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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2010年04月11日

「好き」の復活 

ヒット商品応援団日記No457(毎週2回更新)  2010.4.11.

ここ数週間、寒暖の差の激しい不順な天気であったが、少しづつ本来の季節に戻りつつあるようだ。景気、消費はと言えば、ここ数回ブログにも書いたが、回復の兆しが見えてきた。というのも先日、ユニクロを展開するファーストリテイリングが、2010年八月期連結決算予想を上方修正すると発表した。勿論、増収増益であるが、この発表のなかで、柳井会長から、国内既存店の3月の売上・客数が共にマイナスに転じ、低価格の潮流はこれからも続くが以前と同じように一斉に集中することはなくなるであろうとのコメントがあった。私流の言葉にかえれば、低価格ブームは終わったということである。わけあり低価格は終焉に向かったということだ。勿論、過剰なわけあり価格競争という意味である。
つまり、急激に所得が増えたり、新たな雇用が生まれたという理由からではない。節約疲れ、我慢疲れからひとときハレの日の時間を持ちたいということである。ケの日、日常はやはり巣ごもり生活ではあるが、ハレの日ぐらいはチョット贅沢という消費感覚である。5月のゴールデンウイークもこの2年間の安近短と比較し、少し遠くへ、少し日数を伸ばし、使う金額も少し多めという消費が予測されている。

課題はハレの日にどんな消費行動の変化となってくるかということである。特に、6月からは子ども手当が支給され、更には高速道の料金が改定される。観光地のホテルや旅館、旅行代理店、旅客輸送各社、更には高速道のSA、あるいは町起こしなどのイベントなど、一斉に企画を実行し始めたと思う。一方、都心ではファミリー向けの企画も準備されていると思う。一種の地域間競争が生まれる訳であるが、昨年の1000円高速に集中し大渋滞した移動とは少し異なる世界も生まれて来る。東京でいうと、昨年は渋滞先が軽井沢や御殿場のアウトレットであったが、その異なる世界とはハレの日の「チョット贅沢」、この時位はいつもと違って、という消費行動である。

ハレの日とは季節歳時もあるが、記念日でもある。個人化した時代、無縁社会と呼ばれる時代にあって、人と人との関係を確認し合う記念日は重要なハレの日となった。誕生日から始まり、結婚、出産、といった人生の節目もさることながら、極めて個人的な思いの日もまた記念日となる。以前、「ミーギフト」、頑張った自分にご褒美、というキーワードが流行ったことがあったが、若い独身女性にとってはこうした消費も復活するであろう。いわゆる小さな幸福感を求めてである。
大仰な構えた消費ではない。いつもとチョット違った気分転換を促してくれる、そんな商品やサービスということとなる。例えば、旅行でいうと、最近では食泊分離が選択できる旅館も増えてきた。いつもと違って風情ある老舗高級旅館に泊まるが、食事は街中にある安いがその土地ならではの郷土料理を楽しむ、といった具合である。他は我慢しても、これだけは少し贅沢してみたい、そんな消費心理である。

それではどんな贅沢かと言うと、今ではほとんど忘れ去られてしまった本格、本物、上質、クオリティ感、老舗、匠、といった独自・固有な商品やサービス。あるいはここ数年我慢して購入を抑えてきたお気に入り、好き、といった商品群。そうした意味でブランド復活への芽も出てきたということである。足が遠のいていた百貨店、敷居がチョット高かった老舗旅館、趣味の世界においても上級を目指す機種や道具も少しづつ活性化されていくであろう。ある意味、「好きの復活」である。
こうした好きの復活は、わけあり商品や低価格商品といった巣ごもり体験が一巡したということでもある。今度は過剰になったわけあり商品や低価格商品を削ぎ落とす時を迎えたということだ。

つまり、低価格商品の量を追いかけることから上質や好きがハレの日を飾るということである。例えば、食で言えば、いつもは鳥や豚肉がテーブルにのるが、この時位は量は少ないがA5ランクの牛肉のステーキを食べる、といったことである。減選から厳選へと再び転換し始めた。1990年代の消費傾向と同じように見えるが、そこには確かな合理性、費用対効果(満足感)という新しい価値観も見えて来る。ヒット商品となったLED電球ではないが、長く使える、愛着が湧く、結果お得になる、といった合理性である。デフレ基調は変わらないが、わけあり商品(=価格力)というベストセラーの時代が終わり、ロングセラーという商品力の時代へと転換し始めた。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:40Comments(0)新市場創造