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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2006年09月24日

ケーススタディ:予測を読む

ヒット商品応援団日記No101(毎週2回更新)  2006.9,24,

このブログを始めてから1年余りになるが、ブログを始めるきっかけは、以前いた会社で早朝勉強会をやっていたことがきっかけとなっている。というのも、当時の仕事はプロジェクト単位でチームを組んで進めることから、なかなか新しいメンバーと仕事を一緒にやる機会が無かった。”次回は一緒にやろうな”が口癖になってしまい、若手に教えたくても特別な時間を設けるような余裕はなかった。ある時、一緒にプロジェクトを進めていた女性から、”なぜそのように簡単にキーワードが出せるのですか”と聞かれ、一緒にやっている人間ですらまだまだ分かり得ないのだなと思いスタートしたのが最初であった。2週間に一度、事前にテーマ資料を渡し、早朝30分間の勉強会であったが、私自身にとっても伝えることの難しさを含め良い勉強になった。今、同じことをこのブログでもやろうとした訳である。いわば、「バーチャル勉強会」である。当時の勉強会参加メンバーの多くは転職し、異なるビジネスフィールドで活躍しているが、時々ログをチェックする際、ああ当時と同じように読んでくれているなと思っている。これがブログをスタートさせた一番の理由である。

ところで前回の続きであるが、「未来は予測できない。しかし、未来の芽は既に起こっており、その帰結を集め予測する」という方法論について書いた。そして、早朝勉強会ではないが、ケーススタディを通して、やってみようと思う。ところで、私が経験した具体的ビジネスは、クライアントとの契約上、過去となっても触れることができないことになっている。そこで、このブログでは多くのシンクタンクや総研が毎年出している予測の内、今回は電通消費者研究センターが出した「2005年の話題・注目の商品」(www.dentsu.co.jp/news/release/2005/pdf/2005067-1207.pdf )をテーマに一緒に勉強してみたい。このリリースは、5つの消費トレンドを抽出し、2005年度というヒット商品の「帰結」を踏まえ、2006年のヒット予報を行っている。前回の方法論の内、最初の「情報源」については、ネット上でのアンケート調査と、トレンド系の雑誌の編集長へのアンケート調査による「予測」である。さて、皆さんは2006年の上半期を既に終え、今年度の予測がどれだけ当たったか、どのように判断するであろうか。

消費トレンド①の「華」というキーワードにおける2006年のヒット予報の内、確かに予報どおりだなと思ったのは「高級ヘッドフォン」と「表参道ヒルズ」ぐらいで、あとはヒットしたとは思っていない。昨年上半期の超ヒット商品であるiPodを追いかけるように携帯各社を含め各社が音楽配信に向かう中で、特に若い世代は更なる高音質の「違い」をヘッドフォンに求めヒット商品となっている。また、表参道ヒルズは、あの安藤忠雄さんが創られたということと共に、エリア移動が行われる位の情報集積力(=テナント)を集めたということである。具体的にいうと、数年前まではファッションを含め集積力を誇っていた代官山エリアから、いくつかのインポートブランドが表参道ヒルズにそのまま移転している。代官山アドレスに入っていたアパレルブランドの後にはドラッグストアが入っていることを見れば一目瞭然である。予測したフィギュアスケートブームもモーツアルトブームも起こってはいない。ただクラシック音楽は数年前から静かなブームとなっており、CD等も着実に売れている。
もし、高級、高額というならば、プロのシェフを自宅に招いてのパーティのようなサービス系のものがごく一部の市場で流行っていると思う。あるいは、シャネルのようなスーパーブランドのセミオーダーサービスなどであろう。また、バブル期とは全く異なるが、絵画や骨董品など美術品のコレクターマーケットが静かなブームとなっている。

次の消費トレンド③の「賢」というキーワードであるが、LOHASとメリハリ消費(使い分けの意味と理解)を取り上げている。さて、2006年のヒット予報を見て、いかがであろうか。ビオ・ワインは確かに小さな話題にはなっているが、寒天ほどのブームにはほど遠い。無農薬有機栽培という傾向は食全体の傾向で、ワインまで行き着いたといった程度である。次の野菜カクテルであるが、野菜の取り方をもっとおしゃれにという意味の商品で、単なる作り手の勝手な思い込みだけでブームのかけらもない。デパ地下ブームは一段落したが、当時のブームの一翼を担った総菜のロックフィールド(RF1)の一番人気は今もなお「30数種類サラダ」である。多くの野菜をまとめて食べられたらというニーズに応えたまさに賢いメニューである。「曲がり角のLOHAS」でも書いたが、「賢」というキーワードをもって着眼するのであれば、京都の生活に今なお残っている「始末」という考え方の生活に着目すべきである。京料理の原則は「だしの取り方」にあり、素材そのものの「持ち味」を味わうためである。このように「賢」は「持ち味」を生かすための商品へと向かっている。つまり、塩、醤油、味噌、ソース、オリーブオイル、ドレッシング、各種香辛料、こうした地域商品の品揃えに「違い」を求めてきたのが百貨店である。そして、どこよりも早くこうした傾向を売り場に取り入れ注目されてきたのが静岡の食品スーパー「アオキ」である。このNO1と言われるスーパーが、今秋東京豊洲のSCに初出店するが、期待したい。

ここで私が言いたいことは、電通消費者研究センターの予報が当たらないということではない。少し前のブログで「過剰の時代を終え、『普通』が求められる時代になった」と書いた。雑誌社の編集者も「普通」では面白くない、話題にならないと思っている。実は、隠れ家ブームや路地裏ブームは生活者、消費者がつくったものであり、私のことばで言うと「普通」への回帰である。今や、TVや雑誌、新聞が「後」を追うだけになっているのだ。但し、ブームというマスマーケットへと広がるには、こうしたメディアの力が作用する。つまり、既にヒット商品の芽は至る所で出ているということである。難しいのは、そうした「芽」があっても、地方メーカーなど作り手がまだ芽であるとの認識がないこと、つまり都市生活者研究が足らないことにある。つまり、そのままではヒット商品にはならないということである。ここに第一の難しさがある。一方、都市の流通にとっても全国くまなく、継続して未来の「芽」を探し続ける方法をもたない。私がヒット商品応援団というプロジェクトをスタートさせた理由もここにある。ただ、最近はブログというまだまだ混沌としたメディアであるが、都市生活者と地域とをつなぐ一つの「場」の可能性がでてきたという感がしている。10月になったら、ブログで知り合った沖縄糸満のお母さん起業家(目指す!)二人と、更には福岡県岡垣町の「野の葡萄」小役丸代表に会いに行く予定である。どうぞ地域の情報をTBでもコメントでもお寄せください。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:45Comments(0)新市場創造