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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2009年12月20日

2010年予測  エコライフ元年

ヒット商品応援団日記No429(毎週2回更新)  2009.12.20.

予測は当たらないというのが私の持論であるが、P.ドラッカーの「すでに起こったことの帰結を見る」ことを通して、敢えて2010年以降の消費傾向、ライフスタイル変化について書いてみたい。
経済誌などの予測記事から離れ生活実感としてあるのが、エコライフ・エコ社会が本格的に始まるということであろう。これは仮説であるが、巣ごもり生活の中で熟成されつつあった考え、無駄をなくし、費用対効果を考え、財布にも環境にも優しいとした考えが、一つの価値観としてライフスタイルやその表現としての消費に更に広く進化して表れてくる。2010年は、エコロジーが日常化するという意味で、エコライフ元年になる。

前政権によるエコカー官製販促支援が来年度も続くことが予定されている。今年度の目標である270万台が達成するか見極めることが必要ではあるが、市場は急速にHV車、電気自動車へと向っていることは間違いない。特に、三代目のプリウスが発売後1ヶ月で受注台数が18万台に至ったのも、価格が普通の車並みの200万円前後に設定されたことによる。二代目までのプリウスが「価格は高いが燃費は安く、5年乗れば元が取れる」という価格設定から、三代目は「3年で元が取れる」価格に設定されたことによる。
こうした価格設定への考え方と同様なのがLED電球である。今年の春、一般家庭向けに発売されたLED電球は競合商品の参入により、既に半額以下となっており、急速に広がっている。来年春には薄型TVへと本格的な導入が予定されており、あらゆる光関連分野に浸透していく。こうした一般家庭への浸透もそうであるが、既に新築&リニューアル物件である商業施設は順次LED電球による照明へと転換している。
これら省エネ型商品に共通していることは、「初期購入(投資)は高いが、結果お得になる」省マネー型商品である。従来の概念「エコは大切にしたいがお金がかかる」という認識から、「エコはお得」という新しい価値観が急速に広がっていく。こうした新技術商品は一定の価格以下に量産されることにより、キラーコンテンツならぬキラープライスによって急速に市場拡大していく良き事例である。

既に一般家庭にも太陽光発電が浸透してきているが、自家消費分以外の電力の買い取り価格が、これも一定金額以上に設定されることによって、同様に「エコはお得」という価値観が更に生まれる。ここ数年、石油エネルギー(=輸入依存)からの脱却を目指し、多くの新エネルギー開発が行われてきた。太陽光を始め、風力、地熱、海水、水力と。最近では、昔の水車のような小水力発電が山間の集落でテストされており、各家庭ごとの自給自足型エネルギー開発が進んでいる。こうした小さな単位でのエネルギー開発という地方でのインフラ整備は、次第にエコ・コミュニティ、エコ・ヴィレッジへと向かっていく。一方、エネルギー消費地である都市は無駄を削ぎ落とし、なおかつ都市鉱山と言われるようにリサイクルできるものを循環させる江戸時代のような生活へと向かう。
但し、既に米国では始まっているスマートグリッドのような双方向の送電網が全国に整備されたらのことである。エネルギー生産地は地方、消費地である都市はそれらエネルギーを購入するということである。既に、全事業所のエネルギー使用に対し石油換算による改正省エネ法が実施されることが決められている。こうした背景から、東京新丸ビルでは青森六ヶ所村の風力発電から直接電力購入を始めている。

リサイクルといったことについては「下取りセール」を始め、フードバンクやアウトレット等、循環型社会モデルである江戸時代の例を付け加えながら数多くブログに書いてきたのでここでは省略するが、これらは更に日常化するということだ。
ところで、数年前から単身世帯の増加を踏まえた個人化社会についてコメントしてきた。そのなかで、一番注目すべきは「単位革命」であると。食がそうであるように、無駄を省くには「小単位」にしなければならない。この「小」は「省」につながる極めて重要な着眼である。前述のエコカーもそうであるが、現時点での究極のエコカーは軽自動車であるとも言える。燃費ばかりか、税や保険、高速料金、メンテナンス費、・・・・HV車と比較してもかなりお得な車である。しかも、軽自動車のトップメーカーであるスズキは再資源化率も極めて高い。地方の場合、一人一台であり、こうした軽自動車は継続して売れていくであろう。一方、都市においては徐々にではあるが、カーシェアリングが浸透していく。所有から使用価値へ、しかもその使用は地球にも、財布にも優しいという価値観によってである。
また、リサイクルと共にこの1年間ブログのテーマとしてきたのが、自己体験型消費、安全安心を求めた消費生活である。食生活で言えば、顔の見える商品から始まり、自ら家庭菜園・ベランダ菜園で食材を育て料理するといった自己防衛生活である。都市郊外の休耕地利用についても農業委員会などの制度障壁はあるが、こうした休耕地利用のレンタル農業&スクールといったものも更に流行るであろう。これもエネルギーにおける自給自足型生活と同じで、地産地消と共に食料自給率を上げ自立していく方法の一つである。

2009年、過去に遡り「温故知新」ではないが、多くのヒット商品や社会現象が生まれた。阿修羅像ブーム、歴女(戦国BASARA)ブーム、ドラクエ9、機動戦士ガンダム、サントリー角ハイボール、ビートルズの復刻CD、オリンパスペンのレトロデザイン、・・・・・・遡る時間の差はあれ、それらは一見するとバラバラに見えるが、時代転換の踊り場に立って次を目指すための、「日本って何!」を探ることであった。こうした回帰現象を私はタイムトンネル型消費とネーミングしたが、それらを通じ「生き方が変わる」ということでもある。何回も書くようであるが、近代化によって忘れ去られ、失ってしまったものへの取り戻し、ある意味ポストモダンへの自覚がそうさせているのだと思う。俯瞰的な見方をすれば、欧米の「クールジャパン」評価も、こうしたポストモダンを評価してのことだ。
こうした過去・歴史を学ぶ先に江戸時代の生活・社会にたどり着くと私は考えている。今日のライフスタイルの原型は江戸時代につくられたものであるが、学ぶべきエコライフ・エコ社会の良きモデルだ。

勿論、過去へと単純に戻るということでは決して無い。近代の経済合理主義からこぼれ落ちてしまったものや出来事を取り戻す、そうした意味でのポストモダンである。今年2月「おくりびと」がアカデミー賞の外国語映画賞を受賞したが、納棺師の仕事を通じ、象徴的な意味で失いつつある日本の儀礼に多くの人が気づかされた。1990年代に盛んにポストモダン論議がなされたが、そのポストモダン的なるものは、まだ地方には残されている。なんとか残るお盆や祭り、縁日といった先祖や神仏との関係、あるいは風土に培われた生活の知恵を表す一種の儀式・文化・生活スタイルに注目が集まると思う。既に、日本古来の伝統野菜に注目が集まっているが、それら素材調理法を含め郷土料理の復活が起きるであろう。決して大きなヒット商品にはならないが、欧米や若い世代からの評価によって気づかされる。特に、欧米や若い世代にとって、時代の行き詰りを打開すべく、OLD NEW、古が新しい、という着眼、「日本って何!」を問うことを通じ、新しいエコライフスタイルが創造されるであろう。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:43Comments(0)新市場創造