交界のクチュールを始め香水、アクセサリーなど「オシャレ」世界を一変させた。いささか強引ではあるが、そこには「キラーコンテンツ」の持つ市場への在り方が見て取れる。エゴイストにもシャネルが生きた時代と同様に、ティーンにとって「既成」に対する破壊、反逆、アンチ、を受け入れる背景がある。別の言葉でいうならば、多様な価値観が錯綜、衝突するパラダイムの転換期市場ということができる。違いはシャネル自身が「モードではなく、私はスタイルを創り出したのです」と語っているように、エゴイストがモードであるのに対し、シャネルは「生き方」としてのスタイルを貫き通した点にある。変化への破壊であれば、破壊し続けることが宿命となり、エゴイストはコンビニ以上の鮮度を保つためのマーチャンダイジングを必要とする。一方シャネルの場合、後継者であるカール・ラガーフェルドが言うように、「スタイルを受け継ぐのではなく、シャネルの精神を受け継ぐ」ということになる。こうした違いはあっても「既成」への強い反逆、破壊がキラーコンテンツの本質であると思う。
話は変わるが、一連のライブドア事件、村上ファンド事件を思うにつけ、私はその倫理性の欠如について断罪してきたが、一方日本の証券市場をある意味で様変わりさせた「キラーコンテンツ」のように思えて仕方が無い。ここ1〜2年規制緩和と共に、書店の棚は金融関連の書籍・雑誌で埋められ、主婦のデイトレーダーが話題になり、証券市場の20%を個人株主が占めるようになったのも、堀江・村上というコンテンツが大きく作用してきたことには間違いない。結果として、自らを「キラー」としてしまったが、一度キラーコンテンツがどのように証券&金融市場に変化を与えてきたかスタディしたいと思っている。(続く)

訃報  6月13日、ヒット商品応援団の仲間である梅原豊和氏が亡くなられた。あまり大阪に行く機会がなく、昨年12月に食事をしたのが最後であった。癌との闘病中であったが、そんなそぶりは微塵も見せずによく食べていた。大阪から離れず、大阪のデザイナーのために少しでも貢献したいと、その時語っていたが、元来商売人であった梅原氏が死期を感じていたのかもしれません。叔父さんである梅原龍三郎画伯ばりの強いタッチのデザイナーであったが、あの世でもヒットデザインを創り続けることと思います。感謝、そしてご冥福をお祈りいたします。ヒット商品応援団 飯塚敞士

追記 −1 6月14日以前のブログをご覧いただく場合は下記のアドレスにアクセスください。http://remodelnet.cocolog-nifty.com/remodelnet/

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Posted by ヒット商品応援団 at 16:19│Comments(2)新市場創造
この記事へのコメント
細かな分析と達観した理論は、
我々にとっても非常に参考となります。
今後も独自のマーケティング論やご意見
の投稿をお願い致します。

           仙台だてBLOGスタッフ
Posted by 仙台だて男 at 2006年06月19日 12:53
細かな分析と達観した理論は、
我々にとっても非常に参考となります。
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