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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2007年01月10日

産土(うぶすな) 

ヒット商品応援団日記No130(毎週2回更新)  2007.1.10.

年頭のブログでは「生」への気づきが高まるであろうと書いた。そして、先週には「生活文化」の時代へと向かうとも書いた。例えば、「生」×「生活文化」=?、皆さんはどのように考えるであろうか。私の答えは「自然リズムを取り入れた生活」「旧暦の生活歳時」になる。冬は冬らしく、あるいは春らしく全てのものが芽吹くように、といった「らしさ感」は都市においては失ってしまったものの一つである。日本における生活文化で誰もが取り入れているのが正月である。地方には地方固有の風土に培われた正月がある。雑煮や餅一つとっても全て異なっていることは周知の通りである。自然時という記念日の最大のものが正月である。勿論、今なお旧暦の正月が生活の中に根強く残っている沖縄のような地方もある。数年前から、旧暦カレンダーが東急ハンズや西武ロフトでは人気となっている。特に、若い世代にとっては「温故知新」で新しい「何か」を感じているのだと思う。

田舎暮らし、ふるさと回帰、スローライフ、家庭菜園、ある意味では呼吸のリズムに合わせた散歩なんかも、生命のもつリズム回帰でもある。あまりにも速いスピード、昼夜の境目のない無時間化に対する取り戻しである。以前、快眠をテーマに体内時計について調べたことがある。人間の生命リズムの一つであるサーカディアンリズムは1日25時間となっている。この1時間の調整を眼から入る太陽光によって体内時計が調整している。最近では、その他にも胃を始め複数の体内時計が存在していることが分かってきた。当たり前と言えばそうであるが、人間も自然の一部であり、何億年にもわたって今日へと至る自然のもつ生命リズムに全て従っているのだ。最近のライフスタイル傾向は、意識、無意識を問わず、そうした自然リズム、生命リズムへの気づきが高まっていることの証だと思う。

死語というより、ほとんど聞いたことの無い産土(うぶすな)という言葉がある。産土は地縁信仰、郷土意識に結びついた信仰、あるいはその土地固有の産物を指し示す言葉である。今では血縁信仰である氏子神社などと混在してしまっているが、一般的には神社として残っている。産土は地域の守り神だけでなく、安産の神とも関係があり、生まれた子供の初詣や成人式、七五三に守り神に詣でる風習は今なお残っている。こうした地縁信仰から生まれた産土はコミュニティ形成と深く結びついており、今課題となっている地域活性への一つのヒントとなる。つまり、自然リズム、生命リズムが地域の祭事という形で残っているということだ。その祭事には必ず「食」が守り神に捧げられる。特に、お菓子類はユニークな産土として、今なお残っているものの一つだ。「ぼたもち」と「おはぎ」の違いは分かるであろうか。あんこの違いでもなければ、餅の違いでもない。春と秋の彼岸に食べる季節の違いにある。名前の通り、牡丹の咲く春の彼岸に食べるのが「ぼたもち」で、秋の彼岸は「おはぎ」である。このように、もう半歩、もう一歩踏み込んで、コミュニティを見ていくと産土を始め面白い商品、面白い物語に巡り会う。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:25Comments(0)新市場創造