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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2006年10月08日

話題と着眼 

ヒット商品応援団日記No105(毎週2回更新)  2006.10,8,

ここ10年ほど、通信をはじめとしたIT技術の進化、インターネットの普及によって世界は圧倒的に小さくなった。私のブログですら、外国語圏からのアクセスが多い日には十件近くもあり、どんな読まれ方をしているのか興味がわく位である。ところで、情報化社会の特徴であるが、情報が集積すればするほどまた情報が集まる。人気の「きっこの日記」でも、取り上げて欲しいとする情報依頼が数多く寄せられており、こうした現象をよく表している。少し前に、エリアにおける情報&サービス集積が、代官山から表参道へと移ったと書いたが、メディア=情報発信という視点に立てば同じ「中心化現象」である。情報の中心へ、中心へと情報が集まる現象である。最近では「ハンカチ王子」が使う青いハンカチに情報が集中したが、大阪にあるメーカーは今から作っても2〜3ヶ月先にしか出来上がらないからといって製造しなかったが、ここにきてサンリオとのコラボレーションで発売されるという。まあ、そこそこ売れるとは思うが。国体終了の時間経過と共に青いハンカチは忘れ去られていく。

さて、このように情報は物理的距離を短くし、しかも中心へ中心へと向かっていく特質を持っている。こうした情報化社会にあって、誰もが情報の中心に身を置きたいと思っている。裏返せば、このように経済ばかりか「情報格差」が生まれているということである。しかし、更に裏返せば、こうしたマス化したトレンド情報には辟易とした人もまたいて、「隠れ家」や「路地裏」へと足を向ける。つまり、情報格差を量的な格差としてではなく、質的格差(=受け止め方の違い)として見ていくことが必要だと思う。私が「質的」という場合、使用価値、使える情報という意味である。使えない情報は単なるデータであり、紙や音声にすぎない。少し前にも書いたが、私にとっても情報源はマーケティングやビジネス分野というより、医やテクノロジー、サブカルチャーなど生活の断面を専門分野で切り取ってくれている人たちの情報である。つまり、その分野での情報の中心にいると、私が考えている質的な情報である。更には、日々起こる社会事象と生活者の反応である。理屈っぽく言うと、こうした情報をモザイクのように埋めて、見えてくるものが生活者像であり、生活像だと思っている。

しかし、「予測を読む」でも書いたが、どれだけ情報を集め、分析しようとも確信することにはならない。真の情報は現場にあり、しかも刻々変化し続ける。今から5〜6年前、札幌の専門店経営者の方につれられて当時札幌で話題の「スープカレー」の店に行ったことがある。路地裏の民家を改造したエスニックな店であったが、今や東京でもそのマジックスパイスなど出店しており、ブームになっている。しかし、来年の今も東京に出店しているスープカレーの店が更に増えているとは思えない。今は情報の中心にスープカレーも入っているが、いつ外れるか分からないということである。こうしたブームを継続させるには、良い事例としてはラーメンがある。ラーメンブームの発端はテレビ東京が取り上げたことからだと思う。ご当地ラーメンから、ご当人ラーメン、ランキング、達人決定戦、・・・・しかも競争がラーメンを進化させ、何よりも日常食、回数食であるから継続していると考えている。スープカレーは、こだわり、うんちくのあるカレーの一アイテムとしては確立していくと思う。しかし、もう少し俯瞰的に見ていくと、ラーメン、カレー、各種どんぶり、更には讃岐うどんに注目が集まっているが、全て「食堂」のメニューであることに気づくべきだと思う。確か幕内秀夫さんの「粗食のすすめ」が発刊されたのが、1995年7月で、丁度その頃大衆食堂や下町がテレビなどで取り上げられはじめていた。世帯収入が減少しデフレに向かう少し前である。「ふるさと回帰」にもつながるテーマであるが、新商品開発、新業態開発の着眼の一つには、間違いなく「食堂」がある。「プチ思い出消費」というキーワードでも書いた「給食」にも同様の着眼ができると思う。つまり、既に「おふくろの味」は無くなっており、食堂や給食がその代わりを果たしていると見るべきである。そして、そこにどう1〜2のアイディアを付加するかによって、次のヒット商品が生まれてくると思う。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:59Comments(0)新市場創造