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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2006年06月16日

起業と子育て 

ット商品応援団日記No72(毎週2回更新)  2006.6.14.

「会社は株主のものでしかない」という考えに対し、なぜ会社は法人企業、「法人」という人格を会社に与えているのかと根源的な問いに答えてくれたのは岩井克人さん(「会社はだれのものか」平凡社)であった。私が近しく仕事をさせていただき尊敬もした経営者のお一人であるダスキン創業者鈴木清一は、創業時”神様、この会社が社会のお役にたたないのであれば、どうぞつぶしてください”と祈って、会社をスタートさせた。和菓子の叶匠壽庵の創業者芝田清次は、和菓子だけでなく”美しく生きよ”と従業員ばかりか、初対面の私にも説いておられた経験を持っている。あるいは今も「思いの経営」を目指しているオートウエーブの広岡さんや「野の葡萄」を立ち上げた小役丸さんもそうしたお一人だと思う。創業者には、というより創業精神がバトンタッチされている企業、例えばサントリーを始め、ある一つの明確な「人格」「らしさ」を持ち続けている企業も多い。そして、創業・起業とは「未来」への強い意志であり、それは昔も今も変わらない筈である。最近は「Always三丁目の夕日」を契機に昭和30年代がテーマとなっているが、当時は企業も個人も未来を思い描けた時代であった。描ければこそ頑張れた訳である。未来とは、いつか手に入れようとするもので、実は描いた未来を消費しながら今日へと至って来た。ところが、1990年代半ばから「未来」が分からなくなってきたのだと思う。明日は何が起るかわからない、多くの企業も個人もそう思っている。つまり、手に入れたいとする「未来」が無いのだ。私が「私生活主義」を解体し、内側にある私生活から外側へと向かう「未来」を思い描く時に来ていると指摘したのもこうした背景からである。
さて、思い描く未来がない時代にあって、しかし停滞という踊り場から一歩踏み出す動きもある。「既に起っていた未来」と教えてくれたのはP、ドラッカーであるが、今それぞれの足下から「小さな」未来が始まっている。先日、鳥取米子の企業家と話をする機会があった。おそらく誰も知らない「鳥取」である。せいぜい知られているのは知事の片山さんぐらいである。全国一人口数の少ない小さな県だからこそできることがある、と信じている人達がいる。多くの地方も同様であるが、市の中心部の商店街はシャッター通りと化し、全てが停滞しているように見える。どこにでもある問題を、どこにもない知恵と方法をもって一人一人が行動し始めている。このブログで知り合った二人の主婦は、沖縄糸満のディープな公設市場に気軽に集まれる場所をつくりたいと、コミュニティカフェをスタートさせて5ヶ月になろうとしている。「バカ者」「ワカ者」「ヨソ者」がコト起しには必要であるが、まずは「バカ者」が走ればいいのだ。バカになって未来を描き続ければ、必ず追いかけてくる人はいる。点はいつしか点とつながり線となる。線は線と重なり、時には離れ、そしていつしか小さな面になる。
最近、起業し会社へと成長していくさまは、子育てに良く似ているなと思っている。今、社会問題化している幼児・児童への虐待の多くは、その背景に母親自身愛情をもって育てられてこなかった事実。こころに傷を負った母親が、まるで子を私有物のように扱うのも、愛情という未来から疎外されているためと指摘する専門家も多い。未来は両親や兄妹などの「外」、大きく言えば社会から望まれてこそ未来となる。愛情という未来を受けて生まれ、時に怒られ、愛され、けがや病気も経験し、同時に「自分一人」で生きてきた訳ではない、と思い得た時、初めて「親」になる。子供を産んだからといって、親は最初から親になれる訳ではないのだ。起業も会社運営も、未来を描きながら子から親になっていく。そこにあるのは自己愛ではなく、回りへ社会への惜しみない愛情であると思う。(続く)

追記 −1 6月14日以前のブログをご覧いただく場合は下記のアドレスにアクセスください。http://remodelnet.cocolog-nifty.com/remodelnet/

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Posted by ヒット商品応援団 at 14:23│Comments(0)新市場創造
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