2017年10月29日
日本観光応援団の2回目は「もう一つのクールジャパン」
ヒット商品応援団日記No690(毎週更新) 2017.10.29.
「観光地化」というキーワードを使ったのは10年前の5月のブログ「変わる観光概念」であった。ちょうど東京ミッドタウンと東京駅新丸ビルがオープンし、連日10数万人の観光客が押し寄せた状況を踏まえてのブログであった。勿論、都市観光の先駆的事例としては1990年代後半の渋谷109で、当時中学生の修学旅行先の一つが東京ディズニーランドと渋谷109であった。従来の観光資源としての自然や歴史文化といったものから、新しい、面白い、珍しい「何か」を求めて都市へ、特に東京に人が集まる現象から「観光地化」というキーワードが生まれた。そして、リーマンショック以降、最大の観光集客があったのは周知の東京の新名所となった東京スカイツリーで連日20万人超の観光客が押し寄せた。そうしたことを踏まえ、次のようにブログに書いた。
『東京タワーを「Always三丁目の夕日」が描いたように、あらゆるものが荒廃した戦後日本の復興のシンボル、夢や希望を託したタワーであったのに対し、東京スカイツリーにはそうした物語はない。あるのは世界一高い634mのタワー、その眺望である。しかし、それでも人が押し寄せるのは東京が複合的テーマパ-ク、観光都市として存在しているからである。
東京に象徴される都市商業を舞台化することによって更に世界中から集客する時代となった。その舞台空間は非日常的でそこに繰り広げられる、新しい、珍しい、面白い、そうした刺激に酔うことになる。』
実はこうした視点から訪日外国人市場に着眼し、「都市観光」をテーマにした「日本観光応援団」をスタートさせた次第である。そして、そのポイントは「複合的テーマパーク」というMD(マーチャンダイジング)にある。どんな魅力であっても、単一では一過性に終わるということである。Facebookの第一回で「銀座の歩き方」としたのも、「表通り」だけでなく「横丁裏通り」という「複合の街」によって観光地化が成立しているということであった。「表通り」だけではダメで、「裏通り」も必要で、その奥行きこそが観光地化には不可欠であるということである。つまり、この奥行きこそが「観光物語」を創るということでもある。
訪日外国人市場とはどんな市場なのかを表しているデータがある。訪日外国人の多くが訪日前に目を通すガイドサイト「トリップアドバイザー2017年」が発表されている。周知のように世界の旅好きの「口コミサイト」であるが、人気の日本のレストランランキングが次のようになっている。
(詳しくはトリップアドバイザー http://tg.tripadvisor.jp/news/)
1位;お好み焼き ちとせ(大阪市)
2位;ニーノ (奈良県奈良市/ピザ・パスタ)
3位;クマ カフェ (大阪府大阪市/ピザなど)
4位;お好み焼き 克 (京都府京都市)
5位;韓の台所 カドチカ店 (東京都渋谷区/焼肉)
全て小さな横丁路地裏の店で、隠れた名店ばかりである。私が一昨年から街場の名もない名店に着目すべきとの指摘そのままのランキングとなっている。訪日外国人にとっても、日本人が日常送っている「生活」に興味があるということである。4年ほど前に原宿を取り上げた時のことだが、表参道の表通りから少し路地に入った場所に餃子専門店「東京餃子楼」に行列ができていた。三軒茶屋にある普通に美味しい専門店であるが、原宿にも出店しているのかと少し驚いたが、その行列のほとんどが訪日外国人であったことにさらに驚いたことがあった。当時は単純に訪日外国人も餃子が好きなんだなと思っていたが、まさに街場の餃子店にも興味関心があるということだ。更に言うならば、少し前から「体験旅行」がキーワードとなっているが、最近では地方の農村体験ツアーが始まっている。こうした農村生活を体験してみたいということも、日本人が持っている興味関心事とかなり重なり合っているということである。
ランキングされたレストランを見てもわかると思うが、英語に堪能なスタッフのいる店ばかりでなく、たどたどしい会話であるがファミリーなもてなしの店がほとんどである。都市部の旅館が衰退する中で、いち早く訪日外国人の受け入れを決断した東京谷根千の旅館「澤の屋」と同じである。顧客のことを思い、真摯に向き合う日本人の姿である。訪日外国人も、日本人も、実は「知らない日常生活」「埋もれた生活文化」が山ほどあり、そのことに応える、そんな当たり前のことが問われているのだ。
こうした背景から「日本観光応援団」を立ち上げたわけであるが、第二回の横丁路地裏観光は東京駅地下に広がるフードパークを取り上げてみた。駅ホームの下には日本全国の飲食店やお土産店が出店しており、既に「デパ地下」を超えた存在になっている。トリップアドバイザーのランキングを見てもわかるようにそれらランキング先は団体旅行のレストランではなく、個人旅行先そのものである。それら個人旅行は訪日外国人旅行者の半数を既に超え続けており、その移動のポイントとなっているのが「駅」である。数年前から駅への要望事項の第一位がWiFiの整備で、その意味することはスマホを頼りに旅行するというスタイルが基本になっているからである。
この東京駅地下のフードパークには日本全国の新しい、面白い、珍しい「食」が集積されており、それまでの出張サラリーマンの出がけに買う駅弁やお土産をとうに超えた商業施設となっている。日本人には慣れ親しんだ駅弁「峠の釜飯」なども紹介したが、訪日外国人にとっては見知らぬ地方に出会える「場」でもある。日本人観光客がNYを訪れる時、一度はターミナル駅「グランドセントラル オイスターバー」で食事をしたことと思う。NYらしさを感じる「食」の一つであるが、この東京駅地下のフードパークはそうした日本らしさの一つになりつつある。
そして、東京駅地下を取り上げたもう一つの理由がフードパーク「グランスタ」が表通りであるならば、東海道新幹線ホーム下にある東京駅一番街が横丁路地裏に当てはまり、いわば複合的なテーマパークになっていることにある。常に行列の絶えないラーメンの「六厘舎」を始め、立ち食い寿司の「函館 函太郎」や新業態の「横浜崎陽軒」など「ここだけ」という専門店が集まっている。つまり、日本の食の奥行きをさらに深めているということである。「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて4年が経とうとしている。アニメやコミックといった日本が生んだ文化経済の次に、食文化、特に地方文化の登場が待たれている。
そうした東京駅地下のフードパークを訪日外国人向けに「もう一つのクールジャパン」として 下記のFacebook上で公開している。
「日本観光応援団 https://www.facebook.com/profile.php?id=100007701331478」
なお、京都の友人が京都の横丁路地裏にある「食」や「祭り」などをFacebookの「ホーム」にてガイド投稿してくれているので是非ご一読ください。(続く)
「観光地化」というキーワードを使ったのは10年前の5月のブログ「変わる観光概念」であった。ちょうど東京ミッドタウンと東京駅新丸ビルがオープンし、連日10数万人の観光客が押し寄せた状況を踏まえてのブログであった。勿論、都市観光の先駆的事例としては1990年代後半の渋谷109で、当時中学生の修学旅行先の一つが東京ディズニーランドと渋谷109であった。従来の観光資源としての自然や歴史文化といったものから、新しい、面白い、珍しい「何か」を求めて都市へ、特に東京に人が集まる現象から「観光地化」というキーワードが生まれた。そして、リーマンショック以降、最大の観光集客があったのは周知の東京の新名所となった東京スカイツリーで連日20万人超の観光客が押し寄せた。そうしたことを踏まえ、次のようにブログに書いた。
『東京タワーを「Always三丁目の夕日」が描いたように、あらゆるものが荒廃した戦後日本の復興のシンボル、夢や希望を託したタワーであったのに対し、東京スカイツリーにはそうした物語はない。あるのは世界一高い634mのタワー、その眺望である。しかし、それでも人が押し寄せるのは東京が複合的テーマパ-ク、観光都市として存在しているからである。
東京に象徴される都市商業を舞台化することによって更に世界中から集客する時代となった。その舞台空間は非日常的でそこに繰り広げられる、新しい、珍しい、面白い、そうした刺激に酔うことになる。』
実はこうした視点から訪日外国人市場に着眼し、「都市観光」をテーマにした「日本観光応援団」をスタートさせた次第である。そして、そのポイントは「複合的テーマパーク」というMD(マーチャンダイジング)にある。どんな魅力であっても、単一では一過性に終わるということである。Facebookの第一回で「銀座の歩き方」としたのも、「表通り」だけでなく「横丁裏通り」という「複合の街」によって観光地化が成立しているということであった。「表通り」だけではダメで、「裏通り」も必要で、その奥行きこそが観光地化には不可欠であるということである。つまり、この奥行きこそが「観光物語」を創るということでもある。
訪日外国人市場とはどんな市場なのかを表しているデータがある。訪日外国人の多くが訪日前に目を通すガイドサイト「トリップアドバイザー2017年」が発表されている。周知のように世界の旅好きの「口コミサイト」であるが、人気の日本のレストランランキングが次のようになっている。
(詳しくはトリップアドバイザー http://tg.tripadvisor.jp/news/)
1位;お好み焼き ちとせ(大阪市)
2位;ニーノ (奈良県奈良市/ピザ・パスタ)
3位;クマ カフェ (大阪府大阪市/ピザなど)
4位;お好み焼き 克 (京都府京都市)
5位;韓の台所 カドチカ店 (東京都渋谷区/焼肉)
全て小さな横丁路地裏の店で、隠れた名店ばかりである。私が一昨年から街場の名もない名店に着目すべきとの指摘そのままのランキングとなっている。訪日外国人にとっても、日本人が日常送っている「生活」に興味があるということである。4年ほど前に原宿を取り上げた時のことだが、表参道の表通りから少し路地に入った場所に餃子専門店「東京餃子楼」に行列ができていた。三軒茶屋にある普通に美味しい専門店であるが、原宿にも出店しているのかと少し驚いたが、その行列のほとんどが訪日外国人であったことにさらに驚いたことがあった。当時は単純に訪日外国人も餃子が好きなんだなと思っていたが、まさに街場の餃子店にも興味関心があるということだ。更に言うならば、少し前から「体験旅行」がキーワードとなっているが、最近では地方の農村体験ツアーが始まっている。こうした農村生活を体験してみたいということも、日本人が持っている興味関心事とかなり重なり合っているということである。
ランキングされたレストランを見てもわかると思うが、英語に堪能なスタッフのいる店ばかりでなく、たどたどしい会話であるがファミリーなもてなしの店がほとんどである。都市部の旅館が衰退する中で、いち早く訪日外国人の受け入れを決断した東京谷根千の旅館「澤の屋」と同じである。顧客のことを思い、真摯に向き合う日本人の姿である。訪日外国人も、日本人も、実は「知らない日常生活」「埋もれた生活文化」が山ほどあり、そのことに応える、そんな当たり前のことが問われているのだ。
こうした背景から「日本観光応援団」を立ち上げたわけであるが、第二回の横丁路地裏観光は東京駅地下に広がるフードパークを取り上げてみた。駅ホームの下には日本全国の飲食店やお土産店が出店しており、既に「デパ地下」を超えた存在になっている。トリップアドバイザーのランキングを見てもわかるようにそれらランキング先は団体旅行のレストランではなく、個人旅行先そのものである。それら個人旅行は訪日外国人旅行者の半数を既に超え続けており、その移動のポイントとなっているのが「駅」である。数年前から駅への要望事項の第一位がWiFiの整備で、その意味することはスマホを頼りに旅行するというスタイルが基本になっているからである。
この東京駅地下のフードパークには日本全国の新しい、面白い、珍しい「食」が集積されており、それまでの出張サラリーマンの出がけに買う駅弁やお土産をとうに超えた商業施設となっている。日本人には慣れ親しんだ駅弁「峠の釜飯」なども紹介したが、訪日外国人にとっては見知らぬ地方に出会える「場」でもある。日本人観光客がNYを訪れる時、一度はターミナル駅「グランドセントラル オイスターバー」で食事をしたことと思う。NYらしさを感じる「食」の一つであるが、この東京駅地下のフードパークはそうした日本らしさの一つになりつつある。
そして、東京駅地下を取り上げたもう一つの理由がフードパーク「グランスタ」が表通りであるならば、東海道新幹線ホーム下にある東京駅一番街が横丁路地裏に当てはまり、いわば複合的なテーマパークになっていることにある。常に行列の絶えないラーメンの「六厘舎」を始め、立ち食い寿司の「函館 函太郎」や新業態の「横浜崎陽軒」など「ここだけ」という専門店が集まっている。つまり、日本の食の奥行きをさらに深めているということである。「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて4年が経とうとしている。アニメやコミックといった日本が生んだ文化経済の次に、食文化、特に地方文化の登場が待たれている。
そうした東京駅地下のフードパークを訪日外国人向けに「もう一つのクールジャパン」として 下記のFacebook上で公開している。
「日本観光応援団 https://www.facebook.com/profile.php?id=100007701331478」
なお、京都の友人が京都の横丁路地裏にある「食」や「祭り」などをFacebookの「ホーム」にてガイド投稿してくれているので是非ご一読ください。(続く)
タグ :日本観光応援団
2017年10月22日
日本観光応援団のスタートです
ヒット商品応援団日記No689(毎週更新) 2017.10.22.
ヒット商品応援団というブログをスタートさせて12年余、途中まで数えていたアクセス数も恐らく40万名、PVだと60万ほどになる。途中病気により中断したこともあったが、ヒット商品の誕生と衰退、その着眼について分析することから始まったブログも、より現場に即した「変化」を感じ取ることを目指して街歩きへと進んできた。それらは画像を多用した「未来塾」というテーマブログとしてやってきた。
こうしたブログ進展の中で数年前から取り上げてきたのが「訪日外国人市場」であった。この市場もあっという間に、ゴールデンルートと言われる東京ー京都ー大阪からLCCによる東北や四国、あるいはクルーズ船の寄港が多い九州へと一挙に拡大した。これらは変わらぬ円安と地方自治体の誘致によるものだが、それまでのパック化された団体旅行は半分以下となり、ファミリーや仲間あるいは個人といった自由に計画する日本旅行へと変化してきた。そして、ブログの中で「突然扉を開けて訪日外国人が現れる時代」、グローバルな情報の時代について指摘をしてきた。勿論、トリップアドバイザーを始めとしたガイド情報もあるが、更にネットに溢れている多くの情報の中から興味関心のある世界を目指して扉を開けにやってくる。そんな時代の只中にいる。
ところでそんな時代にあって、訪日外国人の興味関心事がどこにあるのか、既に顕在化した「観光」ではなく、埋もれている日本の魅力、ともすれば日本人自体も忘れている魅力を取り上げてガイドしたい欲求が生まれてきた。それはここ1年ほど東京の街だけでなく、大阪・京都の街の変化を見つめ「未来塾」のテーマブログとして書いてきた。そのテーマ着眼は「表通り」から「横丁・路地裏」まで、大きな変化から小さな変化まで、特に消費の日常・現場に即した「変化」についてであった。
京都を訪れた時、京都の友人はそれまでの観光地は訪日外国人で溢れかえり日本人観光客が減少し始めていると指摘した。そして、表通りの観光地から横丁路地裏の埋もれた観光地へと変化していくだろうとも。また、消費で言うならば、それまでの家電製品や化粧品・薬から100円ショップに代表されるようなアイディアグッズやコンビニへと変化してきている。こうした背景は訪日外国人市場の裾野の広がり、リピーターの増加によるものだが、これら変化は日本の消費市場自体を大きく変えていくものと考えている。
そこでタイトルにもあるように、訪日外国人市場のこれからを見据えたサイトをスタートさせることとした。サイト名はヒット商品応援団の意味合いと同じ「日本観光応援団」とした。勿論、既に多くのガイドサイトがネット上にあるので同じようなことをするつもりは無い。以前から指摘されてきたことだが、日本人自身は気づかないことを「外」「外国」から気づかされたと。この「気付き」がどこにあるのかをまずは探ることから始めることとする。
どんなサイトで公開するか、最適なのはWardPressでやることであると理解していたが、そこまでの作成技術が追いつかないこともあり、Facebookで行うこととした。この応援ガイドは長文になり、画像も多いことからFacebookは不向きではあるが、一つのテーマをいくつかに分けたコンテンツとしてやってみた。少々読みづらいと思うがお許しいただきたい。また、翻訳ソフトがうまく機能していないこともあって、和文・英文の併用とした。英文についてはうまい訳文とはなっていないのでこれもお許しいただきたい。
そこでその第一回のテーマは「銀座の歩き方:もう一つの楽しみ方」。勿論、観光ガイドには載っていない「もう一つの銀座」である。これら全て私自身の体験に基づくもので、久しぶりの銀座の街歩きによるものである。個人経験という狭い世界ではあるが、埋もれている魅力の着眼点を見出していただけたらと思う。
また、京都の友人からの投稿もあり、京都の路地裏や小さな祭りやイベントを取り上げてくれているので、こうした着眼の投稿を集めたサイトにし、文字どおり「日本観光応援団」のガイドサイトにしていきたいと考えている。
「日本観光応援団」;https://www.facebook.com/profile.php?id=100007701331478
なお、これからはヒット商品応援団のブログにおいては「ヒット商品の誕生と衰退への着眼、読み解き」と「大きな変化潮流をテーマとして把握分析する未来塾」、更に Facebookによる「日本観光応援団」の3つを取り組みます。(続く)
ヒット商品応援団というブログをスタートさせて12年余、途中まで数えていたアクセス数も恐らく40万名、PVだと60万ほどになる。途中病気により中断したこともあったが、ヒット商品の誕生と衰退、その着眼について分析することから始まったブログも、より現場に即した「変化」を感じ取ることを目指して街歩きへと進んできた。それらは画像を多用した「未来塾」というテーマブログとしてやってきた。
こうしたブログ進展の中で数年前から取り上げてきたのが「訪日外国人市場」であった。この市場もあっという間に、ゴールデンルートと言われる東京ー京都ー大阪からLCCによる東北や四国、あるいはクルーズ船の寄港が多い九州へと一挙に拡大した。これらは変わらぬ円安と地方自治体の誘致によるものだが、それまでのパック化された団体旅行は半分以下となり、ファミリーや仲間あるいは個人といった自由に計画する日本旅行へと変化してきた。そして、ブログの中で「突然扉を開けて訪日外国人が現れる時代」、グローバルな情報の時代について指摘をしてきた。勿論、トリップアドバイザーを始めとしたガイド情報もあるが、更にネットに溢れている多くの情報の中から興味関心のある世界を目指して扉を開けにやってくる。そんな時代の只中にいる。
ところでそんな時代にあって、訪日外国人の興味関心事がどこにあるのか、既に顕在化した「観光」ではなく、埋もれている日本の魅力、ともすれば日本人自体も忘れている魅力を取り上げてガイドしたい欲求が生まれてきた。それはここ1年ほど東京の街だけでなく、大阪・京都の街の変化を見つめ「未来塾」のテーマブログとして書いてきた。そのテーマ着眼は「表通り」から「横丁・路地裏」まで、大きな変化から小さな変化まで、特に消費の日常・現場に即した「変化」についてであった。
京都を訪れた時、京都の友人はそれまでの観光地は訪日外国人で溢れかえり日本人観光客が減少し始めていると指摘した。そして、表通りの観光地から横丁路地裏の埋もれた観光地へと変化していくだろうとも。また、消費で言うならば、それまでの家電製品や化粧品・薬から100円ショップに代表されるようなアイディアグッズやコンビニへと変化してきている。こうした背景は訪日外国人市場の裾野の広がり、リピーターの増加によるものだが、これら変化は日本の消費市場自体を大きく変えていくものと考えている。
そこでタイトルにもあるように、訪日外国人市場のこれからを見据えたサイトをスタートさせることとした。サイト名はヒット商品応援団の意味合いと同じ「日本観光応援団」とした。勿論、既に多くのガイドサイトがネット上にあるので同じようなことをするつもりは無い。以前から指摘されてきたことだが、日本人自身は気づかないことを「外」「外国」から気づかされたと。この「気付き」がどこにあるのかをまずは探ることから始めることとする。
どんなサイトで公開するか、最適なのはWardPressでやることであると理解していたが、そこまでの作成技術が追いつかないこともあり、Facebookで行うこととした。この応援ガイドは長文になり、画像も多いことからFacebookは不向きではあるが、一つのテーマをいくつかに分けたコンテンツとしてやってみた。少々読みづらいと思うがお許しいただきたい。また、翻訳ソフトがうまく機能していないこともあって、和文・英文の併用とした。英文についてはうまい訳文とはなっていないのでこれもお許しいただきたい。
そこでその第一回のテーマは「銀座の歩き方:もう一つの楽しみ方」。勿論、観光ガイドには載っていない「もう一つの銀座」である。これら全て私自身の体験に基づくもので、久しぶりの銀座の街歩きによるものである。個人経験という狭い世界ではあるが、埋もれている魅力の着眼点を見出していただけたらと思う。
また、京都の友人からの投稿もあり、京都の路地裏や小さな祭りやイベントを取り上げてくれているので、こうした着眼の投稿を集めたサイトにし、文字どおり「日本観光応援団」のガイドサイトにしていきたいと考えている。
「日本観光応援団」;https://www.facebook.com/profile.php?id=100007701331478
なお、これからはヒット商品応援団のブログにおいては「ヒット商品の誕生と衰退への着眼、読み解き」と「大きな変化潮流をテーマとして把握分析する未来塾」、更に Facebookによる「日本観光応援団」の3つを取り組みます。(続く)
タグ :日本観光応援団
2017年10月15日
リニューアルから見えてきた新価格帯市場
ヒット商品応援団日記No688(毎週更新) 2017.10.15.
ここ数週間訪日外国人市場を探るため、観光ガイドには載ってはいない日本の魅力を街歩きから見出すことに注力してきた。この仮説としての着眼点は来週からFacebookを通じて始めるのでご期待ください。
ところで本題であるが、タイトルにあるように「リニューアル」はそれまでの商業施設の課題解決のためのリニューアルのことで消費の潮流を見出すことをテーマとした。簡略化して言うとなると、時間経過と共に顧客要望にズレが生じ顧客が求める半歩先の「何か」を提示して、結果として売り上げや利益を回復する試みのことである。つまり、仮説ではあるが、顧客が求めている商品や価格帯などがリニューアル編集から透けて見えてくると言うことである。勿論、それが売り上げや利益に結びつくかどうかは、まずは1ヶ月ほど見ればわかる時代にいる。それほど顧客判断は早いと言うことである。
その商業施設のリニューアルであるが、首都圏の人であればある程度知っている横浜都筑区の中心、横浜市営地下鉄センター北駅隣の「ノースポート・モール」というショッピングセンターである。2007年に開業した郊外型の大型商業施設でSIASという投資顧問会社が開発し、テナントリーシングや運営をパルコが担当したSCである。スタート当初は幅広いテナント揃えを行なっており、駅からのペディストリアンデッキからの入り口2Fには渋谷109にも出店しているようなティーンズファッションショップが出店していた。つまり、ファッション専門店の比率も高く、年齢層もかなり幅広かった。
この都筑区という市場は、横浜市が港北ニュータウンとして大型開発した地域で、そうしたことから10数年前には「ベビーカーの街」として注目されたところである。そうしたことから阪急百貨店や東急SCなど大型商業施設が競って出店した地域である。そうしたことから、横浜市の中でも待機児童0と言われるように子育てしやすい緑の多い地域としても知られている。
こうしたことから各商業施設はその戦略を大きく変えていくこととなる。確か隣のセンター南駅の東急港北SCに出店していたGAPはGAPキッズの売り場を新設したり、阪急百貨店は従来の都心百貨店売り場作りからSCにおける専門店編集へと変更する。こうした中で、ノースポート・モールも東急不動産へと経営が移る。そして、今回10年ぶりにリニューアルし、そこから消費の潮流が透けて見える。
リニューアルコンセプトは、「港北NEW LIFE STYLE TOWN」として、9月15日にオープンし初日には千数百名が行列したと聞いている。そのリニューアルの狙いは2つある。
1つは明確な顧客設定で「子育て世代」に特化した専門店構成になっていること。もう一つが集積度の高い大型専門店を集めている点にある。そのリニューアル店舗は70店で約半数以上が変わる、そんなリニューアルである。
この2点を象徴しているのがユニクロ、ジーユー、無印良品の増床リニューアルで、特にその中でもジーユーは初の超大型店となっている。成長著しいジーユーであるが、標準店舗が約200坪であるのに対し、ノースポート・モールでは820坪となっている。そして、こうした大型専門店のみならず、ほとんどの店舗の商品ラインアップがウィメンズ、メンズ、キッズと、いわゆる子育てファミリーに徹底的に絞り込んだMDとなっている。例えば、複数のアパレルファッションブランドを展開しているアダストリアであるが、ファミリーブランドとして展開できる商品ラインを有しているGLOBAL WORKといったブランドが出店している。更にいうならば、大規模店舗を展開しているBOOK OFの場合も衣料についてはMODE OFとして同じような商品ラインアップ売り場が作られている。そして、こうした脱ファッションという視点で言うならば、ワールドの売り場ではindex始めいくつかのブランドを集めた売り場オペーククリップとして編集されており、ファッションブランドとしてはせいぜいこの売り場程度でリニューアル前のトレンドファッション売り場はほとんどなくなっている。つまり徹底した子育て支援集積がなされているということである。
このノースポート・モールは延床面積が14万1125.33m2、つまり約43000坪弱の大型商業施設である。店舗数は120店舗ほどで1店舗平均360坪弱となる。郊外型の場合は広域集客しなければならないことから坪数の大きな大型店舗化は常套手段ではあるのだが、ここまでの大きさは地方のSC以外には見られない。勿論、郊外であればこそできる店舗スペースで、私の言葉で言うならば「テーマ集積度の高さ」を追求できる商業施設である。そのテーマを価格帯として言うならばリーズナブルプライス、日常利用するにふさわしい値ごろ感のある専門店集積となっている。
この横浜市都筑区は横浜中心部にも近く、あるいは都心に出るのにも便利な地域であることから、いわゆるインポートブランドなどはそうした場所での買い物となる。阪急百貨店が苦戦し、SCのような売り場編集に舵取りを変更したのもこうした理由からである。こうした転換については、2009年の日経MJによるヒット商品番付を読み解くブログで次のように書いたことがあった。
『少し前にファミレスの元祖「すかいら~く」の最後の1店がクローズした時、新たな価格帯へと再編されてきたことを「新価格帯市場」というキーワードを使ってブログにも書いた。ファミレスにおいては客単価1000円の「すかいら~く」業態は客単価750円の「ガスト」業態に再編した。今回の番付にも、西の横綱の激安ジーンズは1000円以下、東の関脇の規格外野菜はわけあり価格、西の関脇の餃子の王将は安くて満腹、前頭のファストファッションは「フォーエバー21」のように上から下までコーディネートして1万円以下、更には韓国旅行、お弁当、sweet(宝島社)、・・・・・新たな価格帯市場を形成したシンボリックな商品が並んでいる。どれもこれもブログで書いてきた商品ばかりなので個々については触れないが、こうしたシンボリックな商品の価格帯を軸にして市場は再編されるということである。消費は収入の関数であり、この10年間で年間100万円収入が減少した時代にあっては至極当然のこととしてある。前回の番付に「ひき肉ともやし」が入っていて確かに不況期に売れる商品であるが、日経MJが載せることではないだろうと書いた。今回も同じ意味合いで「粉もん」(お好み焼き粉)が入っている。確かに、こうした不況型商品が売れる傾向は続いているということである。』
そして、こうした「価格」の津波は、あらゆる商品、流通業態、消費の在り方を根底から変えると断言した。そして、事実その通りに流通市場が再編されてきた。しかもアマゾンを始めとしたネット通販や今話題のメルカリをはじめとしたフリーマーケットの急速な拡大により、店舗販売からは見えないところでの消費が活性化してきている。つまり、有店舗商業はよほどの魅力が無い限り、店舗まで足を運ぶことがなくなってきたと言うことである。SC業界では郊外型SCの物販専門店の苦戦が言われているのもその背景にはこうした流通変化がある。
ところでノースポート・モールもそうであるが、郊外型SCが一番賑わっているフロアがあるとすればそれはフードコート、レストランフロアである。勿論、祝祭日であり、ウイークデーが込み合うことはない。ノースポート・モールもリニューアル以前からフードコートはあったのだが、新たにペッパーランチ、長崎ちゃんぽん、プラススパイス(カレーショップ)の3店舗が加わり充実させている。価格帯も600円から1000円未満と日常利用価格となっている。ファミリーユース、ママ友ユースという集える場、楽しみの場となっているということである。既に物を買う場というより、「集いの場」あるいは「娯楽の場」が集客のコアになっているということだ。10数年前から郊外型SCにはシネコンや大型ゲームセンターなどの集客装置が作られ休日集客が図られてきた。これらが表しているように、SCは物販店の編集によって、つまりモノを買うことだけでは成立しなくなってきたということでもある。
1年ほど前からデフレは日常化しそれが当たり前の消費となってきたと繰り返しブログに書いてきた。昨年のユニクロの値上げの失敗から始まり、無印やコンビニまでもが値下げに踏み切るたびに、生活者にとってそれら値下げは当たり前のこととして受け止められてきたということである。こうした消費変化を私は「もはやデフレは死語となった」と表現したが、ノースポート・モールのリニューアルを観察し、デフレの日常化が現実のフロアになったと強く感じた。
日本では昔から価格帯のことを松竹梅と表現してきた。この伝からいうと、「松」は百貨店における消費として縮小に向かい、「梅」はドンキ・ホーテに代表されるディスカウンターやアウトレットショップが続々と誕生し市場は拡大してきた。そして一番大きな「竹」という価格帯市場をめぐる競争が激烈なまでになされてきた。今、この「竹」というボリューム市場が分解し、それまでの「梅」に近い価格帯へと大きく移動してきた。ある意味、「竹」と「梅」とが重なり合いながら一つのSCの商品構成が行われている、それがノースポート・モールのリニューアルであると観察した。
実はこの「竹」価格市場の分解については多くの企業が失敗してきた。2014年春に新消費税が導入され各社それぞれの対応策が実施されてきたわけだが、低迷する百貨店業界にあって唯一増税にも関わらず前年比プラス1.1%と伸ばしたのが銀座三越であった。それはどの百貨店より早く免税手続きの世界最大手グローバルブルー(スイス)と提携し、伊勢丹新宿店、日本橋三越本店、銀座三越に免税店を設け訪日外国人受け入れを強化した結果であった。つまり、当時は「爆買い」と揶揄されたが、新たな市場開発の成果によってであった。ところがデフレの旗手と言われたファストフードはどうかといえば対応を間違えた結果となっていた。当時の状況を次のようにブログに書いた。
『次に外食チェーンの変化である。まず牛丼大手3社についてであるが、吉野家は牛丼並盛りを20円値上げして300円とし、松屋も10円引き上げた。一方、すき家は10円値下げで対抗した。既存店の客数を見るとすき家が4.8%減、松屋が4.4%減なのに対して吉野家は9.2%減と苦戦した。値上げした吉野家は落とした客数分を値上げによって補いきれなかったという結果である。すき家も値下げをしたにも関わらずマイナスであるのは人手不足による店舗閉鎖の影響によるものである。つまり、日常利用において20円の値上げは大きく吉野家は「暗」という結果となった。確か3月のブログにも書いたことだが、新メニューである牛すき鍋膳は冬場の季節メニューであり、次のヒットメニューが求められていると。ところが新メニューも無い上に値上げをして消費増税を迎えたことは、吉野家ブランドの過信であったということである。
また、普通の企業に戻ったマクドナルドであるが、100円マックを復活させて以前の市場を呼び戻そうとしているが相変わらず低迷したままで、4月の既存店売上高は、前年比3.4%減と3カ月連続で前年実績を下回った。ここ2年ほど迷走し続けたマクドナルドであるが、明るい材料もあり、特に若い女性を狙ったアボカドを使用したハンバーガーのように明快なメニューコンセプトに戻れば復活はあり得るであろう。』
そして、実は消費増税の壁を超えた企業がユニクロとニトリであった。ユニクロは国内既存店は6ヶ月連続のプラスで4月は前年比103.3%、ニトリは既存店売り上げは115.1%と2014年度に入り好調さを持続させていた。両社共に、2012年ごろから価格だけでなくデザインクオリティを高めた商品政策を取っており、こうした点が消費増税を超える顧客支持を得たということであった。しかし、そのユニクロも増税の壁を超えて「次」へと進めたのが例の値上げであった。周知の通り大幅客数減という失敗については昨年夏の柳井社長の決算発表の記者会見などのコメントについてブログに書いてきたのでここでは省略する。
一方、急成長してきた専門店もある。その代表例がユニクロの妹ブランドジーユーである。ノースポート・モールの820坪のジーユーを見て回ったが、ウィメンズ、メンズ、キッズというフルラインについても驚いたが、とにかく安いというのが第一印象であった。トレンドもそこそこ取り入れたカジュアル衣料だが、ユニクロと比較しても際立つ安さである。その代表的な商品が990円ジーンズということだろう。上から下まですべてで1万円以内という触れ込みで急成長しているForever21やH&Mと同じ価格帯を狙ったブランドである。ジャケット類は2990円、コート類ですら4990円と若い世代でも十分手がとどく価格帯である。ちなみにユニクロのコート類の価格帯は9900円~14900円と明確な違いとなっている。
もう一つ着目しておかないといけないのが日常利用の中心となる食品スーパーである。私も多くのSCのリニューアルを手がけてきたが、その第一の鍵は日常利用(=客数増)が図れるテナントをリーシングできるかどうかであった。具体的なSC名を言うことはできないが、最近においても郊外型SCの立て直しに食品スーパーが大きく貢献した事例を知っている。ノースポート・モールにおいては1Fにブルーミングブルーミーと富士ガーデンの2社が入っている。前社はいなげやグループの食品スーパー部門で、後社は精肉で実績のあるニュー・クイックのスーパー部門である。おそらく価格対応力のあるしかも生肉に特徴を出した食品スーパーで日常利用、周辺地元顧客を集客する狙いであったと思う。この2社いずれも価格対応力、値ごろ感のある品揃えが可能になることは間違いない。ただ食品スーパーは実際に使って食べて見ないことにはわからないことから断言はできないが。
ただ言えることは絞り込まれた子育て市場に対し、明快な「価格帯市場」が創られたと言うことである。そして、これからの売り上げなどの推移を見ていかなければならないが、これが標準価格帯、前述の「竹」と「梅」が混ざり合った市場が生まれるかもしれないと言うことである。2009年に私が仮説した消費の激変が大型商業施設丸ごと現実のものとなったと言うことである。
キラーコンテンツというキーワードがある。圧倒的な魅力によって新しい市場を開発・普及させる「何か」のことである。もっと平易に言えば、「強い目的買い」によって「ついで買い」を誘発するコンテンツといっても、それほど間違いではない。いずれにせよ、強く惹きつける「何か」のことであり、誰もがこのキラーコンテンツを探している。市場を一変させる、ある一つの物語、ある一つのプログラム、ある一つの使用方法であるが、その概念を広げればたった1店、たった1人、たった1メニューによって、市場が異なるフェーズ(相)へと移行してしまうコンテンツのことである。
価格という視点に立てば、そうした「何か」によって価格破壊が行われ、新しいスタイルが生まれるということである。そのことによって広がる新しい常識、新しい普通、それらが当たり前の消費生活になるということである。最近の事例で言うとすれば、「俺のフレンチ」など一連の業態はそれまでの「フレンチ」という概念を変えたミニキラーコンテンツと言えなくはない。今回観察した横浜都筑区のノースポート・モールの価格帯戦略がキラーコンテンツの「何か」となり得るかはわからない。しかし、周辺の商業施設に大きな影響を与えていることは間違いない。(続く)
ここ数週間訪日外国人市場を探るため、観光ガイドには載ってはいない日本の魅力を街歩きから見出すことに注力してきた。この仮説としての着眼点は来週からFacebookを通じて始めるのでご期待ください。
ところで本題であるが、タイトルにあるように「リニューアル」はそれまでの商業施設の課題解決のためのリニューアルのことで消費の潮流を見出すことをテーマとした。簡略化して言うとなると、時間経過と共に顧客要望にズレが生じ顧客が求める半歩先の「何か」を提示して、結果として売り上げや利益を回復する試みのことである。つまり、仮説ではあるが、顧客が求めている商品や価格帯などがリニューアル編集から透けて見えてくると言うことである。勿論、それが売り上げや利益に結びつくかどうかは、まずは1ヶ月ほど見ればわかる時代にいる。それほど顧客判断は早いと言うことである。
その商業施設のリニューアルであるが、首都圏の人であればある程度知っている横浜都筑区の中心、横浜市営地下鉄センター北駅隣の「ノースポート・モール」というショッピングセンターである。2007年に開業した郊外型の大型商業施設でSIASという投資顧問会社が開発し、テナントリーシングや運営をパルコが担当したSCである。スタート当初は幅広いテナント揃えを行なっており、駅からのペディストリアンデッキからの入り口2Fには渋谷109にも出店しているようなティーンズファッションショップが出店していた。つまり、ファッション専門店の比率も高く、年齢層もかなり幅広かった。
この都筑区という市場は、横浜市が港北ニュータウンとして大型開発した地域で、そうしたことから10数年前には「ベビーカーの街」として注目されたところである。そうしたことから阪急百貨店や東急SCなど大型商業施設が競って出店した地域である。そうしたことから、横浜市の中でも待機児童0と言われるように子育てしやすい緑の多い地域としても知られている。
こうしたことから各商業施設はその戦略を大きく変えていくこととなる。確か隣のセンター南駅の東急港北SCに出店していたGAPはGAPキッズの売り場を新設したり、阪急百貨店は従来の都心百貨店売り場作りからSCにおける専門店編集へと変更する。こうした中で、ノースポート・モールも東急不動産へと経営が移る。そして、今回10年ぶりにリニューアルし、そこから消費の潮流が透けて見える。
リニューアルコンセプトは、「港北NEW LIFE STYLE TOWN」として、9月15日にオープンし初日には千数百名が行列したと聞いている。そのリニューアルの狙いは2つある。
1つは明確な顧客設定で「子育て世代」に特化した専門店構成になっていること。もう一つが集積度の高い大型専門店を集めている点にある。そのリニューアル店舗は70店で約半数以上が変わる、そんなリニューアルである。
この2点を象徴しているのがユニクロ、ジーユー、無印良品の増床リニューアルで、特にその中でもジーユーは初の超大型店となっている。成長著しいジーユーであるが、標準店舗が約200坪であるのに対し、ノースポート・モールでは820坪となっている。そして、こうした大型専門店のみならず、ほとんどの店舗の商品ラインアップがウィメンズ、メンズ、キッズと、いわゆる子育てファミリーに徹底的に絞り込んだMDとなっている。例えば、複数のアパレルファッションブランドを展開しているアダストリアであるが、ファミリーブランドとして展開できる商品ラインを有しているGLOBAL WORKといったブランドが出店している。更にいうならば、大規模店舗を展開しているBOOK OFの場合も衣料についてはMODE OFとして同じような商品ラインアップ売り場が作られている。そして、こうした脱ファッションという視点で言うならば、ワールドの売り場ではindex始めいくつかのブランドを集めた売り場オペーククリップとして編集されており、ファッションブランドとしてはせいぜいこの売り場程度でリニューアル前のトレンドファッション売り場はほとんどなくなっている。つまり徹底した子育て支援集積がなされているということである。
このノースポート・モールは延床面積が14万1125.33m2、つまり約43000坪弱の大型商業施設である。店舗数は120店舗ほどで1店舗平均360坪弱となる。郊外型の場合は広域集客しなければならないことから坪数の大きな大型店舗化は常套手段ではあるのだが、ここまでの大きさは地方のSC以外には見られない。勿論、郊外であればこそできる店舗スペースで、私の言葉で言うならば「テーマ集積度の高さ」を追求できる商業施設である。そのテーマを価格帯として言うならばリーズナブルプライス、日常利用するにふさわしい値ごろ感のある専門店集積となっている。
この横浜市都筑区は横浜中心部にも近く、あるいは都心に出るのにも便利な地域であることから、いわゆるインポートブランドなどはそうした場所での買い物となる。阪急百貨店が苦戦し、SCのような売り場編集に舵取りを変更したのもこうした理由からである。こうした転換については、2009年の日経MJによるヒット商品番付を読み解くブログで次のように書いたことがあった。
『少し前にファミレスの元祖「すかいら~く」の最後の1店がクローズした時、新たな価格帯へと再編されてきたことを「新価格帯市場」というキーワードを使ってブログにも書いた。ファミレスにおいては客単価1000円の「すかいら~く」業態は客単価750円の「ガスト」業態に再編した。今回の番付にも、西の横綱の激安ジーンズは1000円以下、東の関脇の規格外野菜はわけあり価格、西の関脇の餃子の王将は安くて満腹、前頭のファストファッションは「フォーエバー21」のように上から下までコーディネートして1万円以下、更には韓国旅行、お弁当、sweet(宝島社)、・・・・・新たな価格帯市場を形成したシンボリックな商品が並んでいる。どれもこれもブログで書いてきた商品ばかりなので個々については触れないが、こうしたシンボリックな商品の価格帯を軸にして市場は再編されるということである。消費は収入の関数であり、この10年間で年間100万円収入が減少した時代にあっては至極当然のこととしてある。前回の番付に「ひき肉ともやし」が入っていて確かに不況期に売れる商品であるが、日経MJが載せることではないだろうと書いた。今回も同じ意味合いで「粉もん」(お好み焼き粉)が入っている。確かに、こうした不況型商品が売れる傾向は続いているということである。』
そして、こうした「価格」の津波は、あらゆる商品、流通業態、消費の在り方を根底から変えると断言した。そして、事実その通りに流通市場が再編されてきた。しかもアマゾンを始めとしたネット通販や今話題のメルカリをはじめとしたフリーマーケットの急速な拡大により、店舗販売からは見えないところでの消費が活性化してきている。つまり、有店舗商業はよほどの魅力が無い限り、店舗まで足を運ぶことがなくなってきたと言うことである。SC業界では郊外型SCの物販専門店の苦戦が言われているのもその背景にはこうした流通変化がある。
ところでノースポート・モールもそうであるが、郊外型SCが一番賑わっているフロアがあるとすればそれはフードコート、レストランフロアである。勿論、祝祭日であり、ウイークデーが込み合うことはない。ノースポート・モールもリニューアル以前からフードコートはあったのだが、新たにペッパーランチ、長崎ちゃんぽん、プラススパイス(カレーショップ)の3店舗が加わり充実させている。価格帯も600円から1000円未満と日常利用価格となっている。ファミリーユース、ママ友ユースという集える場、楽しみの場となっているということである。既に物を買う場というより、「集いの場」あるいは「娯楽の場」が集客のコアになっているということだ。10数年前から郊外型SCにはシネコンや大型ゲームセンターなどの集客装置が作られ休日集客が図られてきた。これらが表しているように、SCは物販店の編集によって、つまりモノを買うことだけでは成立しなくなってきたということでもある。
1年ほど前からデフレは日常化しそれが当たり前の消費となってきたと繰り返しブログに書いてきた。昨年のユニクロの値上げの失敗から始まり、無印やコンビニまでもが値下げに踏み切るたびに、生活者にとってそれら値下げは当たり前のこととして受け止められてきたということである。こうした消費変化を私は「もはやデフレは死語となった」と表現したが、ノースポート・モールのリニューアルを観察し、デフレの日常化が現実のフロアになったと強く感じた。
日本では昔から価格帯のことを松竹梅と表現してきた。この伝からいうと、「松」は百貨店における消費として縮小に向かい、「梅」はドンキ・ホーテに代表されるディスカウンターやアウトレットショップが続々と誕生し市場は拡大してきた。そして一番大きな「竹」という価格帯市場をめぐる競争が激烈なまでになされてきた。今、この「竹」というボリューム市場が分解し、それまでの「梅」に近い価格帯へと大きく移動してきた。ある意味、「竹」と「梅」とが重なり合いながら一つのSCの商品構成が行われている、それがノースポート・モールのリニューアルであると観察した。
実はこの「竹」価格市場の分解については多くの企業が失敗してきた。2014年春に新消費税が導入され各社それぞれの対応策が実施されてきたわけだが、低迷する百貨店業界にあって唯一増税にも関わらず前年比プラス1.1%と伸ばしたのが銀座三越であった。それはどの百貨店より早く免税手続きの世界最大手グローバルブルー(スイス)と提携し、伊勢丹新宿店、日本橋三越本店、銀座三越に免税店を設け訪日外国人受け入れを強化した結果であった。つまり、当時は「爆買い」と揶揄されたが、新たな市場開発の成果によってであった。ところがデフレの旗手と言われたファストフードはどうかといえば対応を間違えた結果となっていた。当時の状況を次のようにブログに書いた。
『次に外食チェーンの変化である。まず牛丼大手3社についてであるが、吉野家は牛丼並盛りを20円値上げして300円とし、松屋も10円引き上げた。一方、すき家は10円値下げで対抗した。既存店の客数を見るとすき家が4.8%減、松屋が4.4%減なのに対して吉野家は9.2%減と苦戦した。値上げした吉野家は落とした客数分を値上げによって補いきれなかったという結果である。すき家も値下げをしたにも関わらずマイナスであるのは人手不足による店舗閉鎖の影響によるものである。つまり、日常利用において20円の値上げは大きく吉野家は「暗」という結果となった。確か3月のブログにも書いたことだが、新メニューである牛すき鍋膳は冬場の季節メニューであり、次のヒットメニューが求められていると。ところが新メニューも無い上に値上げをして消費増税を迎えたことは、吉野家ブランドの過信であったということである。
また、普通の企業に戻ったマクドナルドであるが、100円マックを復活させて以前の市場を呼び戻そうとしているが相変わらず低迷したままで、4月の既存店売上高は、前年比3.4%減と3カ月連続で前年実績を下回った。ここ2年ほど迷走し続けたマクドナルドであるが、明るい材料もあり、特に若い女性を狙ったアボカドを使用したハンバーガーのように明快なメニューコンセプトに戻れば復活はあり得るであろう。』
そして、実は消費増税の壁を超えた企業がユニクロとニトリであった。ユニクロは国内既存店は6ヶ月連続のプラスで4月は前年比103.3%、ニトリは既存店売り上げは115.1%と2014年度に入り好調さを持続させていた。両社共に、2012年ごろから価格だけでなくデザインクオリティを高めた商品政策を取っており、こうした点が消費増税を超える顧客支持を得たということであった。しかし、そのユニクロも増税の壁を超えて「次」へと進めたのが例の値上げであった。周知の通り大幅客数減という失敗については昨年夏の柳井社長の決算発表の記者会見などのコメントについてブログに書いてきたのでここでは省略する。
一方、急成長してきた専門店もある。その代表例がユニクロの妹ブランドジーユーである。ノースポート・モールの820坪のジーユーを見て回ったが、ウィメンズ、メンズ、キッズというフルラインについても驚いたが、とにかく安いというのが第一印象であった。トレンドもそこそこ取り入れたカジュアル衣料だが、ユニクロと比較しても際立つ安さである。その代表的な商品が990円ジーンズということだろう。上から下まですべてで1万円以内という触れ込みで急成長しているForever21やH&Mと同じ価格帯を狙ったブランドである。ジャケット類は2990円、コート類ですら4990円と若い世代でも十分手がとどく価格帯である。ちなみにユニクロのコート類の価格帯は9900円~14900円と明確な違いとなっている。
もう一つ着目しておかないといけないのが日常利用の中心となる食品スーパーである。私も多くのSCのリニューアルを手がけてきたが、その第一の鍵は日常利用(=客数増)が図れるテナントをリーシングできるかどうかであった。具体的なSC名を言うことはできないが、最近においても郊外型SCの立て直しに食品スーパーが大きく貢献した事例を知っている。ノースポート・モールにおいては1Fにブルーミングブルーミーと富士ガーデンの2社が入っている。前社はいなげやグループの食品スーパー部門で、後社は精肉で実績のあるニュー・クイックのスーパー部門である。おそらく価格対応力のあるしかも生肉に特徴を出した食品スーパーで日常利用、周辺地元顧客を集客する狙いであったと思う。この2社いずれも価格対応力、値ごろ感のある品揃えが可能になることは間違いない。ただ食品スーパーは実際に使って食べて見ないことにはわからないことから断言はできないが。
ただ言えることは絞り込まれた子育て市場に対し、明快な「価格帯市場」が創られたと言うことである。そして、これからの売り上げなどの推移を見ていかなければならないが、これが標準価格帯、前述の「竹」と「梅」が混ざり合った市場が生まれるかもしれないと言うことである。2009年に私が仮説した消費の激変が大型商業施設丸ごと現実のものとなったと言うことである。
キラーコンテンツというキーワードがある。圧倒的な魅力によって新しい市場を開発・普及させる「何か」のことである。もっと平易に言えば、「強い目的買い」によって「ついで買い」を誘発するコンテンツといっても、それほど間違いではない。いずれにせよ、強く惹きつける「何か」のことであり、誰もがこのキラーコンテンツを探している。市場を一変させる、ある一つの物語、ある一つのプログラム、ある一つの使用方法であるが、その概念を広げればたった1店、たった1人、たった1メニューによって、市場が異なるフェーズ(相)へと移行してしまうコンテンツのことである。
価格という視点に立てば、そうした「何か」によって価格破壊が行われ、新しいスタイルが生まれるということである。そのことによって広がる新しい常識、新しい普通、それらが当たり前の消費生活になるということである。最近の事例で言うとすれば、「俺のフレンチ」など一連の業態はそれまでの「フレンチ」という概念を変えたミニキラーコンテンツと言えなくはない。今回観察した横浜都筑区のノースポート・モールの価格帯戦略がキラーコンテンツの「何か」となり得るかはわからない。しかし、周辺の商業施設に大きな影響を与えていることは間違いない。(続く)
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2017年10月04日
「人気者」という罠
ヒット商品応援団日記No688(毎週更新) 2017.10.4.
政治をテーマとしたブログではないのでほとんど書くことはないが、2005年にブログをスタートさせた時期がちょうど小泉郵政選挙の時期と重なり、当時の小泉総理を1個の商品、小泉ブランドとして見立て、その戦略を消費論的に分析したことがあった。その中で使ったキーワードが「小泉劇場」で、劇場化社会におけるブランドの創造と衰退がテーマであった。というのも市場が心理化し、政治も、ブランドも、ある意味「未来への期待」がその本質にあることからであった。
ブランドは情報によって創られるものであるが、つまりコミュニケーションによってあるが、過剰な情報が行き交う時代にあって、ブランド・メッセージが届かない時代にいる。その突破戦略として採用されたのが劇場型コミュニケーションで、その名の通り、舞台があり、主役や脇役がいて、どんなパフォーマンスを行えば観客は喜ぶか、シナリオと演出が用意されるコミュニケーション手法である。そのパフォーマンスは、「わかりやすさ」と「驚き・サプライズ」にある。小泉劇場は物の見事にこの2つ、わかりやすさは”ワンフレーズポリテクス”であり、驚きは”自民党をぶっ壊す”であった。多くの国民は圧倒的な支持、いや共感・拍手を送り当時の支持率は80%近くであったことを思い起こす。恐らく戦後政治にあって初めての人気者であった。
そして同時に、この人気者も小泉劇場の無くてはならない脇役田中真紀子という女房役を外務大臣を解任することによって急激に支持率を落としたこともまた思い起こさせる。
周知の通り東京都知事選を勝利し、都議会選挙においても55議席という圧倒的な勝利を納め一躍人気者となった。前都知事の舛添氏の辞任の模様を1年数ヶ月前次のようにブログに書いた。
『メディアサーカスという言葉がある。過熱報道、集中報道といった意味合いの言葉である。舛添都知事に関する疑惑は東京ローカルの問題にもかかわらず、週末の舛添都知事との記者会見は民放各局はその模様を全国ネットでライブ中継するという異常なまでの報道であった。コミュニケーションの専門家であれば熟知していることだが、こうしたニュースが全国にわたって微に入り細に入り繰り返し伝えられ、一大狂騒劇と化した。
その舛添要一という人物についてであるが、「朝まで生テレビ」に颯爽と登場し、舌鋒鋭く多くの論客を圧倒した。以後政治家になり、母親を介護し、厚労大臣にまで上りつめる。そして、次の総理候補としてもてはやされた。それら人物像はTVによって創られたイメージの高さによってであり、「政治とカネ」の問題で辞職した猪瀬前都知事に代わって、大きな「期待」を持って誕生した都知事であった。しかし、TVによって創られたいわば「人気者」は、繰り返し、繰り返し、謝罪の言葉は言うものの、違法ではないもののその公私混同の「セコさ」や「屁理屈」が伝えられるとどうなるか。謝罪は本気でも本音でもなく、「嘘」と感じさせてしまう。当然「期待」は失望どころか、一気に「怒り」へと変容する。』
舛添氏を小池氏に置き換えてもその構図、劇場型社会は変わらない。そして、小池新党を立ち上げた小池新党(希望の党)は「安倍一強多弱政治」を変えようと民進党との合流(吸収合併)に臨み、一躍台風の目となった。一大サプライズである。ところが、民進党からの希望の党への合流は丸ごとは”さらさらない””削除する”という「一言」、更には政策協定書といういわば誓約書をとることなど、それまでの小池人気、希望の党への追い風がパタッと止むことになった。それは新聞各紙・TV局メディアによる世論調査に如実に出てきている。つまり、大きく「潮目」が変わったということである。
その変容について、小池氏を側面から応援していた元総理の細川氏は毎日新聞のインタビューに答えて次のようにコメントしている。
『「(安倍政権を倒す)倒幕が始まるのかと思っていたら、応仁の乱みたいにぐちゃぐちゃになってきた。政権交代までいかなくとも、せめて自民党を大敗させて、安倍晋三首相の党総裁3選阻止まではいってもらわないと」と語った。小池氏が衆院選に立候補する可能性は「恐らくないだろう」とも述べた。
小池氏は日本新党結党以来、折に触れ、細川氏からアドバイスを受けてきた。希望の党の公認を巡り、リベラル勢力や首相経験者を選別することに「同志として小池氏を手助けしたいと考えてきたが、排除の論理を振り回し、戸惑っている。公認するのに踏み絵を踏ませるというのはなんともこざかしいやり方で『寛容な保守』の看板が泣く」と強く批判した。
同じく日本新党出身の前原誠司民進党代表については「名を捨て実を取ると言ったが、状況をみていると、名も実も魂も取られてしまうのではないかと心配になる」と述べた。
さらに自身が日本新党を結成したことを振り返り「政権交代という大目標に立ち向かうときは怒濤(どとう)のように攻め立てなければ成功しない」と、候補者擁立などで混迷する「小池の乱」に苦言を呈した。ただ、「首相を目指すのであれば、保守やリベラルにこだわらず、器量の大きい人でいてもらいたい」と、門下生への思いやりもにじませた。』
更に、小池知事を応援し、圧倒的な都民ファーストの会の勝利の先導役を果たしてきた音喜多・上田都議の二人が離党すると発表された。その離党の理由は豊洲への市場移転問題や東京オリンピック・パラリンピックなどの諸問題が山積しており、こうした取り組みについても情報公開されず、「安倍一強」ではなく「小池一強」になってしまったという小池氏の政治手法を強く批判している。小泉劇場と比較するとわかるが、小泉劇場の場合は女房役に田中真紀子氏がいたり、裏方にはイエスマンこと幹事長の武部 勤氏や飯島勲秘書官が居た。小池劇場の場合は小池氏一人だけで、脇役はおらず敵役だけで、演出もシナリオも小池氏一人である。「劇団ひとり」という多才なタレントがいるが、小池劇場は全て一人回しとなっている。今回の総選挙が突然決まるという奇策により、他党は全て準備不足となっているが、希望の党の場合はこの「一人回し」による矛盾であり、時を追うごとにその矛盾が出てきたと見る方が正確であろう。
TVによって創られた人気者舛添氏は、TVを通じたマジョリティ(大衆)の「物言う力」によって辞職へと追い込まれることとなった。この事例から見てもわかるように、情報の時代にあっては、TVによっていとも簡単に「人気者」を創ってしまう。多くのタレントが間違ってしまうのは、自分の才能(タレント)によって人気者になったと錯覚してしまうことにある。人気者はTVという増幅する「映写機」によって映し出された虚像であって、実像ではない。最近では”このハゲ〜”で注目された豊田前議員も不倫報道の山尾前議員も逆の意味で同じ構図の中にある。今回の総選挙に出馬するようだが、本来目指すべきは実像は地元有権者が一番知っている。実像としての人気者であるかどうか選挙結果が明らかにするであろう。
「小池人気頼み」によって民進党から希望の党に合流した前議員は少ないとは思うが、TVが映し出す世界には、虚像としての世界が含まれるという自覚が不可欠である。さらにはTVというメディアを意図的に自由に使えるという「思い上がり」が社会には存在しているが、舛添氏の場合そのTVは同時につぶさにセコさや小狡さ、あるいは違法でなければ何をやっても、そんな実像をも映し出していく。逆にメディアに復讐されたと言っても過言ではない。
また物言うマジョリティの行動、政治でいうならば「無党派層」についてビジネスに置き換えると、「ブーム」という一過性の現象とよく似ている社会心理である。トレンドという一つの人気情報による潮流、話題となったことに自らも乗ること、若い世代の言葉で言うと、「KY・空気読めない」そんな一人にはなりたくない、一種の仲間内の自己保身本能に似ている心理である。まさか希望の党に合流した前民進党議員はいないとは思うが。
ブランドの本質はその未来価値にあり、それは顧客が創るという当たり前のことである。政治に置き換えるならば、選挙区の有権者一人ひとりによって創られるということである。ブランドの価値、つまりそこから生まれる「人気」は顧客によってのみ創られ、また忘れ去られることもあえrば、場合によっては悪評から「嫌悪」へと変化する。この揺れ幅の大きさと急激さはこの情報の時代の最大特徴となっている。
元総理の細川氏が応仁の乱のようにぐちゃぐちゃになってきたとコメントしているが、周知のように室町時代後期に発生し、戦国時代への転換点となった応仁の乱は複数の守護大名家の家督争いや将軍家の後継問題、有力大名の細川勝元と山名宗全の幕政をめぐる主導権争いなどを要因として、全国の諸大名が東西両軍に分かれる形で応仁元(1467)年に勃発した戦乱である。ベストセラーとなった「応仁の乱」(中公新書)によれば、寝返りが相次ぐなど混迷を極めた戦乱は11年にわたって続き、主戦場となった京都の荒廃や室町幕府の衰退を招いたと言われている。
民進党の希望の党への合流問題に端を発し、都議選までの小池人気は終わり逆風が起き始めている。希望の党と立憲民主党との間でドロドロとなった選挙戦が既に始まっている。そして、希望の党は選挙が初めての候補者も多く、公職選挙法違反が多発すると言われてもいる。こうした問題は与党自民党の場合も抱えており、多くの世論調査を見てもわかるように安倍政権への支持率は相変わらず低い。しかし、自民党への支持率は高いのだが、自民党はいわばネイティブな党であり、問題があれば内閣総辞職をし、リーダーを変えるという自浄作用を働かせてきた。恐らく総選挙がなければ自民党内部でこうした自浄作用「安倍おろし」が活発化していたと思う。そうした意味で、与野党共に混迷・混乱は必至である。政治ブログではないので、この程度にしておくが、政治においては平成の応仁の乱が始まり、政局の混乱はこれからも続くと見なければならない。
繰り返しになるが、人気者が悪いのではない。人気は顧客、有権者が創ることを忘れた時、平成の応仁の乱が始まるということだ。(続く)
追記 小池の風が止まったことに対し、更なるサプライズが用意されていると思うが、止まった風を再び台風にすることは極めて難しい。
政治をテーマとしたブログではないのでほとんど書くことはないが、2005年にブログをスタートさせた時期がちょうど小泉郵政選挙の時期と重なり、当時の小泉総理を1個の商品、小泉ブランドとして見立て、その戦略を消費論的に分析したことがあった。その中で使ったキーワードが「小泉劇場」で、劇場化社会におけるブランドの創造と衰退がテーマであった。というのも市場が心理化し、政治も、ブランドも、ある意味「未来への期待」がその本質にあることからであった。
ブランドは情報によって創られるものであるが、つまりコミュニケーションによってあるが、過剰な情報が行き交う時代にあって、ブランド・メッセージが届かない時代にいる。その突破戦略として採用されたのが劇場型コミュニケーションで、その名の通り、舞台があり、主役や脇役がいて、どんなパフォーマンスを行えば観客は喜ぶか、シナリオと演出が用意されるコミュニケーション手法である。そのパフォーマンスは、「わかりやすさ」と「驚き・サプライズ」にある。小泉劇場は物の見事にこの2つ、わかりやすさは”ワンフレーズポリテクス”であり、驚きは”自民党をぶっ壊す”であった。多くの国民は圧倒的な支持、いや共感・拍手を送り当時の支持率は80%近くであったことを思い起こす。恐らく戦後政治にあって初めての人気者であった。
そして同時に、この人気者も小泉劇場の無くてはならない脇役田中真紀子という女房役を外務大臣を解任することによって急激に支持率を落としたこともまた思い起こさせる。
周知の通り東京都知事選を勝利し、都議会選挙においても55議席という圧倒的な勝利を納め一躍人気者となった。前都知事の舛添氏の辞任の模様を1年数ヶ月前次のようにブログに書いた。
『メディアサーカスという言葉がある。過熱報道、集中報道といった意味合いの言葉である。舛添都知事に関する疑惑は東京ローカルの問題にもかかわらず、週末の舛添都知事との記者会見は民放各局はその模様を全国ネットでライブ中継するという異常なまでの報道であった。コミュニケーションの専門家であれば熟知していることだが、こうしたニュースが全国にわたって微に入り細に入り繰り返し伝えられ、一大狂騒劇と化した。
その舛添要一という人物についてであるが、「朝まで生テレビ」に颯爽と登場し、舌鋒鋭く多くの論客を圧倒した。以後政治家になり、母親を介護し、厚労大臣にまで上りつめる。そして、次の総理候補としてもてはやされた。それら人物像はTVによって創られたイメージの高さによってであり、「政治とカネ」の問題で辞職した猪瀬前都知事に代わって、大きな「期待」を持って誕生した都知事であった。しかし、TVによって創られたいわば「人気者」は、繰り返し、繰り返し、謝罪の言葉は言うものの、違法ではないもののその公私混同の「セコさ」や「屁理屈」が伝えられるとどうなるか。謝罪は本気でも本音でもなく、「嘘」と感じさせてしまう。当然「期待」は失望どころか、一気に「怒り」へと変容する。』
舛添氏を小池氏に置き換えてもその構図、劇場型社会は変わらない。そして、小池新党を立ち上げた小池新党(希望の党)は「安倍一強多弱政治」を変えようと民進党との合流(吸収合併)に臨み、一躍台風の目となった。一大サプライズである。ところが、民進党からの希望の党への合流は丸ごとは”さらさらない””削除する”という「一言」、更には政策協定書といういわば誓約書をとることなど、それまでの小池人気、希望の党への追い風がパタッと止むことになった。それは新聞各紙・TV局メディアによる世論調査に如実に出てきている。つまり、大きく「潮目」が変わったということである。
その変容について、小池氏を側面から応援していた元総理の細川氏は毎日新聞のインタビューに答えて次のようにコメントしている。
『「(安倍政権を倒す)倒幕が始まるのかと思っていたら、応仁の乱みたいにぐちゃぐちゃになってきた。政権交代までいかなくとも、せめて自民党を大敗させて、安倍晋三首相の党総裁3選阻止まではいってもらわないと」と語った。小池氏が衆院選に立候補する可能性は「恐らくないだろう」とも述べた。
小池氏は日本新党結党以来、折に触れ、細川氏からアドバイスを受けてきた。希望の党の公認を巡り、リベラル勢力や首相経験者を選別することに「同志として小池氏を手助けしたいと考えてきたが、排除の論理を振り回し、戸惑っている。公認するのに踏み絵を踏ませるというのはなんともこざかしいやり方で『寛容な保守』の看板が泣く」と強く批判した。
同じく日本新党出身の前原誠司民進党代表については「名を捨て実を取ると言ったが、状況をみていると、名も実も魂も取られてしまうのではないかと心配になる」と述べた。
さらに自身が日本新党を結成したことを振り返り「政権交代という大目標に立ち向かうときは怒濤(どとう)のように攻め立てなければ成功しない」と、候補者擁立などで混迷する「小池の乱」に苦言を呈した。ただ、「首相を目指すのであれば、保守やリベラルにこだわらず、器量の大きい人でいてもらいたい」と、門下生への思いやりもにじませた。』
更に、小池知事を応援し、圧倒的な都民ファーストの会の勝利の先導役を果たしてきた音喜多・上田都議の二人が離党すると発表された。その離党の理由は豊洲への市場移転問題や東京オリンピック・パラリンピックなどの諸問題が山積しており、こうした取り組みについても情報公開されず、「安倍一強」ではなく「小池一強」になってしまったという小池氏の政治手法を強く批判している。小泉劇場と比較するとわかるが、小泉劇場の場合は女房役に田中真紀子氏がいたり、裏方にはイエスマンこと幹事長の武部 勤氏や飯島勲秘書官が居た。小池劇場の場合は小池氏一人だけで、脇役はおらず敵役だけで、演出もシナリオも小池氏一人である。「劇団ひとり」という多才なタレントがいるが、小池劇場は全て一人回しとなっている。今回の総選挙が突然決まるという奇策により、他党は全て準備不足となっているが、希望の党の場合はこの「一人回し」による矛盾であり、時を追うごとにその矛盾が出てきたと見る方が正確であろう。
TVによって創られた人気者舛添氏は、TVを通じたマジョリティ(大衆)の「物言う力」によって辞職へと追い込まれることとなった。この事例から見てもわかるように、情報の時代にあっては、TVによっていとも簡単に「人気者」を創ってしまう。多くのタレントが間違ってしまうのは、自分の才能(タレント)によって人気者になったと錯覚してしまうことにある。人気者はTVという増幅する「映写機」によって映し出された虚像であって、実像ではない。最近では”このハゲ〜”で注目された豊田前議員も不倫報道の山尾前議員も逆の意味で同じ構図の中にある。今回の総選挙に出馬するようだが、本来目指すべきは実像は地元有権者が一番知っている。実像としての人気者であるかどうか選挙結果が明らかにするであろう。
「小池人気頼み」によって民進党から希望の党に合流した前議員は少ないとは思うが、TVが映し出す世界には、虚像としての世界が含まれるという自覚が不可欠である。さらにはTVというメディアを意図的に自由に使えるという「思い上がり」が社会には存在しているが、舛添氏の場合そのTVは同時につぶさにセコさや小狡さ、あるいは違法でなければ何をやっても、そんな実像をも映し出していく。逆にメディアに復讐されたと言っても過言ではない。
また物言うマジョリティの行動、政治でいうならば「無党派層」についてビジネスに置き換えると、「ブーム」という一過性の現象とよく似ている社会心理である。トレンドという一つの人気情報による潮流、話題となったことに自らも乗ること、若い世代の言葉で言うと、「KY・空気読めない」そんな一人にはなりたくない、一種の仲間内の自己保身本能に似ている心理である。まさか希望の党に合流した前民進党議員はいないとは思うが。
ブランドの本質はその未来価値にあり、それは顧客が創るという当たり前のことである。政治に置き換えるならば、選挙区の有権者一人ひとりによって創られるということである。ブランドの価値、つまりそこから生まれる「人気」は顧客によってのみ創られ、また忘れ去られることもあえrば、場合によっては悪評から「嫌悪」へと変化する。この揺れ幅の大きさと急激さはこの情報の時代の最大特徴となっている。
元総理の細川氏が応仁の乱のようにぐちゃぐちゃになってきたとコメントしているが、周知のように室町時代後期に発生し、戦国時代への転換点となった応仁の乱は複数の守護大名家の家督争いや将軍家の後継問題、有力大名の細川勝元と山名宗全の幕政をめぐる主導権争いなどを要因として、全国の諸大名が東西両軍に分かれる形で応仁元(1467)年に勃発した戦乱である。ベストセラーとなった「応仁の乱」(中公新書)によれば、寝返りが相次ぐなど混迷を極めた戦乱は11年にわたって続き、主戦場となった京都の荒廃や室町幕府の衰退を招いたと言われている。
民進党の希望の党への合流問題に端を発し、都議選までの小池人気は終わり逆風が起き始めている。希望の党と立憲民主党との間でドロドロとなった選挙戦が既に始まっている。そして、希望の党は選挙が初めての候補者も多く、公職選挙法違反が多発すると言われてもいる。こうした問題は与党自民党の場合も抱えており、多くの世論調査を見てもわかるように安倍政権への支持率は相変わらず低い。しかし、自民党への支持率は高いのだが、自民党はいわばネイティブな党であり、問題があれば内閣総辞職をし、リーダーを変えるという自浄作用を働かせてきた。恐らく総選挙がなければ自民党内部でこうした自浄作用「安倍おろし」が活発化していたと思う。そうした意味で、与野党共に混迷・混乱は必至である。政治ブログではないので、この程度にしておくが、政治においては平成の応仁の乱が始まり、政局の混乱はこれからも続くと見なければならない。
繰り返しになるが、人気者が悪いのではない。人気は顧客、有権者が創ることを忘れた時、平成の応仁の乱が始まるということだ。(続く)
追記 小池の風が止まったことに対し、更なるサプライズが用意されていると思うが、止まった風を再び台風にすることは極めて難しい。
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