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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2008年03月09日

新たな回帰市場? 

ヒット商品応援団日記No246(毎週2回更新)  2008.3.9.

伝説の解散コンサートから30年を経て、あのキャンディーズが同じ後楽園で5万人ライブを4月4日に行うと発表された。30年前の解散理由である「普通の女の子に戻りたい」というメッセージは、今なお多くの人の記憶に残っている。1年半ほど前には吉田拓郎とかぐや姫による「嬬恋ライブ」が主に団塊世代の同窓会であったのに対し、キャンディーズの場合は次の世代、ポスト団塊世代のアイドルであった。
パスと団塊世代にとっても、同時代感、同じような時代の出来事に出会ったという共有感が求められているということであろうか。期せずして、同じ30周年を記念して、ゲーム機メーカーのタイトーから「スペースインベーダー」を発売すると発表された。そう言えば、100円玉を握りしめて盤面に向かったことを思い浮かべる人も多いかと思う。

さて、ポスト団塊世代の記憶の先には何があるのであろうか。1958〜1967年生まれの世代をポスト団塊世代としているが、後に新人類と呼ばれた世代である。団塊世代の心象風景には「Always三丁目の夕日」に描かれたような集団就職、路面電車、ミゼット、フラフープ、横丁路地裏、他にも月光仮面、力道山、テレビ、メンコやビー玉それら全てを含めた生活風景であった。ポスト団塊世代の幼少期の心象風景はというと、自動車保有が1000万台を超え、家族でドライブを楽しむといった豊かさへと向かう時代であった。進学率が上昇する一方、「落ちこぼれ」「家庭内暴力」といった今日と同じような社会事象が現れる。また、暴走族という名前の初代世代でもあった。

この世代の最大特徴は社会人となる1980年代に新しい文化を創ったことにある。その代表が漫画やアニメといったサブカルチャーで、中尊寺ゆっこさんが描いた「オヤジギャル」そのものの世代である。あるいは、「スペースインベーダー」を含め、以降のゲームブームの担い手でもあった。
団塊世代が「モノの欠乏感」を心象風景に描くのに対し、ポスト団塊世代は「モノが満たされつつある」時代を生きてきたと思う。ある意味、物語消費の主人公であった。欠乏感があるとすれば、精神的な飢餓感、喪失感であろう。1980年代半ば以降、結婚し子供を育てるが、この頃から急速に離婚が増加する。社会現象となった「成田離婚」はこの世代である。また、ブランド服を親子で着たり、愛玩育児とも呼ばれた世代だ。

今、ポスト団塊世代も中年期に入ってきた。団塊世代と交代するように、企業の中心に座り、低迷するビジネスに直面している。恐らく、バブル崩壊の問題を、仕事でも生活でも一番受け止めざるを得なかった世代だ。めまぐるしく動く日常の中で、「この時」「この場」という回帰する記念日をまさに必要とする、思い至る年齢になってきたということだ。まさに塊としてある団塊世代の陰に隠れ、「しらけ世代」と言われてきたが、別な表現をすれば「やわらかな個人主義者」と言えよう。おそらく団塊世代のような昭和回帰、ふるさと回帰、といった強い消費の潮流は見せないと思う。このポスト団塊世代を象徴する世界は何かと考えてみると、280万部というベストセラーとなった俵万智さんの「サラダ記念日」であると思っている。<「この味がいいね」と君が言ったから7月6日はサラダ記念日>という短歌の世界である。個人がそう思った「この時」が記念日となる。もし、回帰市場という言い方をするならば、同時代感、世代共有感ではなく、「個人回帰」となる。そして、どんな市場かと言うならば、個人記念日市場であろう。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:21Comments(0)新市場創造