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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2020年10月01日

今、底力が試されている  

ヒット商品応援団日記No772(毎週更新) 2020.10.1.


2000年前後から電話で「オレオレ」と身内を装って銀行口座に振り込ませた事件が多発したことがあった。後に振り込め詐欺と名称が変わるのだが、その後も詐欺事件は続き、身内などに「なりすます」ことによる犯罪であることは変わらない。いつの時代も「危機」はあり、コロナ禍においても多様な詐欺が多発している。その象徴の一つは周知の個人事業主などを支援する持続化給付金詐欺である。実は「不正受給をしてしまった」といった相談が、全国の警察や消費生活センターに相次いで寄せられているという。つまり個人事業主になりすましてコロナ禍に便乗した詐欺である。

また、「ドコモ口座」を端緒にゆうちょ銀行をはじめとした不正引き出し事件も起きている。1年前「二段階認証」を知らなかった7payのお粗末なセキュリティが問題になっばかりである。「IDとパスワード」さえ漏洩しなければ守ることができると勝手に思い込んでいたそれまでの「常識」はすでに非常識になってしまっている。「利用者の利便性、簡単さを向上するため」という理由から二段階認証を行わなかったことによる。7payの場合、「パスワードリセット」のリクエストを送り、パスワードのリセットメールから本人になりすまして悪用するという仕掛けであった。こうした「リセット機能」を使う方法もあるが、コロナ禍が始まった春ごろから盛んに「フィッシングメール」が届くようになった。有名企業を装った電子メールを送信し、偽装されたURLをクリックさせることで、個人情報を取得しようとするオンライン詐欺のことであるが、私のところにもAmazonや楽天といった誰でもが使うサイトを語ってパスワードなどを入手する手口である。使い慣れた信用のあるAmazonや楽天になりすまして情報を入手する詐欺である。

ところで今から8年ほど前に「パソコン遠隔操作事件」が起きたことを覚えているであろうか。あの電子掲示板「2ちゃんねる」を介して他者のパソコン(PC)を遠隔操作し、これを踏み台として襲撃や殺人などの犯罪予告を行った事件である。犯人に仕立て上げられ誤認逮捕されたのは5人で、事件に使用されたプログラムはコンピューターウイルスと呼ばれた事件である。真犯人とされた人物は逮捕・保釈後、全て事実であったと告白をし、10年の求刑で現在も収監されている事件である。
昨年秋に起きた7PAY事件以降多発しているサイバー犯罪は、「パソコン遠隔操作事件」のような高度なサイバー犯罪からは程遠い「使いやすい」からという安直な判断によるなりすまし事件である。

一方、首都圏及び大阪では「ガス点検」を装った強盗・強盗致傷事件が多発している。ガス会社を装ったこれもなりすましによる強盗事件であるが、冒頭の振り込め詐欺事件におけるメンバーがコロナ禍によって在宅している老人世帯を狙った犯行とのこと。犯人は若い世代によるもので「#闇バイト」に応募した犯行でこれまた極めて安直な動機による。コロナ禍による失業、あるいはアルバイトの解雇という背景からであるが、Googleで「闇バイト」で検索すると約2800万件弱にも及んでいる。Twitterなどには警察の広告が掲出されているが、全てを網羅することはできない。

これまでの犯罪としての詐欺事件と言えば、マルチ商法をはじめ儲けたいといった欲望を背景にしたが違法な犯罪が大半を占めていた。勿論、表立っての違法性は隠してのことで、先日逮捕されたジャパンライフのように「安心」のために「桜を見る会」のように政治家や有名人を広告塔にするといった手法によるものであった。信用と言う心理の隙間を狙った犯罪であるが、今起こっている犯罪は情報の時代、そのテクノロジーの隙間から生まれたものである。
多くの犯罪研究者・専門家が指摘することは、嫌な言葉であるが「時代」を見事なくらい映し出している。20数年前になるが、その専門家の一人は犯罪を企てる組織や人物はこれも嫌な言葉であるが、まさにマーケティングを行なっていると。犯罪によって利益を得るための着眼や方法を常に探し回っているということである。凶悪犯罪は減少はしているものの刑法犯全体としては増加傾向にある。その刑法犯の代表がインターネットにおける「情報犯罪」、いわゆるサイバー犯罪、更にはSNSを使ったものであろう。犯罪は「個人」には見えないところで行われ、犯人にたどり着くことが難しい。しかも、最近の傾向としては、ある程度の専門知識を持つ者であれば犯罪に走ることが可能であるからだ。

犯罪者もまたマーケティングを行なっていると書いたが、もっとストレートな表現をすれば「お金」はどこに集まっているかである。日本で言うならば、「人」で言うならば高齢者の預貯金であり、企業であれば金融機関であり、その先には国がある。持続化給付金などは国であり、金曜機関や決済機関と言うことになる。
しかも、デジタル化はこれからもどんどん進んでいく。「人」の判断を超えて「システム」のよってお金は流通していく時代である。政府はデジタル庁を創設し、まずは行政のデジタル化を進めていく方針とのことだが、セキュリティと言う自己防衛市場が急務となっている。

1年前の5月に衝撃を受けた川崎殺傷事件が起きた。ブログにも取り上げた事件だが、そこには「ひきこもり」をはじめ、いじめ、孤立、家庭内暴力、80 50問題、中高年引きこもり61万人、・・・・・・少子高齢社会のが抱えた歪みから生まれた象徴的な事件であった。
その川崎殺傷事件の犯人についてであるが、中高年となった「子供」がたどった時代を考えるとまず思い浮かぶのは「就職氷河期世代」である。バブル崩壊によって就職口が閉ざされた世代であり、さらに1990年代多くの神話が崩壊した時代を生きてきた世代でもある。ベストセラーとなった田村裕(漫才コンビ・麒麟)の自叙伝「ホームレス中学生」の舞台となった時代である。「ホームレス中学生」はフィクションである「一杯のかけそば」を想起させる内容であるが、兄姉3人と亡き母との絆の実話である。時代のリアリティそのもので、リストラに遭った父から「もうこの家に住むことはできなくなりました。解散!」という一言から兄姉バラバラ、公園でのホームレス生活が始まる。当たり前にあった日常、当たり前のこととしてあった家族の絆はいとも簡単に崩れる時代である。作者の田村裕さんは、この「当たり前にあったこと」の大切さを亡き母との思い出を追想しながら、感謝の気持ちを書いていくという実話だ。
明日は分からないという日常、不安を超えた恐怖に近い感情は家族・絆へと向かい、その心のありようが読者の心を打ったのだと思う。「個人」という視点に立って考えれば、未知の「挫折」を数多く体験した世代である。

今起きている詐欺事件も1990年代のバブル崩壊の時の時代に似た「不安」が社会の底流となっている。コロナ禍による倒産・廃業企業が増え失業者も同じように増え続けている。また、8月に入り厚労省の発表では自殺者が増加していると言う。7月の家計調査の結果も前年同月比マイナス7.6%の減少と消費の低迷状態は変わらない。更に、先日全国の基準地価が発表され、銀座や浅草など観光地の地価が大きく下落したと報じされている。こうした不安材料を秤のようだが、世界的なコロナ不況にあって2020年4~6月期は自動車メーカーが軒並み巨額赤字を計上したが、トヨタだけは1588億円の最終黒字となったと報告されている。トヨタらしい底力のありようを見る想いであるが、消費現場である街の商店街には活気が戻ってきている。例えば、何度となく取り上げてきた吉祥寺の街や古くからある十条商店街など賑わいは戻ってきている。そうした町場の商店街の回復には必ず中心となる店が存在している。精肉店さとうのメンチカツ人気もそうであるし、十条銀座商店街の鶏肉店鳥大のチキンボール人気も健在のようだ、見えない不安が蔓延する時代にあって、今まで通り、いつもの日常を提供してくれる店がいち早く復活していると言うことだ。衛生管理を含めたコロナ対策は当然であるが、それまで培ってきた信用が不安を取り除いてくれていると言うことだ。時間差はあっsても顧客は必ず戻ってくる、それはトヨタの業績にも通じる者であり、つまり「底力」と言うことになる。

あるいは大阪の友人からの情報であるが、西田辺駅前のローソンと隣に併設されたバー「のぶちゃんマン」がコラボした業態「コンビニ❎バー」が人気となっているとのこと。コンビニでおつまみ買って、一杯」というわけである。ちょい飲みには格好の業態でありそうで無かった点が人気の秘訣のようだ。これもまた、コロナ禍から生まれた小さな業態ということができる。
不安を背景にこれからも犯罪は発生するが、自己防衛に走る生活者の不安を解決するのもまた商業ということである。これから先、「コロナ禍から学ぶ」として東京・大阪の元気な商業を取材していく予定である。(続く)
  
タグ :底力


Posted by ヒット商品応援団 at 13:06Comments(0)新市場創造