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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2016年05月22日

劇場型政治の変容

ヒット商品応援団日記No646(毎週更新) 2016.5.22、

このブログは政治をテーマとしてはいない。しかし、生活者の意識、認識が「今」どこにあるのかを見ていくために、敢えて取り上げていくことがある。タイトルの如く、以前取り上げた劇場型政治の先駆者はあの元総理小泉純一郎である。奇人変人と言われ、「自民党をぶっ壊す」と政治的閉塞感を突き抜け、70%以上の圧倒的な支持率を得た政治家である。当時はわかりやすくしかも強く伝えるために「ワンフレーズ」で、さらにあっと驚くようなサプライズワードを持って劇場に立ったわけである。現在米国で行われている大統領候補予備選における共和党のトランプと類似点は多い。経済をベースにした時代の閉塞感がまん延するとき、こうしたパフォーマーが出現する。

ところでこうした劇場型政治の誕生は過剰な情報が行き交うなかでのコミュニケーションであったが、当時の劇場演出は、現在のようなスピーチライターやスタイリストなどのスタッフチームによるものではなく、小泉元総理の場合は天性によるところが大であったと思う。主役は小泉潤一郎、脇役は田中真紀子、後の郵政民営化選挙の時の脇役は「抵抗勢力」であった。それらストーリーは「役者」が演じていることを感じさせることなく、生き様を見せることができ、それを小泉劇場と呼んだのである。以降、天性の「役者」としての政治家は、「宮崎をどげんとせんといかん」と言った東国原元宮崎県知事、弁護士でTV番組のデベート好きであった橋本前大阪市長、と続いてきた。舞台はTVメディアを中心にしたもので、旧来の政治家とは異なる政治手法である。共通するのはTVメディアを舞台とした「役者」政治家である。

こうした奇人変人・役者たちとは正反対の政治家である舛添東京知事が、豪華外遊や週末湯河原別荘への公用車利用、さらには参議院議員時代の政治資金の公私混同で厳しくその資質を含め問われている。まさに劇場に立たされた主役としてである。否、主役ではなく、脇役かもしれない。1970年代以降、サイレントマジョリティという言葉が政治の世界で使われるようになった。「物言わぬ多数派」、「静かな多数派」という意味であったが、現代のマジョリティは、「物言う多数派」、「うるさい多数派」である。「ノイジー・マイノリティ」という言葉があるが、「サイレント・マジョリティ」の対義語とされている。しかし、この対義語の世界は高度情報化社会にあっては最早存在しない。少し前に話題となった「保育園落ちた、日本死ね」と書かれたブログがツイッターなどで拡散していく現象を目の当たりにしているが、こうした「物言う」生活者がマジョリティになってきたということである。
主役は誰か、それはある意味「物言う都民」であり、牙を持ったマジョリティとして、一種不気味さのあるマジョリティである。

今回の舛添都知事による記者会見は民放3局でライブ中継されており、これ自体も極めてイレギュラーなことである。記者との間で、どんなやり取りをするのか、劇場のライブ中継ということである。そして、ここで明らかになったことは、政治資金規正法がいかに「ザル法」であるか、極めてわかりやすく理解できたことにある。そのことは政治家舛添要一は過去東大の助教をしており、「ザル」の使い方は当然熟知しており、違法なことはやってはいない。であるが故に、さらにタチが悪いと感じてしまうということに至る。そして、この分かりやすさは例えばホテルでの会議利用(家族旅行?)あるいは回転寿司利用といった日常的な世俗j的なことであり、その公私混同の内容が実感を持った分かりやすさであった。セコさ、小狡さ、といった都民の批判は人格、品格への指摘となっている。「そんな人物に都政が任せられるのか」といった不信・疑念である。

ビジネス世界に置き換えるとさらによくわかるかと思う。不祥事が起きると釈明会見が開かれるが、「危機感路」のプロ・専門家が記者会見の内容などにコメントしているが、その多くは10数年前のモンスタークレーマーといった特別な少数顧客対応が中心となっている。今やそうではなく、「危機」を起こさせないことが第一義としてあり、それは常に顧客に聞き続けることしかない。そして、聞いたら、必ず答えを返すことである。「物言う都民」「物言う多数派」に耳を傾けるということである。主役は顧客・都民であり、脇役は自社・都知事であるということだ。
舛添劇場の行方はわからない。しかし、弁護士などによる第三者による法的な調査をいくらやったところで、信頼回復にはならない。既にマイナスのスパイラルに入っており、第二幕は6月の都議会での議論いかんによってではあるが、「物言う都民」の矛先は都議会議員にも向けられる。主役と脇役が逆転している時代ということである。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:42Comments(0)新市場創造