プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
インフォメーション
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 16人

2014年06月15日

2014年上期のヒット商品

ヒット商品応援団日記No583(毎週更新) 2014.6.15. 

日経MJから恒例の上期のヒット商品番付が発表された。昨年からブログに書いてきたことばかりで新鮮味はないのだが、日経MJは節約志向の「格安スマホ」が売れた反面、「価値組消費」として高級スーツやファミレスのちょい高メニューに人気が集まったと。格安・ちょい高、これを称して、消費増税にも関わらず消費は凍っていないとコメントしている。

東横綱 格安スマホ、 西横綱 アナと雪の女王
東大関 価値組消費、    西大関 駆け込み消費
東関脇 レジェンド、西関脇 妖怪ウォッチ
東小結 NISA、   西小結 Vine

1997年の前回の増税に対しては反対していた日経新聞であったが、今回の増税には賛成である。こうしたことから「消費は凍っていない」と表現せざるを得ないことは分かるが、前回のブログにも書いたが、消費に関する主要な指標は、増税された1997年4月及びリーマンショック翌年4月の落ち込みとほぼ同レベルであった。再来週には5月度の指標が公開されるのでその時を待ちたいが、日経MJの番付にも消費の傾向が見て取れる。その一つが前回指摘をした「計算し尽くし消費」である。勿論計算の第一は「お金」である。昨年のヒット商品の一つであった「ローンの借り換え」は金利の安い増税前の住宅購入にも向かわせ、更にはNISAという「小額非課税制度」に向かわせている。
また、格安スマホについても、現在のスマホが高機能高価格であるのに対し、良く計算すれば少々動画が遅くてもこれで十分とするいわゆる低機能低価格市場商品と言える。

日経MJが「価値組消費」と名付けたなかにはデニーズのローストビーフを挙げているが、それ以上のヒットメニューがロイヤルホストのステーキであろう。昨年夏以降注目してきたが、外食産業の最大課題である客数を落とさずに客単価を上げ、経営を改善させる新メニューとなっている。私はそうした新メニューを「消費増税の壁を超えるメニュー」と位置づけてきたが、その視点から見ていくと前頭に入った吉野家の「牛すき鍋膳」は第一弾としては良かったが、いかんせん季節メニューであり、すき家も同じメニューを出し類似は免れないこともあって、次なるメニュー開発が待たれていた。しかし、4月にはメインメニューの牛丼を値上げし、結果売り上げを落とす結果となっている。
前回のブログにも書いたが、消費増税導入の4月にあって軒並みマイナス売り上げのなかで、唯一プラス売り上げを果たした百貨店がある。それは訪日外国人市場の開発を行ったのが銀座三越で、そうした新しい試みにこそ注目すべきで、当然番付に入ってしかるべきヒット商品と考える。
いずれにせよ、格安スマホも価値組消費も、銀座三越もそうであるが、新たな市場を創り、「計算し尽くし消費」に応えることが急務ということである。

周知のように、昨年7月から訪日ビザの免除と緩和が実施された。タイとマレーシアは免除。ベトナムとフィリピンは数次化し、インドネシアでは数次ビザの滞在期間を延長するというものであった。そして、ブログにも書いたがタイの観光客が横浜のラーメン博物館に押し寄せていると話題にもなったが、これから本格的な市場開発がはじまるということである。訪日外国人の受け入れ体制が急速につくられつつあるが、例えば「和民」や「甘太郎」を始め訪日外国人が家族で楽しめる居酒屋も出来つつあり、喜ばれていると聞いている。そして、日本に対しどんなことが期待されているか、中国を始め現地のSNSなどを使って探るいわばアンテナ的活動もスタートしている。つまり、従来の欧米シニア層の京都観光に代表される訪日外国人市場とは別個のマーケットが生まれてきているということである。こうした芽は秋葉原にも多く見られるようになってきている。家電製品(特に炊飯器)を買い求める中国人=秋葉原というイメージから、欧米人も含めてだが、アニメやマンガといったサブカルチャーオタクによるアキバがつくられつつあるということである。その多くはバックパッカーと呼ばれる旅行客で単に「安いだけ」の旅行から、例えばクールジャパンというテーマを「選ぶ旅」であり、その他にもゲストハウスから始まり居酒屋まで楽しみ広がっている。従来の旅行客とは異なる新市場が芽生えつつあるということだ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:44Comments(0)新市場創造