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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2014年08月05日

暑い夏に寒い消費 

ヒット商品応援団日記No588(毎週更新) 2014.8.5. 

少し前の日経新聞に民間の調査機関による4-6月期の経済指標の予測一覧が掲載されていた。調査機関6社の予測中央値として、GDPの前期比▲2.0、年率▲8.0、個人消費▲4.3、設備投資▲3.1であった。リーマンショック以降最大の落ち込みで、最早駈け込み需要の反動減であるとは言えなくなった。全て消費増税によるものとは考えないが、日本が持つ構造的問題にあると思っている。そして、更に8月から乳製品やソーセージなどの値上げの発表があり、ガソリン価格は夏の最需要期を迎え高止まり状態にある。
ところで、消費増税前の3月末に「消費増税による消費変化への視点として」というタイトルで次の3つの視点が重要であるとブログに書いた。

1、消費の移動を見極める
2、新たなローコスト業態に注目
3、余暇の過ごし方への注視

そして、次のようにコメントした。

『現在は「リーマンショック前の水準」に戻ってきた。低すぎた株価を元に戻したという意味ではアベノミクスによるところが大きいと思うが、5年前と比較し、消費環境は極めて悪い。駈け込み需要の反動という意味合いではなく、周知のように、まず大手企業の賃金は上がったが、70%を占める中小企業勤労者の賃金は逆に下がっている。更には円安によるエネルギーコストのアップによる物価高が消費を萎縮させる。円安によって輸出が増えるどころか、輸入超過という赤字体質に陥ってしまった。そして、今回の増税である。現象としてではあるが、なぜかスタグフレーション的状況に向かいつつあるようで心配である。』

上記1の「消費の移動」については、昨年からの傾向として挙げられるのが、新車販売に見られる傾向である。普通車・小型車が売れず、軽自動車が売れ続け、販売台数トップ10のうち軽自動車は7つ占めている。中には軽自動車への乗り替えがかなり含まれているという傾向である。ちょうど2年半ほど前の日経MJヒット商品番付の東関脇にホンダのN BOXが入ったが燃費の良さばかりかそのデザイン性からヒットした車である。以降、こうしたコスパ型商品は車以外においても次々とヒットしている。ちなみにこの年の番付には東大関に LCC、西大関には LINEが入っている。これらは全てデフレ型商品である。

次のローコスト業態への注目であるが、日経MJの番付を引用するならば、上期のヒット商品番付の東横綱に入った格安スマホがその着目すべき傾向の象徴であろう。この格安スマホは、現在のスマホが高機能高価格であるのに対し、良く計算すれば少々動画が遅くてもこれで十分とするいわゆる低機能低価格市場商品と言える。そして、発売したイオンでは今なお売れ続けている。
ところで、TVネタとして「激安ランチ」があるが、その代表がワンコイン(500円)ランチである。最近ではそのワンコインランチを出すところが減ってきているという。飲食店にとっては宣伝費代わりに安くするということだが、その宣伝効果も当たり前であるが長続きはしない。今、注目されているのが「ランチパスポート」で、1冊ほぼ1000円で購入し、そこに掲載されている飲食店のメニューが店舗の違いはあるものの例えば1200円のメニューが500円になるといった仕掛けで、1店舗3回までで3ヶ月利用できる。ランチの選択肢が広がり、5回も使えば1000円の元は取れるということで順次エリアが拡大している。但し、魅力ある仕組みではあるが、”今日は終わりました”といった店もあり、どこまで継続利用されていくか問題もある。

ところで「余暇の過ごし方」であるが、7月上旬のJTBによる夏休みの旅行予測が発表されたが、旅行人数は過去最高となり、夏のボーナスも多かったことから消費は盛んになると予測レポートがあった。しかし、今年のGWの時の予測もそうであったが、「移動」という点ではある程度活性されていたが、その内容は円安から海外から国内へ、日数も少なく、使用金額も減って、という内容で、例えば人気なのは海外クルージングのLCC版であったり、鉄ちゃん人気といったテーマを持ったファミリーの旅である。
今年の夏は暑く、旅ではないが家族で楽しむ時間としては、例えばアイスクリーム工場の見学と食べ放題といった工場見学が人気となっている。その象徴と思うが横浜にある日清食品の「カップヌードルミュージアム」で、自分でデザインしたカップに、4種類の中からお好みのスープと、12種類の具材の中から4つのトッピングを選べるという「マイカップヌードル」作りが人気とのこと。こうした「家族との時間」を楽しむという余暇の原点回帰が強く出てきている。

景気は「気」次第とした心理市場の時代ではあるが、メーカーであれ、小売業であれ、飲食店であれ、「誰を顧客とするのか」によってその景気の考え方も異なる。2004年から2006年にかけて都心ではミニバブルが起きた。都心の不動産価格は上がり、ファンドマネジャーという職種が注目され、消費では「ヒトリッチ」や「隠れ家」といったキーワードが出現した。今、そこまではいかないが都内の億ションが即日完売し、都心のホテルや百貨店の老舗飲食店は満席状態である。全ての市場はまだら模様となっているので、「平均値」あるいは「一般的」市場はない。ただ、今回の経済指標のマイナス幅や新幹線や国内航空の予約状況を見ると、暑い夏に寒い消費と言わざるを得ない、そんな夏である。(続く)
  


Posted by ヒット商品応援団 at 11:05Comments(0)新市場創造