プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
インフォメーション
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 16人

2006年11月19日

過剰情報時代の2つの眼 

ヒット商品応援団日記No117(毎週2回更新)  2006.11.19.

今年1月「情報の罠」というテーマで耐震偽装事件、ライブドア事件にふれて情報化社会における「罠」について書いた。こうした事件によって「そこに見えるのは偽計、風説、偽装、粉飾、といった情報操作によって右往左往する個人である」と。偽メール事件を持ち出すまでもなく、「情報」のもつ価値がいかに大きいか思い知っている。今、知っての通り、文科省大臣宛に27通の自殺予告文書が送られ、その真偽のほどが調査されていると報じられた。そして、相次ぐ自殺者も出てきた。ここには過剰報道による連鎖が明確に出てきている。TVを中心に、新聞、雑誌、ブログなどのニュースのほとんどはいじめや履修偽装といった「教育崩壊」か、幼い子供への虐待死などの「家族崩壊」である。人は「不可解さ」「曖昧さ」に対し、漠としたとした不安に我慢できなくなる。当然、情報の受けてには過剰反応が生まれる。これが社会心理におけるパニックへの予兆である。

誰もが知っているパニックというと、1973年に起こった「トイレットペーパー騒動」であろう。原油価格を70%引き上げる決定を受けて、「紙の節約」を発表したところ、「紙がなくなる」という噂が流れパニックに陥り、その騒動を「あっという間に値段は2倍」と新聞が報じたことにより、更に買い付け騒ぎが大きくなった社会的事件である。あるいは給食によるO157集団感染の原因と噂され大きく報道され、結果カイワレ大根業界が壊滅的打撃を受けた事件。社会心理学でいうと、うわさやデマといった流言は社会的危機において多発すると言われている。安定という社会のシステムが壊れ、こころが適応できなくなる訳である。こうした不安心理という潜在的危機に「情報」が繰り返し流されることによって、危機は顕在化する。トイレットペーパー騒動における新聞報道と今回の自殺予告文書に対する大臣見解の記者会見報道は同じである。残念なことに、情報があらたな情報へと連鎖し始めた。うわさとデマは異なり、デマはある意図をもって流される情報であるが、この2つが判別、予測できないような情報のカオスがやってくる。

しかし、同時に自らの考えをもって「教育」のあり方を提起する中学が出てきている。例えば、札幌の中学生たちが今回の教育基本法案に対し安倍総理に手紙を送っている。勿論、匿名ではなく実名でだ。ところがそのことを知った匿名の「大人」から脅迫とも取れるメールが送られてきたという。(札幌テレビ http://www.stv.ne.jp/news/streamingWM/item/20061117182019/index.html)この報道の詳細については分からないが、少なくとも自身の問題として受け止める中学生がいることは事実である。
私はマーケティングに携わる人間であり、社会の事象、出来事は無縁どころか不可分なものとして受け止めている。体験・経験の少ない子供に対し、キッザニアのように社会体験を提供するサービスが注目されるのは良く分かる。今、札幌の中学生のように、自ら教育を受ける子供たちが「教育」を考える活動体験は極めて大切である。マスコミ、ジャーナリストはこうした情報を伝えてはいないが、おそらく全国の中学校でこうした未来への芽が生まれていると思う。多様多元的な価値観が錯綜し、混迷する時代にあって、そうした情報には2つの眼で見ていくことが必要だと思っている。1つは俯瞰的な鳥のような眼と、もう一つは札幌の中学生のような当事者の目線と同じ高さの眼である。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:49Comments(0)新市場創造