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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2016年05月29日

消費増税再先送りのシナリオ

ヒット商品応援団日記No647(毎週更新) 2016.5.29、

伊勢志摩サミットの総括スピーチで安倍総理は消費増税の再先送りを示唆したが、私も含め多くのビジネスに関与する専門家はすべて織り込む済みである。私も3月25日のブログで再先送りの背景について書いたので、繰り返すことはしないが、アベノミクスの失敗の結果の再先送りであると受け止められることを恐れ、伊勢志摩サミットにおける世界経済の「危機説」という議論を踏まえての「理屈」という誹りは免れ得ないであろう。その数日後米国FRBのイエレン議長は「今後数カ月のうちの利上げ」を示唆しており、米国景気の改善が進んでいることを示したように世界経済の「危機」などないということである。サミットでの危機をヘッジするための各国による「財政出動」も不調に終わった。それもこれも夏の参院選対策であるといえよう。
さらに心配なことは、5月18日に発表された財政諮問会議による成長戦略である。読まれた方もいると思うが、骨太の方針は「プライマリーバランス」という視点がまるで欠落しており、まさに「骨抜きの方針」となっている。つまり、何が何でも目先の経済を活性させるための財政出動で、つまり国の借金はさらに増えていくとうことである。消費増税先送りには賛成ではあるが、大規模な財政出動ではなく、緊縮財政にすべきであろう。

10%の消費増税は多くの専門家が予測するように東京オリンピックの前年に先送りされる。いわゆる施設工事などのオリンピック景気のピークを迎える時であり、翌年の2020年は本番のオリンピックを迎え、多くの訪日外国人による消費が続くこととなる。これまで「2020 年に 2,000 万人」としてきた政府目標の前 倒し達成がほぼ確実な情勢となっており、仮に2011年以降の増加ペースが今後 も持続した場合には、2020 年には 3,300 万人に達する、という日銀の試算もある。(詳しくは日銀による「2020 年東京オリンピックの経済効果」を読まれたらと思う。)但し、この恩恵のほとんどは東京、首都圏となる。

さてのその後の2020年以降であるが、自民党若手議員による幾つかの小委員会がスタートしている。その中に「レールからの解放~22世紀へ新たな社会モデルを」とした委員会で委員長には橘慶一郎、事務局長にはあの小泉進次郎が名を連ねている。その内容であるが、2020 年以降を「日本の第二創業期」と捉え、戦後続いてきたこの国のかたちを創りなおす、とある。人口減少時代における日本の国づくりということであり、その序文、入り口として、その理想を次のように謳っている。

「学びも仕事も余暇も、年齢で決められるのではなく、それぞれが自分の価値観とタイミングで選べる未来へ。政治が用意した一つの生き方に個人が合わせるのでなく、個人それぞれの生き方に政治が合わせていく。そうすればきっと、100 年の人生も幸せに生きていける。・・・・・・・・・・・・しかし、終戦直後、敷かれたレールも無い中で、一人ひとりが挑戦を続け、世界に誇る唯一無二の社会モデルを確立したのが日本という国である。むしろ先人たちが遺した豊富な資産と、日々進化する新しい技術がある今、できないことは何もない。人口減少さえも強みに変える、22 世紀を見据えた新しい社会モデルを、私たちの世代で創っていきたい。」

最早「アベノミクス」といった金融政策のみではなく、人口減少国日本を見据えた生活者像を描こうとしている。その理想はよし、志をもって進んで欲しいと思うが、具体的な構想の具現化を是非示してもらいたいものである。これは政府与党の若手が描く、消費増税実施以降の経済財政のあり方である。

ところでこうした構想、シナリオを踏まえ、消費現場を運営していくにはどうすべきかである。ここ数ヶ月の私のブログを見ていただければわかると思うが、ユニクロの高価格設定の失敗に現れているように、あるいは吉野家を始め牛丼大手が元の価格帯に戻してきているようにデフレ的世界が日常化している。更に言うならば、マクドナルドは高価格帯の新商品導入によって業績を戻し始めている。これは新製品効果もあるが、多くの赤字店舗を閉鎖した効果によってである。デフレの騎手と呼ばれ上場した2002年には3891店舗あったが、2015年には2956店舗まで縮小している。900店舗以上もの店舗閉鎖である。これは2008年のリーマンショック後に大手ファミレス3社が500店舗ほど閉鎖して立て直しに成功した効果と同じである。つまり、マーケット規模を採算に合わせて縮小したということである。ある意味経営的には適正規模への縮小であるが、顧客の側から言うならば外食出費の選択的節約ということになる。
あるいは未来塾でも取り上げた「俺のフレンチ」などの立ち食い業態も話題は一巡し、当初目標である300店舗への出店拡大をストップさせ、あるいは着席業態への転換などリニューアルしているのもマーケット認識として同様である。

こうしたマーケットの縮小は家計支出の減少とパラレルな関係にあるのだが、これもブログにも書いてきたことだが、「街場」の人気店は元気そのものてある。全て生業的パパママ調理店であるが、一種のレトロブームにものっており、マニアックなB級グルメ、B級オタクが活性の主人公となっている。これは飲食店ばかりでなく、これも「未来の消滅都市論」にも書いたが、横浜の興福寺松原商店街、江東区の砂町銀座商店、さらには谷根千の谷中ぎんざ商店街など、・・・・・・元気な「街場」の商店街は存在している。全て独自な商売観・文化に裏付けされているのだが、2020年までにこうした商売観を磨き、より独自なものにすることである。

こうした街場人気の潮流は、足下にいくらでも未知なる宝物があるということに生活者が気づいたことによる。そうした気付きを触発したのが周知の「街歩き」である。1970年代から1980年代にかけては未知なる興味の先は海外であった。しかし、バブル崩壊後は家計収入が減少したこともあり、興味の先は「足下」「日常」「小さなこと」へと向けられてきた。「知ってるつもり」が実は知らないことばかりであったことがわかり、しかもオタクの後を追うように新鮮な体験をするようになった。そうした顧客の動向にやっと気づいたマスメディアも激安やメガ盛り・食べ放題から、街場で愛され続けてきた食堂などに注目し始めてきている。
つまりロングセラービジネスから学び、2020年以降に備えるということである。情報の時代、話題づくりの時代はともするとベストセラーを求めがちである。しかし、街場の人気店には小さいながらもロングセラーという固有の文化を持っている。あの親父が作るチャーハン、あるいはおばあちゃん食堂もそうであるし、そこには「人」が創る文化がある。生活者はそうした固有性を楽しんでいるということだ。それが消費税8%と10%の差、2%を超えさせてくれるのである。そして、2020年までに文化を創ることはできないが、まずは目の前にいる一人の顧客に真摯に向き合うということだ。そこから文化は生まれてくる。(続く)

電子書籍「未来の消滅都市論」は以下のサイトから
Kindle
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E3%81%AE%E6%B6%88%E6%BB%85%E9%83%BD%E5%B8%82%E8%AB%96

紀伊国屋書店
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楽天Kobo
http://search.books.rakuten.co.jp/bksearch/nm?sv=30&h=30&o=0&v=&spv=&s=1&e=&cy=&b=1&g=101&sitem=%CC%A4%CD%E8%A4%CE%BE%C3%CC%C7%C5%D4%BB%D4%CF%C0&x=42&y=13


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:40Comments(0)新市場創造