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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2006年11月05日

標準語から方言へ 

ヒット商品応援団日記No113(毎週2回更新)  2006.11.5.

この6ヶ月ほど、このブログで取り上げてきたことは、次のフェーズ、価値観、次の生活へと変化していく「踊り場」についてであった。最近では回帰現象という次に向かうために「現在」から「過去」へと向かう思い出消費についてであったり、既成の観光=表通り観光から路地裏観光への変化であったり、表メニューから裏メニュー=賄い料理等への興味深化であったり、外側のメイクアップから内側(こころと身体)の美の追求への深化であったり、・・・・・こうした多くの視座と共にそこに起きる消費変化について書いてきた。生活者の価値潮流はどこにあるのか、私たちマーケティング用語で言うと「パラダイムチェンジ」(価値観の変化)のちょうど踊り場に来ていると思っている。こうした変化をキーワード的に言うと、表から裏へ、外側から内側へ、現在から過去へ、非日常から日常へ、個人から家族やコミュニティへ、規格標準品から手作りへ、話題・サプライズから体験・納得へ、過剰からバランスへ、洋のライフスタイルから和のライフスタイルへ・・・・・いくらでも変化を整理するための比較はできるが、今まで着眼してこなかったことが一つある。それは文化、言葉についてである。

江戸時代のライフスタイルについては過去かなり取り上げてきた。当時の識字率、今風にいうとリテラシーは70%にも及び当時の世界都市パリやロンドンと比較し、図抜けて高かった。ところで日本語の誕生はいつ頃かというと専門家によって若干違うものの、漢字が中国から朝鮮半島から渡ったのは紀元前2世紀頃で、日本語としての完成は、万葉仮名と略された片仮名(カタカナ)が生まれ、もはやどこから見ても漢字ではない文字・平仮名(ひらがな)が生み出されたとき、日本語(和語)が本当に始まったと言われている。そして、平安中期からから全国へと普及し、鎌倉〜室町時代、戦国時代へと、武士階級から農民へと広がっていった。実は、ながながと日本語の歴史を簡略化したのも、日本語は漢字・カタカナ・ひらがなを持ち、漢字は音と訓を持つ。しかもその漢語の意味も音ももはや中国語ではなく、かつ日本語も固有語の影を残しながらも形成されて来たものである。にもかかわらず、外来(漢意=漢字)と固有(和心=ひらがな)の匂いをなお持ち続け、一つの文字を二つに読み分ける世界唯一の稀有な言語が日本語である。日本人はわからない民族だとよく言われるが、日本語の複雑な構造、文化の構造を理解するには日本人ですら少なくなっている。天野祐吉さんのように、若い人達を駄目だというのではなく、逆に新しいことば遊びから生まれる感性に期待することになるのだろうが、日本語のもつ魅力・文化を再認識、勉強して欲しいと思う。

このブログにも書いたが、沖縄を訪れた時、「もあい」という講の一種が行われており大変興味深く思った。私が沖縄に強く惹かれた一つにことばがある。沖縄には何度となく行っているが常にリゾートホテルや観光ルート、あるいは那覇の国際通りであった。丁度10年ほど前、一人で散歩気分で好きな路地裏散歩をしたのがきっかけとなった。国際通りから公設市場へ、そして更に奥へと行くとオバアが一人野菜や果物を売っていた。並べられた中に、奇妙な形をした果物があった。今ではドラゴンフルーツと分かっているが、その果物についてどんな果物でどんな食べ方をするのか聞いたが、まるでオバアのことばが分からなかった。ああ、沖縄は全く異なる文化があるのだと強く実感した。琉球語とアイヌ語、2つの文化圏が過去あったと勝手に理解していたが、いや今なお琉球語文化が日常にあることに驚いたのである。沖縄の人に聞くと、琉球語も若い世代にとって分からない言葉(文化)になってしまいつつあるという。しかし、オバアやオジイの琉球語を子供たちへと伝える動きもまたあると聞いている。日本語という標準語と琉球語という方言の2つを生きる訳である。丁度、世界の標準語である英語と日本語という方言の2つのことば、文化をビジネスマンが生きているのと同じである。日本人はわからないと言われているが、一方世界の注目は日本に注がれている。分からないのは3つの言葉、特にひらがなという日本の風土が育ててきた固有文化であると言われている。このひらがな世界とどうつながっているのか私にはわからないが、注目の先は、世界に24,000もの店がある日本食レストランやアニメ、漫画、あるいはデザインという文化に対してである。表文化に対する裏文化と言ったら、自ら日本人であることを否定するようであるが、「方言」というコミュニティ文化に間違いなく注目が集まる。機能・合理、スピードの標準語から、歴史が堆積する生活文化そのものである方言への変化である。こうした「文化」が地域経済を活性化させ、そして世界へとつながっていくと私は確信している。地域起こしとは文化起こしである。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:19│Comments(0)新市場創造
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