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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2008年01月13日

潰れない会社の持続力 

ヒット商品応援団日記No233(毎週2回更新)  2008.1.13.

昨年は不二家を始め赤福、船場吉兆といった老舗ブランドの不祥事が続発した。今ブランド再生のために支援企業や社外役員によって、社会という風通しの良い会社へと動き出したが、いかにブランドがもろく壊れやすいものであるか実感したことと思う。ブランドイメージはコミュニケーションによって創造できるとした考えは、同時に裏ではそんなことをしていたのかといった不祥事情報によっていとも簡単に壊れてしまった。ある意味、情報によって創られた商品や企業は、負の情報によって得られたブランド価値を失うという情報の時代の特徴を良く映し出している。私はそうしたブランド創造のあり方を全て否定している訳ではない。しかし、そうしたイメージ戦略とは異なるところで、例えば不祥事があっても、やはり不二家が好きといってくれる顧客はいる。その顧客が実はブランド価値を創ってくれていたのだ。

広告代理店やマーケティング会社の多くは、ブランド価値の成長と見直しが今年のビジネステーマとなっていると思う。ブランド価値を情報による未来期待値の創造、つまり心理価値にウエイトを置いたものは、当然負の情報刺激が大きければ一挙に心理価値はマイナスへと大きく振れることとなる。しかし、本来ブランドとは使われ続けるという時を積み重ね、何層にも積み重ねられた使用価値集積の結果であった。日本人はそれを暖簾と言ってきた。奉公人が独立をする時には、お祝いの品の中に暖簾が含まれており、世間の信用という何よりの資本財として扱われてきた。ブランドとは時を超えてなお社会が「これはいいよ」と言ってくれるものだと言うことだ。

ところでこうした老舗と言われ得る会社とはどの位の時を経てきたとお考えであろうか。人も企業も生き物で当然寿命がある。つぶれない、その持続力の源は何か、という良き事例がある。ブランドの原点とも言うべき世界最古の企業が大阪にある金剛組という宮大工の会社だ。TVでも1〜2度取り上げられたこともあるので知っている方もいると思う。創業1400年以上、聖徳太子の招聘で朝鮮半島の百済から来た3人の工匠の一人が創業したと言われ、日本書紀にも書かれている会社である。金剛組の最大の危機は明治維新で、廃仏毀釈の嵐が全国に吹き荒れ、寺社仏閣からの仕事依頼が激減した時だと言われている。更に試練は以降も続き、昭和恐慌の頃、三十七代目はご先祖様に申し訳ないと割腹自殺を遂げている。また、数年前にも経営危機があり、同じ大阪の高松建設が支援に動いたと聞いている。

何故、こうした支援が可能になったのか、それは金剛組の仕事そのものにあると思う。宮大工という仕事はその表面からはできの善し悪しは分からない。200年後、300年後に建物を解体した時、初めてその技がわかるというものだ。見えない技、これが伝統と言えるのかも知れないが、見えないものであることを信じられる社会・風土、顧客が日本にあればこそ、世界最古の会社の存続を可能にしたと思う。記者会見で、ご先祖様に申し訳ないと泣きながら、しかし「頭が真っ白になって」と息子に言う船場吉兆とは全く似て非なるものだ。私が尊敬するダスキン創業者鈴木清一は創業の日に「神様、お役に立たないのであればどうぞつぶしてください」と祈ったと言う。ところで、その船場吉兆であるが、民事再生法の申請に動いていると聞いている。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:33Comments(0)新市場創造