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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2011年06月05日

加速する政治不況のなかで

ヒット商品応援団日記No507(毎週更新)   2011.6.5.

7月から電力、ガスといった公共料金値上げの発表があった。中東・北アフリカの政情不安を背景に、原油や液化天然ガス(LNG)の国際的な取引価格が上昇していることからだ。既に3〜4月にかけて、食用油、コーヒー、小麦粉の関連商品の値上げが始まっている。
一方、ブログにも書いたが牛丼戦争に象徴されるようにデフレ情況は変わらず続いている。ちょうどリーマンショック半年前に起こっていた川上(輸入)ではインフレ、川下(流通・消費)ではデフレというエネルギー及び食料資源を持たない日本の構造的問題、ねじれ現象の再来である。最早、わけあり商品などという言葉はどこを見ても見つけることができない。勿論、わけあり商品が無くなった訳ではなく、それらは続くデフレ下にあって既に日常化しているからである。

昨年12月、子ども手当の使い道について厚生労働省から初めての調査結果が報告されたが、その使い道の一番目は「子どもの将来のための貯蓄・保険料」(42%)という結果に見られるように、明日が見えない、不安定さに対する明確な消費態度であった。そして、東日本大震災、3.11でライフスタイルが大きく変わると指摘したが、前回のブログにも書いたが、現政権への不信は単なる自己防衛としての消費態度だけではなく、原発事故による放射能汚染に対し子どもを守れと、福島県のお母さん達の抗議デモが行われ、社会的な事件へと不信の舞台は大きく変化した。
この不信はどのようにつくられたのか、言わずもがなである。繰り返し公共CMとして放送された金子みすずの「こだまでしょうか」ではないが、「安全です」「健康被害にはすぐにはなりません」と繰り返しアナウンスされてきた。つまり「安全デマ」であったことが「レベル7」であるとの発表以降、続々と事実が明らかになってきたからだ。デマとは確かな根拠がない悪質なうわさや風評の類のことを指す。本来そうしたデマを払拭すべき政府自身が安全というデマをパニックを起こさないためという理由があったにせよ、意図的に流してきた。マスメディアもその安全デマのお先棒をかついできたということだ。

そして、今税と社会保障との一体改革に盛り込まれた消費税による増税、2015年までに10%まで引き上げると言う。いやその前に東日本大震災に対する第二次補正予算の財源のゆくえも重い負担となる可能性もある。よく消費心理が萎縮すると言われているが、それはこうした予測される増税に対する反面の真理であるが、1998年以降今なお収入は減り続けており、回復するメドは立ってはいない。先日政府発表があったが、生活保護世帯は増え続け、戦後最悪であった頃と同じレベルの200万世帯を超えたという。しかも、その増加の多くが20〜40代の働き盛りである。新しい産業が見出せないまま日本経済は収縮しつつある。

ところで、ある評論家に言わせると、戦後の高度成長期を経て1990年代半ばまでは「富の分配」時代であった。そして、今はと言えば、「負担の分配」時代に入ったという。こうした負担の波が押し寄せる時代にふさわしく国民総幸福量(GNH)といった価値概念が浸透しつつある。幸福は個人の内面世界であり、それぞれ異なると思われてきたが、あのブータンという小国で始まった国づくりの概念である。経済開発一辺倒の国づくりによって、自然環境が破壊されたり、ブータンの伝統文化が失われてしまっては、何の意味もないというのが、この国づく政策の精神である。

このブータンにおける国民総幸福量については、先日NHKの「クローズドアップ現代」にも取り上げられていたが、大震災のなかで家族や故郷を奪い去られてもなお、住民自らが避難所を作り、互いに何かを持ち寄って支え合い、助け合う共助の精神、一種の「自治」の概念にも通じる世界である。更にいうと、多くのボランティアが被災地に向かい、今も向かっているが、その精神は被災者の喜びを自らの喜びとしたい、そうしたことにもつながる価値概念である。物質的豊かさから一旦離れ、他人の喜びを我が喜びにする、そんな幸福世界へとライフスタイルは向かう。原発問題、エネルギー政策も、国民総幸福量のような概念も視野に入れた文脈で語られていくであろう。そして、その方向のなかに昨年後半の消費生活に出てきたシンプル主義や断捨離といった価値観もこうした幸福概念につながっている。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:31│Comments(0)新市場創造
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