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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2007年01月21日

デフレとインフレ 

ヒット商品応援団日記No133(毎週2回更新)  2007.1.21.

今、デフレとインフレ という奇妙で分かりにくい現象が同じタイミングで起きている。今回の日銀の金利引き上げの見送りに対する論議を俯瞰して見てみるとこの奇妙さがよく分かる。つまり、マンホールのふたや電線の盗難がニュースになっているが、銅をはじめとした鉱工業原材料は世界的なインフレで高く売れるため盗難といった現象が起きている。一方、マクドナルドの「メガマック」が若いサラリーマンの間で人気を呼んでいる。ビーフが4枚も入ったハンバーガーで、1個350円と安く、個数限定販売になっている。1990年代後半デフレの旗手と言われていたマクドナルドらしい新商品である。ざくっと簡単に整理してしまうと、流通=消費面ではデフレ、製造=コスト高ではインフレといった構造が浮かび上がってくる。私なりに単純化し整理すると、未だデフレ状態だから金利引き上げは中小企業に対し負担が大きいという考え方と、いやインフレ状況や預貯金という課題もあり金利を元に戻すべきという考え方のせめぎ合いであったと思う。デフレとインフレの同時進行、こうした現象の背景には日本が置かれている「グローバル化」があり、日銀の金利引き上げの是非もこの認識の違いによるものである。

このグローバル化は格差社会あるいは2極化という現象の背景でもある。好景気の象徴となった上場企業の利益の60〜70%は、実は輸出など海外市場で得られた利益と考えられている。一方、勤労者の収入は私が指摘したようにマイナスを続けている。詳しくは「いざなぎ景気と格差意識 」(2006.10.29./http://remodelnet.cocolog-nifty.com/remodelnet/2006/10/index.html)を参照して欲しい。
ところで昨年、東京日本橋に世界初の六ツ星ホテルマンダリンオリエンタル東京がオープンし、今年には六本木防衛庁跡地のミッドタウンの中に五つ星ザ・リッツカールトン東京がオープンする。日本の都市銀行や外資のスタンダードチャータード銀行では個人資産の運用を行うプライオリティバンキングサービスも行われている。つまり、東京ではなく世界都市TOKYOとしてみなければならないということである。また、一方ではこのブログでも何回か取り上げたので詳しくは書かないが、東京足立区のように生活保護世帯や給食費支援世帯も多く、商店街ではシャッターが下りている店舗が多く見られる。もし、格差というのであれば、東京の中にも格差はあるのだ。東京という市場の中でも格差、2極化は存在している。

さて、こうした市場状況でどのようなビジネスを行うかであるが、価格帯という設定を行う前に必ずしておかなければならないのが「誰を顧客とするのか」いう市場の規定である。以前、「中心化」というキーワードを書いたことがあるが、「情報」あるいは「経済」が中心部に集積されると、「中心」と「周辺」において大きな格差が生まれるというものだ。特に、情報も経済も中心で何が起こっているかを見極め、そのサービスを享受するために更に中心へと移動する。人もその情報とサービスの動きに応じて中心へと移動する。東京でも格差は生まれており、言葉の正確な意味では都心回帰ではなく、「中心回帰」となる。赤坂、六本木、品川、丸の内・日本橋・銀座などがその「中心」である。例えば、地方でも同じで、沖縄という市場を見ていくと那覇市は中心であり、糸満は周辺となる。こうした集中化現象をていねいに見ていくことが「誰を顧客」とするのかという課題に近づく道だ。ふるさと回帰やIタウン現象はと指摘する人もいると思う。それは都市(中心)が失ってしまった自然や歴史文化などを取り戻す動きと見れば良い。いずれにせよ、良い悪いの問題は別にして、これからも中心化は進んでいく。ある意味で世界市場の縮図として日本市場があると思う。当分の間、デフレもインフレも同時並行的に進み、また「格差」も単純に都市と地方といった論議を超えてまだら模様の如く複雑な市場構造になっていくと思う。もし、ヒット商品という言葉を正確にいうならば、規模の問題ではなく、想定した「顧客」「市場」のなかで圧倒的な支持を得る商品ということとなる。東京でのヒット商品が地方でもヒットするとは限らない。また、逆に地方でのヒット商品が東京でもヒットするとは限らない。増々、一般的平均的なヒット商品など無い時代に向かっている。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:41Comments(0)新市場創造