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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2007年09月19日

マーケティングは終わったのか

ヒット商品応援団日記No203(毎週2回更新)  2007.9.19.

マーケティングはその名の通り、市場創造、いかにお客さまを創るかである。元々、第二次世界大戦を終え、その軍事戦略の考え方と方法をビジネスに持ち込んだものだが、ここ数年マーケティングという言葉を見かけることがなくなって来た。大手書籍売り場にもそのコーナーはあるが、ビジネス書のベストセラーになるような本は「one to one マーケティング」(ダイヤモンド社/1995年)を最後に皆無となっている。このワンツーワンマーケティングは従来のマスマーケティングではとらえきれない顧客に対するもので、一人ひとりの顧客の好みや価値観などを識別し、それぞれに合わせてIT技術を駆使してアプローチを行うという手法である。インターネットの時代のマーケティングと言われて来たが、誰もが実感しているように、メッセージを送ってくる企業や個人に対し自分の個人情報がデータベース化されていることを快くは思わない。既に、米国ではこうしたワンツーワンマーケティングの多くはプライバシーの保護から違法であるとされてきている。

逆に、ワンツーワンマーケティングを避ける方法、例えばDSP(デジタル信号プロセッサ)のように自分が必要とする情報だけを取り出せるようになっている。当たり前と言えばそうであるが、あくまでも顧客、個人を起点としたものでなければならないということだ。このブログでも何回となく触れて来た「揺れ動く心理」市場について、リアルさ、体験あるいは対話こそが不可欠であると書いて来たが、私自身マーケティングは過度期にあると認識している。マーケティング関連の書籍売り場がパッとしないのに較べ、歴史コーナーの江戸関連の売り場には多くの書籍が並んでいる。今日のライフスタイルの原型は江戸時代にあることは私の持論でもあるが、マーケティングが過度期にあることを良く表していると思う。

前号で日本の食文化についてふれたが、この江戸時代の食文化を創ったのは庶民であった。新しい、珍しい、面白い「食」を取り入れた冒険者であったが、それを広めたのが屋台と行商であった。江戸中期までは外食といったことはなく、下賤の者がすることとされていた。しかし、中期以降、上方をお手本に、チョットした違い・工夫をしたものが屋台から流行り始める。その代表がにぎり鮨で上方のなれ鮨が原型である。てんぷらも初期は油揚げといった揚げ物屋であったものを、魚などにころもをつけててんぷらにしていった。当時のマーケティング&マーチャンダイジングをキーワード化するとすれば、簡便さ(スピード)、滋養(栄養素)、手軽さ(安価)となる。今日の食の開発にも使えるキーワードである。

今、マーケティングが停滞しているのはそのテクニックばかりに目が行き、冒険者の発見とそれを広める流通がないということだと思う。勿論、一部ネット通販において行列ができるヒット商品もあるが、その多くは手作り商品ばかりである。逆に、そうした小さなヒット商品を作り続けることがマーケティング&マーチャンダイジングのテーマとなっている。それが一見停滞のように見えても、更に小さなヒットとなっても、である。つまり、たった一人の顧客・冒険者に喜んでもらおうとする、その原点に立ち戻るということでもある。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:15Comments(0)新市場創造