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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2008年01月06日

スモールビジネスへの再編         

ヒット商品応援団日記No231(毎週2回更新)  2008.1.6.

昨年末の経済誌の2008年予測もそうであったが、元旦の新聞各紙のテーマのほとんどが地球温暖化を始めとした環境問題と投機マネーが引き起こす格差問題であった。その中でも日経新聞の一面は「沈む国と通貨の物語/漱石の嘆きいま再び」と題し、円の力の低下を国費留学生としてロンドンに留学していた夏目漱石のコメントを重ね合わせた記事であった。日経新聞ならではの取り上げ方であるが、漱石が訪れた当時のロンドンは産業革命真っ盛りで、大気汚染といった公害、新たな環境問題と資本家と労働者という格差・対立も生まれていた時期である。

以前このブログでも取り上げたことがあるが、文明の縮小という課題が本格的に生活の中で行われる時代を迎えている。今年の冬のヒット商品の一つに挙げられている「湯たんぽ」は、単なる安価でエネルギー消費を抑えるだけでなく、湯たんぽの袋にキャラクターを入れたりしてデザインを遊ぶ・楽しむといった消費だ。昨年亡くなった阿久悠さんの「時代おくれ」ではないが、過去を遡れば生き返る商品はいくらでもある。食でいうと、ホテルや料飲店での食べ残しという無駄を減らすために、各人が各人の好みや量をわきまえて食べられるような選択肢の提供=セルフ式が更に浸透するだろう。文明の縮小の意味する変化とは、人間の消費欲望を無くすということではなく、別の楽しみ方消費へと欲望を自己コントロールしていく方向へと明確に変わってきているということである。使い方などに知恵やアイディアをもって、エコライフを遊ぶ・楽しむということだ。別の視点に立つと、普通を楽しむ、日常を楽しむということである。

ところで、昨年前半の外食産業の低迷に加えて、後半ではファーストフードまで売上減少傾向を見せている。価格を軸に、厳選から減選へと向かってきている。昨年後半からの原材料の高騰による値上げは今年は多くの分野で本格化する。外食から内食へ、あるいは回数減が顕著に表れてくる。昨年後半から中小企業の倒産件数は増加傾向にあり、残念なことだが今年は更に増加していくだろう。1990年代初頭のバブル崩壊後、再構築されてきたビジネスは次のサバイバル段階を迎えている。

さて、こうした時代におけるビジネスをどう解決し、生き残っていくかである。1つは全てを分解し「スモールビジネス」として再構築していくことだ。小売りレベルでいうと、例えば従来効率優先であった10個入りを4個入りへ、更には2個入りへと単位を小さくしていく。売り場も品揃えという考えを見直して更に小さく圧縮する。メーカーもそうしたことを踏まえ、より特徴が明確な専門商品化を行う。つまり、独自・固有な商品づくりしかありえないということだ。また、生活者は全ての点で自己防衛的になっていく。提供すべきサービスは生活者自身が行うための方法や道具・場所の提供となる。そして、湯たんぽのように小さな遊び・楽しさが消費欲望を刺激する。

小単位化するのは物やスペースあるいは価格だけでなく、時間も、テーマもである。勿論、人もである。つまり、今一度ビジネス単位、事業規模を更に小さく分解し、自立を目指し再スタートしていくことだ。生活者の視点に立てば、小さな消費欲望に対し、ていねいに小さく応えていくということだ。発想はこうだ、一人ビジネス、一坪ビジネス、一コーナービジネス、一商品ビジネス、一時間ビジネス、一テーマビジネス、あるいはワンコインビジネス、「一(いち)」という最小単位でビジネスの可能性を追求していくことだ。地代・賃料の高い都市、特に東京ではそうした新業態が現れ始めた。

このように小さく小さく削ぎ落としてもなお残る物は何か、つまり日本文化の本質=小の豊かさに立ち戻ることでもある。前回の「ゴドーを待ちながら」を踏まえて言うならば、最早待つのではなく、「ゴドーは何であるか」自ら確かめる行動に移ることだ。小さな単位であれば無理なくリスクも少なくテストも可能だ。小さくトライすることの中に精霊は産まれてくる。精霊を産み出すのも人であり、そこには絶え間ない知恵と工夫が必要である。次回は元来エコ社会であった日本にあって、今なお庶民の生活に残っている京都の知恵、「削ぎ落とされた」生活文化、更に「時を重ねた」生活文化をテーマとしたい。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:34Comments(0)新市場創造