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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2014年03月10日

未来塾(2)創業の精神に学ぶ

ヒット商品応援団日記No573(毎週更新)  2014.3.10.




中島みゆきの歌に「ファイト」という応援歌があります。
この歌はパーソナリティをつとめていたラジオ番組で読んだ
女の子からのはがきがきっかけであったと聞いています。
「戦う君の歌を、戦わない奴が笑うだろう」という
繰り返されるフレーズの歌です。
当時のラジオの深夜番組は若者の声を集め再び発信するという、
ネット時代の掲示板の役割をしていたのだと思う。
この未来塾も日々のビジネス現場で悩み戦っている
あなたへの応援歌でありたいと願っています。






 「創業の精神に学ぶ」
体験という暗黙知の継承
 ダスキン


自明灯、そして燈々無尽

自明灯という言葉がある。自ら明かりを灯し、その灯は次からから次へと灯されていく様のことだが、その語源はお釈迦様が死に臨んだ時の言葉に由来している。
お釈迦さまが死に臨んだ際、 弟子たちは、誰もたいへん嘆き悲しみました。
「お釈迦様が亡くなられたら、私たちはどうやって、 いったい何にすがって生きてて行けばいいのでしょう!..」
集まった暗い顔の弟子たちに、 お釈迦さまは、「自明灯」という言葉をお伝えになった。心はどういうわけか放っておくと、暗い考えに偏ってしまう。ですから、意識して常に自分の心に明かりを灯すように心がけなさい。
自明灯とは、自ら灯をつけて生きて行きなさい、という教えとしてある。自分の足できちんと歩き、自らの心の中に灯を灯しなさい。自分の心の中に灯がない人は、 自分自身を照らせないことは勿論のこと、 他の人を照らすことはできない。
人様の灯りに頼ろうとせず、 まず自ら進んで灯してあげよう、という気持ちが大事である。そんな感動の灯が、次から次へと点火されて行くことを「燈々無尽」と言う。
創業の精神を灯りとしどう伝えていけば良いのか、創業時の自らの「体験」という灯をつけて、後輩へと伝えていこうという試みである。

1、風化していく創業の精神

ビジネスのグローバル化と共に目まぐるしく価値観が交錯し、しかも洪水の如く押し寄せる情報の時代にあって、どうビジネスを生きるか極めて難しい時代となっている。その指針となるのが、やはり経営理念であると考える。例えば、松下からパナソニックへと社名は変えても、創業者松下幸之助の志しを今に生かすべく原点に戻る試みがなされていると聞いている。事業の成長と共に、人は増え、組織も運営も複雑化する。「創業の志」とはなんであったか、年数を重ねていくことによってやむなく風化していく。
お掃除用品のレンタル、ミスタードーナツで知られるダスキンも同じような課題を抱えている。1963年創業のダスキンは1980年8月に創業者鈴木清一が逝去する。今日のダスキン事業の基礎となる商品や仕組みの多くは出来上がりつつあり、まさに「次」を目指す途中、志半ばの逝去であった。以降、10数年間は創業当時の人や商品、建物、・・・・それらが残っていたが事業成長と共に創業当時の記憶が薄れていく。
ダスキン本部においても創業者と会ったことの無い働きさん(社員)は60%を超え、しかも、フランチャイズビジネスであり、具体的ビジネスを推進している現場の加盟店さんも次の世代へとバトンタッチする時を迎えている。そうした課題を少しでも解決しよう創業の精神を伝えるために生まれたのが「祈りの経営通信」であった。

2、創業という原点回帰、大切なことは何か!

「原点回帰」というと何か古き良き時代に帰るといった誤解を生みそうであるが、全く逆で未来への志向の中にある。数年前から言われてきたことであるが、本業回帰とか、創業回帰、あるいはコアコンピタンスといったキーワードでビジネス再生の動きがあったが、創業期には理想とするビジネスの原型、ある意味完成形に近いものがあることから立ち戻ろうという動きである。ビジネスは成長と共に次第に多数の事業がからみあい複雑になり、視座も視野も視点もごちゃ混ぜになり、大切なことを見失ってしまう時代にいる。創業回帰とは、今一度「大切なこと」を明確にして、未来を目指すということである。

3、経営理念をどう継承していくのか

ダスキンにも創業からの経営理念がある。他の企業にはない独自な経営理念であり、生き方や行動指針まで明示した経営理念となっている。

ダスキン経営理念

一日一日と今日こそは
あなたの人生が(私の人生が)
新しく生まれ変わるチャンスです

自分に対しては
損と得とあらば損の道をゆくこと

他人に対しては
喜びのタネまきをすること

我も他も(わたしもあなたも)
物心共に豊かになり(物も心も豊かになり)
生きがいのある世の中にすること

合掌
ありがとうございました

朝夕のおつとめ(朝礼・夕礼)の時に全員で唱和し、理念を共有し合うのであるが、いつしか慣れとともに言葉だけになってしまう恐れがある。経営理念は言葉ではなく、具体的行動へと一人ひとり移されるものとしてある。創業者が亡くなられてから20数年年、創業時の記憶が薄れていくに従って理念もまた理念足り得なくなっていく。実はそうした見えない課題が積もり積もっていく。
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Posted by ヒット商品応援団 at 14:06Comments(0)新市場創造