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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2008年01月23日

グローバリズムとローカリズム

ヒット商品応援団日記No236(毎週2回更新)  2008.1.23.

グローバリズムという言葉には多様な側面・意味合いがあるが、地球市場という垣根がなくなった一つの市場のこととして使っていくと、その対となったもう一つの市場概念はローカリズムとなる。その善し悪しは別として、グローバルスタンダードという共通価値概念があるが、ローカルはどうかというと「違い」「固有」価値ということになる。各国・ローカルはその「違い」「固有性」を輸出したり、あるいはそれらを生かして輸入したりしている訳である。中国は世界の工場という役割を果たしているが、日本の場合は円安を背景に車や鉄鋼を始め輸出によって利益を得ている。大企業ばかりか、中小企業、特に食品・飲食業も世界の日本ブームに乗って韓国、台湾、中国、シンガポール、タイ・・・へと事業進出を加速させていることは周知の通りである。輸入はどうかというと、これも円安を背景にした日本観光が拡大している。

資源大国というキーワードが即エネルギー資源大国と同義であるように言われているが、ローカリズムという視座に立てば、日本はありあまるほどの資源大国である。従来、言われてきたロボットや環境などの技術大国以外にも多くの資源を持っており、その一つが文化資源である。そのシンボルが京都ということだ。2010年には京都市では5000万人、京都府全体では8000万人を目標に観光整備が行われている。昨年、世界におけるリゾートホテルの中のリゾートホテルと言われているアマンリゾートが京都郊外に進出すると発表されたがこれもそうした背景からだ。勿論、京都ばかりでなく、円安を背景に北海道ニセコにはオーストラリアからのスキー客が押し寄せており、雪の存在を知らない台湾客も増加中と聞いている。また、大気汚染と食への不安から、北京オリンピックの直前合宿地に日本を選ぶ外国チームも多い。足下を世界の中のローカリズムとして見直して見ると、宝の山の一つが観光産業である。

もう一つの資源大国は長寿大国である。長寿の国のライフスタイルはこれからの輸出産業の中心となる。ある意味日本のLOHASを世界へと輸出するということだ。少子高齢化をマイナス面でしかとらえられない貧困さには辟易してしまうが、ポジティブに見ていく視座を持てば宝の山となる。ips細胞といった先端医療から食生活まで、世界における固有な健康資源を保有している。そして、アンチエイジング=若返りという発想から、老いる=豊かさへの発想へと転換が始まっている。勿論、若い世代においてサプリメント(若返り・美容)はこれからも売れていくが、老年を迎える団塊世代にとっては健美同源、つまり年相応の健康である美しさへと価値観は変わっていく。

ところで以前「消費都市TOKYO」というテーマで、市場の特性について触れたことがあった。結論からいうと、東京はグローバルなTOKYOという市場と地球市場から見ればローカルな東京という市場の2つの市場から成り立っているグローカル市場だ。つまり、TOKYOという市場を狙うことはそのままグローバル市場につながっている。また、国内市場という視点に立つと東京という都市市場の2つの側面を持った混在市場となっている。どんな市場を狙うのか、誰を顧客とするのかが最も重要なテーマとなっている。東京は一つの地球都市国家として見ていくことが必要で、そこには都市と地方が混在しているということだ。別の視点で見れば、グローバル市場への玄関口でもあり、世界へ向けた一大実験市場、テストの場でもある。例えば、ヒット商品という視点に立てば、ルイヴィトンがパリ観光のお土産であったように、お土産あるいは記念品といったことが大きなビジネスチャンスとなるであろう。

グローバリズム、ローカリズム、2つの波に洗われる都市が東京であり、新しい「何か」を見出していくには格好の場である。成功・失敗、善・悪、美しさ・醜悪さ、表と裏、光と陰、豊かさ・貧しさ、過去・未来、・・・・・・こうして書いていくと、まるでインターネット上の世界と同じである。グローバリズムとローカリズムの交差点にはあらゆるものが行き交い一種の混沌さをもっているが、少し見晴らしの良い場所から見ていくといくつかの傾向が見えてくる。昨年、鳥取の同じ応援団の仲間を伴って、抱えているテーマに沿って東京の街を歩いた。いわゆるビジネスガイド役をしたのだが、施設に出向き、店を見、スタッフと話をし、なによりもそこを訪れる顧客のありようを実感することはテーマ解決のヒントになったと思う。

サブプライムローンに端を発した金融危機、更には原油を始めとしたエネルギー高騰、こうした混乱とは内容も在り方も異なるが、1970年代のニクソンショック、つまり変動相場制への移行、更には第一次オイルショックによるスタグフレーションを経験し、産業の高度化がはかられた日本である。単なる楽観主義ではあるが、ローカリズムの世界から何かが産まれてくると信じている。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:48│Comments(0)新市場創造
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