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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2011年03月02日

情報のうねりのなかで

ヒット商品応援団日記No486(毎週更新)   2011.3.2.

確か1999年末の「ニューズウィーク日本語版」にGoogleの記事が載っていて、それではとPCにキーワードを入れて検索し、そのスピードと正確さに驚き、インターネットの世界がビジネスはもとより一人ひとりの生活を大きく変えるであろうと予感したことを覚えている。そして、今また、更に大きく変わるであろうと実感する出来事が多発している。
それはFacebookで呼びかけて、無名の大衆が立ち上がり政権を倒した中東や北アフリカの政治のことだけではない。ネット上に米国の外交機密文書を公開したウイキリークス、日本においても尖閣諸島における違法中国漁船の一部始終をYouTubeにアップロードした海上保安官。Googleやamazon、e-bayといった企業がネット上に現れた時代から10年、更に大きくかわろうとしており、それを演出しているのががFacebookやYouTubeであろう。

数年前にマスメディアに代わって、個人が情報を受発信する時代になったとブログにも書いたことがあった。その時、私は「個人放送局」という言葉を使ったが、それが次第につながり合って、ネットワークを形成し、一つの社会を創るようになった。これがソーシャルネットワーク社会で、日本ではmixi、GREE、モバゲータウンといったSNSで既に2000万人のユーザーを有するまでになった。そして、周知のように今話題のFacebookのユーザーは全世界で5億人と言われている。
つまり、パラダイムシフト、価値観の概念がこの10年で大きく変わってきたということである。それ以前の既成マスメディアとの比較をすると分かりやすい。例えば、次のように対比することができる。

●知識社会(知価社会) :マスメディア(TV/新聞):オピニオンリーダー
○情報社会(ソーシャル):ソーシャルメディア  :個人(大衆)

結論から言えば、10年前まではオピニオンリーダーがマスメディアを通じて、世間を動かしてきた。ビジネス(消費)でいうと、このオピニオンリーダーを発見し、このリーダーのライフスタイルに着眼し、新商品を開発したり、マーケティングを行ってきた。しかし、今世間を動かしているのは個人、大衆である。情報の受発信者であり、時によっては消費者(買い手)であり販売者(売り手)にもなる、そんな関係である。江戸時代の近江商人の心得に「三方よし」がある。売り手よし、買い手よし、世間よし、であるが、この世間がグローバル、地球規模まで広がったということである。
舞台はTVや新聞からソーシャルメディアに変わり、演じる主役もオピニオンリーダーから個人・大衆に代わったということだ。

前回のブログで、政治は「何」を解決してくれるのかという意味で、「愛知、名古屋での知事、市長選挙における減税日本の圧倒的な支持を見ても分かるように、理屈ではなく、実利を選んだということである。」と書いた。「理」ではなく、「利」を選んだということであるが、主役は個人(大衆)に移ったということである。この結果を政治評論家というオピニオンリーダーはポピュリズム、大衆迎合主義と呼んで批判しているが、そうではない。今まで政治(=世間)を動かしてきたオピニオンリーダーではなく、ごく普通の市民(大衆)が主役となり、世間を動かしたということなのだ。
大阪の橋下知事がツイッターでマスメディア批判を行ったとして、マスメディアの攻撃を受けているが、個人に一番近くなければならない政治家がソーシャルメディアを使うことが多くなったことはよく理解できる。あの小沢一郎がTVメディアに出ることは少ないが、しかしニコニコ動画には長時間に渡って出演するのは、そこに大衆がいると感じているからであろう。

昨年10月米国でGoogleTVが発売され話題となった。価格はディスプレイ一体型のソニーの24インチが約49,100円とかなり安価である。TV市場とPC市場の未来を変えるという謳い文句であるが、確かに更に変わることになると思った。日本における販売は未定であるが、2015年には米国内で4200万台売ると予測されている。業界的にいうと、スマートフォンならぬ、スマートTVと呼ぶそうであるが、携帯が一挙にスマートフォンに切り替ったように普及は更にスピードを上げて変わるかもしれない。そのGoogleTVで何ができるかであるが、全てのウエブを見ることが出来、ツイッターを始めとしたアンドロイドアプリの動作も可能、しかもスマートフォンをリモコンにも使える。さて、日本にも導入された場合、例えば視聴者は既成のマスTVのニュースや番組を見るのか、それともYouTubeやニコニコ動画を選ぶかコンテンツ競争となるが、現状のコンテンツの在り方を考えればそれは自明であろう。

面白いことに、マスメディアはFacebookによる呼びかけに応じた共感の連鎖を、中東や北アフリカの民主化、あるいは政治革命と称しているが、各国の変革はその背景を含め全て個別である。そうした個別課題を解決へと突き動かしているのが情報である。正確にいうのであれば情報革命が各国で進行していると理解すべきである。
そして、この情報革命のなかで、最も求められているのが過剰な情報が行き交う中で、「私に必要な情報だけ欲しい」という要望である。この要望にある程度応えるメディアとなったのが、SNSといったソーシャルメディアである。10年前、玉石混交、清濁混濁、と呼ばれたインターネット世界もそうした痕跡を残しながらも情報革命として咀嚼し進化してきた。
最近ではヤフー知恵袋で解答を募集したカンニング騒動を起こした京都大学受験生もいたが、これも一つの通過点である。「三方よし」の世間が広がった分、多様な価値観と共に、悪用する知恵もまた横行錯綜する。しかし、5年、10年という時間を考えれば、生活者の側も体験・学習し、どんなメディアのどんな内容を選択したら良いのか理解することとなる。一年ほど前、ブログにツイッターというメディアにふれて、「既成のマスメディアが送り手として物語や世界観を一方的に送るコミュニケーションであるのに対し、インターネット上のコミュニケーションはプラットフォームさえ整備できればメディアとして大きく成長できることを証明した。」と、私はブログに書いた。と、同時に、

『こうした双方向のコミュニケーションから生まれたのが、あの「電車男」である。2004年に出版され、映画化されたものであるが、送り手=作家を持たない新しい物語である。2004年3月〜5月まで、2ちゃんねるの掲示板に書き込まれた匿名の人達によるコミュニケーションである。つまり、匿名が物語の作者であり、主人公ということだ。』とも書いた。

匿名という個人、大衆がSNSという実名の個人として今舞台に上がってきた。時々訪問する鳥取県では年末年始の豪雪で多くのドライバーが立ち往生したが、その時一番役に立ったのがツイッターによる情報共有であった。今、鳥取県ではこうしたツイッター情報をどう活用するのか検討していると聞いている。また、今回のNZ地震においても避難所のガイドや当座の住まい等の提供もツイッターやFacebookが活用されている。玉石混交、清濁混濁という情報のうねりのなかで、私たちは10年経って情報をどう共有したら良いのかSNSというプラットフォーム上で体験してきた。今起こっている情報革命は地球規模で個々の世間を動かし始めたということだ。それは匿名から実名への成長変化であり、身近な子育ての相談事から自然災害に出会った時の緊急時の活用まで、更には一番遅れている政治に至まで次のステージに上がってきた。つまり、インターネット社会ならではの新しい「公」の創造である。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 10:58│Comments(0)新市場創造
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