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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2008年05月14日

新富裕層市場

ヒット商品応援団日記No265(毎週2回更新)  2008.5.14.

ここ数回「価格」について触れることが多かったが、その背景となる市場構造の変化について考えてみたい。今から6年ほど前に市場の構造変化を調べたことがあった。簡略化して言うと、バブル崩壊前は「一億総中流時代」と呼ばれたように、マス市場を形成していた。まだまだ物不足の時代にあって、極論ではあるがマス生産、マス販売、マス消費という市場の構造であった。しかし、周知のようにこうした構造はバブルと共に瓦解し、二極化と呼ばれるような構造へと変化してきた。この二極化の最大ポイントは、中流と言われてきた圧倒的な大市場の崩壊で、その多くは「下流」市場へと向かい、その一部は2001年以降の「勝ち組」と言われた市場と共にいわゆる新富裕層へと新たに流入し、今日へと至っている。

流通の変化を見ると、この市場構造の変化を物の見事に映し出している。いわゆる「中流の上」を中心顧客に据えた百貨店はバブル崩壊と共に苦戦し、統合再編を繰り返す。一方、量販専門店やディスカウンター、あるいはデフレの旗手といわれたような専門店業態が1990年代後半から大きく成長してくる。最近では、前々回取り上げた「エブリデーロープライス」を都市部において実現したOKストアのようなスーパー業態である。

ところで女性市場をていねいに見ていくと、この中流市場が崩壊し、二極化しているのがよく分かる。例えば、数年前「ヒトリッチ市場」と呼ばれた有職独身女性市場は明確に存在している。年齢は30歳以上で、住居は都心の3Aエリアという赤坂、青山、麻布に住む、会計士や弁護士といった専門職、あるいは総合職の女性、外資系企業に勤めるといったキャリア女性市場は新富裕層市場を形成している。また、40代のDINKS(子供を持たない夫婦世帯)市場も、その可処分所得の大きさから新富裕層と言えるであろう。こうした女性市場が高級ブランドの主要購買層となり、都市ホテルのエステ顧客やオーナーシェフの料理を楽しむ隠れ家的オーベルジュの中心顧客となっている。ある意味、この新富裕層が都市市場を牽引してきたと言えるであろう。

「中流」市場は無くなったのかというとそうではない。東京において中流市場を形成していると言えば、東急田園都市線の沿線、二子玉川やたまぷらーざ周辺が代表エリアである。いわゆるニコタマ族と呼ばれている層であるが、消費というより様々な投資・利殖が旺盛である。例えば、都心のワンルームマンションへの投資を始めとした不動産投資であったり、外貨預金といった利回りの良いものへの利殖である。この層は新富裕層を目指しており、日常的には質素であるように見える。しかし、食を中心にそれなりにこだわった「質素」である。

新富裕層の代表的市場であるキャリア女性達は収入もさることながら消費は極めて旺盛である。しかし、成果主義の世界を生き抜いており、「何か」に助けを求めてもいる。その「何か」の一つが健康や美容であれば、サプリメントに頼り、それが進行すればサプリメント依存症となる。最近では、強いストレスからと思われるが、抗鬱薬リタリンの服用から薬物中毒になる女性患者が増え、社会問題化し始めている。全国的に産婦人科や小児科の医師不足が叫ばれているが、都市においてはその需要増を背景に心療内科や精神科への鞍替え医師が多いといわれている。

この新富裕層は東京に集中している。ある意味、都市が産み出した市場であり、NYでもロンドンでも同じ構造をもっている。おそらくブランドの再生や新たなブランド創造のオピニオン的役割を果たすと思う。新しい市場もこの新f富裕層からも生まれてくるだろう。いずれにせよ、市場は階層化し始めている。誰を顧客とするのか、ビジネスの第一歩が更に重要な時代となった。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 11:22│Comments(0)新市場創造
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