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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2008年06月18日

コレクションブランド/ロレックス

ヒット商品応援団日記No275(毎週2回更新)  2008.6.18.

私たちが身につける腕時計というスタイルを最初に作り世界へと広めたのが、あのロレックスであることを知っている人は少ない。「どんな場所や状況においても、そこに人が存在するなら腕時計も存在しなくてはならない。そのためには解決へ向けて挑戦し続ける」というのがロレックスの変わらぬポリシーである。
まだ懐中時計が全盛であった1905年、ロンドンにウィルスドルフ&デイビス社が創立される。設立者であったハンス・ウィルスドルフは、新参企業が生き残る道として新しい革命的商品、「腕時計」の中にその可能性を見出す。
激しい振動や温度変化、ほこりや湿気にさらされる腕時計に対し、信頼できないとの社会的評価がある中でのスタートであった。まず、ウィルスドルフは「ギアの正確さ」をつくるムーブメントをスイス・エグラー社に依頼。そして、1905年、スイスで腕時計をつくり販売することとなる。

1927年、ロンドンの女性記者グライツがドーバー海峡を泳いで横断する。その時、腕に巻いていたのがロレックスであった。海峡横断の快挙と共に「腕時計」の快挙が報じられ、全世界に認められることとなる。
ロレックスのデザインには大きく2つの潮流がある。1つはダイバーズウォッチへと流れを組むロレックス誕生の基本となった「スポーティ」なものと、もう一つが別称ドクターズウォッチと呼ばれた王室御用達の「プリンス」の流れである。この「プリンス」は時代、時代の雰囲気をケースデザインに取り入れたもので、アールデコ調のデザインは、王室・医師=上流階級のシンボルとしてそのポジションを手に入れていくこととなる。

1940年代、時計メーカーを大きく変化させたのが第2次世界大戦であった。ロレックスは米国へとその販路を広げ、信頼と精度にすぐれたオイスター、パーペクチュアルは連合軍の士官達へと支給され、ロレックスという名前はヨーロッパ・米国で広く認められることとなる。
以降、ロレックスはあくなき挑戦者として、「そこに人が存在するなら」という“特殊分野”に挑む。それらが深海に潜るダイバーズウォッチのサブ・マリーナであり、登山等に使われる冒険家用のエクスプローラ、パイロット用のGMTマスターであった。

1970年代、画期的なクオーツの登場によって時計業界は一変する。高精度・低価格が実現し、多くのブランドは衰退していく。丁度この時期に、アンティーク・ロレックスのブームが訪れ、さらにロ レックスの知名度と理解の奥行きが深まることとなる。そのアンティーク・ロレックスを流行させたのが、あのA・ウォーホルであった。こうした背景を含め、日本市場において、ロレックスの人気が落ちることはなかった。

アンティーク・ロレックスのブームに火をつけたA・ウォーホルのコレクション癖は、それが彼自身の人生のすべてを表現するくらい狂信的なものであった。その多くのコレクションの中でも時計に賭ける執着は、他を寄せつけないほどのものがあったという。'78年に発売されたイタリアのVOGUE誌で、バブルバックを腕にしたウォーホルが表紙に登場し話題を呼んだ。また同誌は別の号で「ちょっと古い時計」という特集を組んだこともあり、アンティークウォッチ、中でもロレックスのバブルバックが世界的に大流行した。金無垢ロレックスが上流階級のステイタスシンボルであったのに対して、ファッショナブルなヤッピーやモデルたちにとって、アンティークウォッチをするのが当時の流行りで。アンティークウォッチを腕にしたウォーホルのスタイルは、こうした時代の中でシンボライズされた。

ロレックスは今で言う「ニッチ市場」「ピンポイントマーケット」をテーマとしてきたブランドである。そのぶれないポリシーこそが、ロレックスのアンティークマーケットを成立させる。同じようなクオーツ技術の台頭に対し、徹底したローコスト&デザインオリエンテッドを貫くスオッチ(ETA社)をコンビニ型消費商品とすれば、ロレックスはその両極の文化型消費商品といえよう。勿論、両ブランド共に狙うマーケットは明確である。誰を顧客とするのか、極めて分かりやすい2つのブランド事例だ。スオッチをトレンドブランドといってもかまわない。ロレックスをコレクションブランドといってもかまわない。両ブランド共に「時代の変化と共にある」成熟したマーケットへの明確な戦略をもった良きビジネスモデルであろう。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 08:18│Comments(0)新市場創造
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