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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2007年10月21日

ブームという目            

ヒット商品応援団日記No212(毎週2回更新)  2007.10.21.

ここで使う「段階」の意味は、商品が成長・衰退するライフサイクルの段階であり、以前イノベーター理論でも書いたが、市場の中のイノベーターという革新的顧客からマス市場化していく段階と見てくれても良い。あるいは都市で始まった潮流が地方へと浸透していく段階、またその逆の段階、と解釈してくれても良い。一言でいうと市場の推移段階を指している。

商品であれ、業態であれ、今どの市場段階にいるのかという認識は極めて重要である。前回「亀田父子物語」というテーマで「誰もが過剰なパフォーマンスなど求めてはいないということだ。亀田父子物語の創作者は時代の風を無視したのか、読み間違えたのか、いずれにせよ極めて大きな代償を払うことになる」と書いた。この段階という目で見るならば、既に「亀田父子」という商品価値は右肩下がりになっており、今回の事件によってまさに煙突のように急激に上がり、急激に落ちるという情報によって創られるブームの良きケーススタディとなっている。

実はブームの頂点は昨年の「ランダエダVS亀田(兄)」の世界戦の前日にあり、その判定を巡って亀田ブランドの人気は下がり続け、今日の急降下状態になったということだ。大手コンビニのローソンを始め、政府広報までもが亀田ブランドを使うというていたらくであるが、ブームという市場認識及び既にブランド力は下がり始めているという市場段階認識の欠如と言えよう。歴史のある日本プロボクシングとJリーグを比較してはと思うが、1993年にスタートしたJリーグも1〜2年目はブームによるグッズ販売によって各クラブは黒字決算となる。しかし、3年目以降軒並み赤字決算となり、周知のように横浜フリューゲルスはマリノスに吸収合併され今日に至る。ブームは去り、Jリーグは百年構想を発表し、より顧客に近い地元に密着した少年サッカースクール等草の根活動を行い、1999年には二部制を導入する。そして、観客動員数も徐々に増加し、今日へと至る。

どのビジネス書やマーケティングの本においても、問題を解決するには問題の中に次なる市場機会があると書かれている。確かにそうではあるが、その前に、どんな市場段階にいるのかという認識が重要だということだ。一般論ではあるが、初期の段階と成熟した段階とでは問題は異なる。亀田ブランドでいうと、初期の家族愛・絆といった物語づくりは成功し、順調に推移してきた。やはり、東京へと移り次なる段階の物語づくりの中心に「巨人の星」のようなストーリーではなく、ヒール(悪役)ストーリー、ヒールパフォーマンスという全く逆のシナリオを書いた。当たり前のことであるが、顧客調査をすれば亀田ブランドを使えない理由は一目瞭然という結果が出て、ローソンを始めスポンサーは降りることになる。現在、報道によればスポンサーは0とのことだ。

さて、亀田ブランドの再生はありえるであろうか。先日の謝罪会見であるが、本来であれば謝罪会見はブランド再生へのスタートとならなければならない。しかし、従来の物語スタイルを変えようとはしていなかった。もし再生があるとすれば、不祥事を起こした企業がそうであるように、経営者を変え、解体し、社会が顧客が受け入れてくれる事業だけを残し、再生プランを提示することだと思う。亀田父子という言い方をするならば、ファミリーブランドを解体し、3兄弟は一人になり、カシアス内藤さんのようなボクシングが好きで好きでたまらないようなジムで素になって修行し直すことだと思う。パフォーマンスという虚構の物語世界から、実力というリアル世界を生きる物語への転換だ。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:42│Comments(0)新市場創造
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