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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2007年08月19日

素の価値再考

ヒット商品応援団日記No194(毎週2回更新)  2007.8.19.

前回モノマネという着眼について書いてみたが、今流行っているものを私なりに考えを書いてみたい。ここ2〜3ヶ月爆発的に売れているのがあのビリーによるエクササイズDVD「ビリーズブートキャンプ」だ。ビリーによる軍隊式エクササイズのブームに続いて更にハードなダイエットエクササイズが続いている。インターネットを使った調査会社であるヤフーバリューインサイトはビリーのヒット要因を「話題性の高さやプログラムの新しさから楽しく運動ができ、さらに自宅で気楽にできるという自由度をあわせ持った商品でもある。このような特徴が生活者の求めるダイエット方法ともマッチしていたため、ヒット商品になったのだろう」と分析している。(http://www.yahoo-vi.co.jp/research/00410.html)しかし、この分析は結果論としてのコメントであり、ヒットの背景としてダイエットの何に着眼し成功したか、今ひとつ分からない。実は、結論から言うと、健康への生活者意識が変わってきているというのが私の考えである。今年の1月「発掘!あるある大辞典」における「納豆ダイエット」ブームと比較し、誰もが不思議に思っていると思う。それまでは「誰でもできる」「楽して痩せられる」「食べて痩せる」「眠っているだけでやせられる」といったダイエット食や方法が注目され、大きな健康ブームとなっていた。恐らく、「納豆ダイエット」がやらせという情報偽造であったのが発覚したことをターニングポイントに、やはり自ら身体を動かさないと痩せられないという方向へと大きく振れて来たと見るべきである、これが私の分析の要点だ。

このブログでも取り上げて来たメガ・マックや特盛り丼といった「ガツン系」の復活もこうした従来の健康ブームからの揺り戻しであると見なければならない。ちょうどこのブログを書いている最中に三重県伊勢市の職員がジョギング中に倒れ突然急死したとのニュースが報じられた。亡くなった職員は市長の「脱メタボ宣言」に沿って「メタボ侍」として急激に体重を落としたのが原因ではないかとの内容であった。このように健康であることを目指し逆に死に至ってしまうという皮肉な社会となっている。健康ということが本来の意図とは異なる一種のヒステリック状態を作り出してしまうのが情報化社会の特徴である。
つまり、健康ビジネスの在り方も次のフェーズへと移行し始めて来たと考えている。それはある種の「過剰さ」、簡単に痩せられるという過剰さ、一方身体を過剰に痛めて痩せる過剰さを削ぎ落とし、「そこそこ」「ほどほど」といった認識への転換だ。あるいはバランスをとる、といっても良いかもしれない。

揺り戻す先は何か、がビジネスの大テーマとなる。1年以上前に一度書いたが、食という領域では素食になると思っている。「もとしょく」と読んでも、「そしょく」と読んでもかまわない。素「もと」となる食は全て生命あるものだ。その生命力をいただくことが健康のもとになり、最高の贅沢になる。既に、感度のよいオーナーシェフは敢えて雑草が生い茂る畑で栽培した生命力溢れる野菜を使った料理に取り組んでいる。素をシンプルと読んでも良いし、粗食の粗と考えても良いかと思う。素材の持ち味を生かす、調理した食の出し方、デザインもシンプル。このように書くとまるで精進料理や懐石料理のようにイメージされると思うが、前回の「モノマネ」という着眼に準じていうと、モデルとすべきは懐石料理かもしれない。そして、静かなブームとなっている宿坊が健康回復ホテル、あるいはダイエット場所、ダイエットスクールの役割を果たすことになるかもしれない。

ビリーに替わるエクササイズになるが、江戸時代の養生訓ではないが、早寝、早起き、を基本に腹7分目ということになると思う。エクササイズという言い方では、「歩く」という基本、歩き方等素の動きへの回帰となる。既に、路地裏散歩ブームとなっているが、若いサラリーマンも万歩計を腰につけて歩いたり、自転車通勤も更に盛んになる。健康は日々のことであり、継続できる小さなことの中に、次なるビリーがある。そして、こうした身体づくりを入り口に、男女共にフィジカルに特化した身体づくりが流行ることになる。この素への着眼は健康ばかりか、メガ・テーマである美容にも既に適用されている。素顔、素肌、といった素の魅力のための美容法やサービスであるが、このテーマもまた取り上げてみたい。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:27Comments(0)新市場創造