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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2009年12月16日

未来予測は可能であろうか

ヒット商品応援団日記No428(毎週2回更新)  2009.12.16.

12月に入り、経済誌を始め2010年の景気予測をテーマとした特集が組まれ始めた。予測は当たらないというのが、私の持論であるが、次回以降に日経ビジネスを始めとした各誌を土台にコメントしてみたい。
ところでその予測であるが、サブプライムローン問題に端を発したリーマンショック、その後の世界大不況について、予測した経済学者、エコノミストはほとんでいなかった。私の知る限り、慶応大学教授の金子勝氏、ミスター円・慶応大学教授の榊原英資氏、三菱UFJ証券の嶋中雄二氏、水野和夫氏、更には野村総研のリチャード・クー氏、といった人達がかろうじて証券化を始めとした金融技術、その源である米国経済の危うさに警鐘をならしていた。マクロ経済の専門家でもない私であるが、月刊誌や経済誌に寄稿された内容を読む限りではあるが、こうしたエコノミスト以外の人達はリーマンショック以降の一年、その象徴的人物である中谷巌氏のように「間違った判断」をしてしまったと懺悔と混乱のなかにいる。

3年ほど前に、「未来は予測できるか」という課題に対し、P.ドラッカーの次のような言葉を入り口にブログを書いたことがあった。

未来について確実に言えることは2つしかない。
未来は分からない。
未来は現在とは違う。
未来を知る方法も2つしかない。
すでに起こったことの帰結を見る。
自分で未来をつくる。

私がブログに書いてきたことは、「すでに起こったことの帰結を見る」こと、という一言に極まる。常に変化し続ける消費について、「動かし難い事実」という断片情報を集め、本当にそれは動かし難いものかを繰り返し問い続けることによって、一つの「消費傾向」を言い当てることであった。P.ドラッカー流にいうならば「既に起こった未来」として情報を分析することである。例えば、今年の夏前に厚労省から発表された「過去10年間で100万円の所得減少」といったデータ類や公開されている各種調査結果、あるいは社会的事件とまではいかないが注目すべき話題、更には小売り現場を歩いての実感、そうした断片情報を集め、共通的な因子を探る作業であった。

こうして集めた情報の分析であるが、ある人はノートブックに、ある人はカードにメモとして書き留めている。私の場合もメモとノートを使っている。それら小さな事象を傾向毎にグルーピングをし、俯瞰して見る。そのグルーピングは生活であり、そこには単なる消費だけではなく、歌謡曲・Jpopから政治の世界まで、生活者の興味関心がどこに集まっているか、そこに共通する因子はあるのか、それらを探る。そして、その傾向因子は、ドラッカーのいうように「動がしがたい事実」であるかどうかを検討する。こうした一つの過程を実はメタノートの意味合いを含めブログに書いている。理屈っぽくいうとそうなるが、この傾向因子は他の生活領域や流通にも等しく及ぶであろうか、その時必要とする条件はなにか、について常に考えている。前回書いたように、2009年度の場合は、ライフスタイル的には「価格を軸とした生活再編集」の年であり、その中でも特徴的であったのは過去に遡る因子が強く出てきたと結論づけた訳である。

こうした思考の作業は、広告会社やマーケティング会社が行うライフスタイル調査、その因子分析のようなもので、私の場合は超アナログ的な方法で行っている。ただ、こうした方法の良いところは「考え」を寝かせることが出来る、熟成させることができるという点にある。情報ばかりか、「知」ですらストックされずに日々消費される便利な時代である。例えば、Googleなどで手に入らない情報は何か、と考えたことがあるだろうか。今なら、ツイッターを使って、「知」へのガイダンスも可能な時代である。しかし、情報の受けての想像力を刺激することは必要ではあるが、「知」へと熟成されることは稀である。

今、私は「熟成」という言葉を使ったが、実は生活者は巣ごもり生活のなかで「熟成」が行われていると私は仮説している。数年前までは、過剰な情報刺激によって消費は牽引されてきた。それを象徴したキーワードが「サプライズ」であった。しかし、周知のようにサプライズ手法は終焉し、巣ごもり生活のなかで、新たな生活価値観・考えが熟成してきたということである。どんな熟成、どんな消費として発酵してきているか、次回以降「すでに起こったことの帰結」という意味で、2010年を考えてみたい。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:32Comments(0)新市場創造