プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
インフォメーション
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 16人

2010年04月28日

新しい標準

ヒット商品応援団日記No462(毎週2回更新)  2010.4.28.

先日、東京新宿高島屋に百貨店では最大規模の面積のユニクロが出店した。今年3月には渋谷にも大型店が出店しており、ユニクロの快進撃が報じられた。都心の地価が下がり、賃料も下がり出店しやすくなったということではあるが、何よりも幅広く顧客支持が得られているブランドに成長したということだ。
同じように、既存店の売上を伸ばしている企業の一つがマクドナルドである。共に1990年代後半、「デフレの旗手」と言われたことがあったが、もはやそうした名称とは異なる消費価値のフェーズに到達しているということだ。つまり、「新しい標準」、価格は勿論のこと、品質もデザインも、マクドナルドで言えば味もサービスも、それらの総合価値としての標準である。

この2社を追いかけるように、各業種・業態でも「新しい標準」を目指す動きが見られる。家電量販のヤマダ、家具インテリアのニトリ、靴のABCマート、飲食の餃子の王将も入るかもしれない。少し前になるが、ソフトバンクによる携帯電話の料金設定も同様である。
こうした「新しい標準」とは、企業経営にとって一番重要であるプライスリーダーになるということである。勿論、そのプライスには圧倒的な顧客支持があってのことであるが。このデフレ下、不況下にあって、プライスリーダーとは想定した利益確保が他社と比較し容易になるということだ。

ただこうした標準は市場がグローバル化している時代においては、半導体産業が高機能製造に向かうことによってガラパゴス化してしまったことを教訓としなければならない。特に、工業製品において、例えばPCや携帯電話、あるいは薄型TVといった市場は多機能=高価格、単機能=低価格という2極化しているが、日本国内市場も低価格のグローバル市場へと準じ始めていることを忘れてはならないということである。グローバル市場とは、日本の場合特に中国と不可分にあり、その標準的価値を視野に入れなければならないということだ。いわゆる新興国市場は膨大であり、その潜在市場の成長への入り口では単機能=低価格戦略が不可欠となっている。

ところで新しい標準へと向かう潮流を整理すると以下のようになる。

○多機能(=高価格)から単機能(=低価格)へ
○プロサービス(=高価格)からセルフサービス(=低価格)へ
○独自・固有(=高価格)から一般・共通(=低価格)へ

以上のような潮流が新しい標準としてのマス市場を形成しつつあるということである。前回のブログの延長線上でいうと、個性から成熟へということとなる。そして、2極化とはこうした潮流のどちらかを選択肢としてもつということである。勿論、経済的裏付けもあるが、例えば携帯は単機能で十分だが、ファッションだけは少々高くても好きなブランドを選びたい。あるいは日頃の食事はつましく倹約するが、年1回の家族旅行には足を伸ばして海外で楽しみたい。つまり、選択肢の幅が広がり、その広がる幅が大きくなったことを2極化と呼んでいる。昔10人10色と言われてきたが、今や1人10色の時代になったということだ。そして、1人のなかにある色は総じて個性色が減り、普通色が増え、低価格色が増えてきたということである。これが不況下のデフレ心理である。

勿論、新しい標準にもの足らなさを感じるマーケットもある。例えば、東京に成城石井という輸入ワインやチーズといった高級食材を扱う食品スーパーがある。数年前ミニバブルにのって急速に多店舗展開し、成長ではなく膨張であったことから経営に行き詰り、新しい経営陣によって再建したスーパーである。他のスーパーと較べ、こだわり、違いを求めた少し高い価格帯の商品MDである。その内容であるが、例えば自家製パンなどでは朝用の詰め合わせパンには「国産ほうれん草ロール」が入っていたり、午後のティータイムロールにはマンゴーロールを入れる。新体制によるこうした丁寧な時間帯MDは小売業にとっては基本であり、個性色を求める顧客にしっかり応えれば成長しえる良き事例である。
何回も繰り返すが、「誰を顧客とするのか」、「その顧客は何色なのか」、その見極めが全てを決めるといっても過言ではない。新しい標準としてマス市場が形成されつつあるが、その標準もいつまで標準足りえるのか分からない時代である。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:39Comments(0)新市場創造