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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2010年01月17日

エコは素敵生活へ 

ヒット商品応援団日記No436(毎週2回更新)  2010.1.17.

昨年、2010年を予測するにあたり、「エコはお得」というキーワードで未来生活の芽をブログに書いた。予測は当たらないというのが私の持論ではあるが、以降1ヶ月ほど経つがエコ生活へと向かっていることは間違いない。
エコカーへの減税&補助金、エコポイント制度といった官製販促支援は需要の先食いとの側面をもってはいるが、生活者意識として省エネは省マネーになるという新たなエコ家庭経済へと向かわせている。LED電球から省エネ洗剤アタックネオといったヒット商品もさることながら、「その商品は環境にも財布にも優しいか」という鳥の眼と虫の眼という複眼で、しかも中長期の眼で消費する価値観を持ち始めたということである。

昨年「ユニクロ栄えて、国滅ぶ」と書いた経済学者がいたが、デフレ経済を悪者扱いしているが、単なる安売り競争経済といった側面だけで見てはならない。デフレは消費意識を、価格の裏側に潜む「理由」や「意味合い」へと向かわせた。その中には、グローバル経済に翻弄される生活、例えばガソリン高騰や中国冷凍餃子事件に見られるようなエネルギーや食料を輸入せざるを得ない小資源国としての実態を思い起こさせた。更に、リーマンショックは輸出によって得られたお金でそれらを買って済んでいた時代から、「自給」する経済、「自給」する生活へと意識を向かわせた。中国冷凍餃子事件は確認できる体感できる安心・安全な食へと向かわせた。こうした中から生まれたのが、家庭菜園ブームや農家レストラン人気であり、更には収入が減り続ける時代の知恵として、「わけあり商品」、「下取りセール」や「リサイクル」、「アウトレットブーム」といった消費が生まれてきた。ある意味、デフレは自給という循環型経済へと向かわせる後押しをしたと見ることも出来る。米国ほどはないが、過剰消費、バブル的消費の見直しである。

昨年、2010年予測のブログで、地方はエネルギー生産地、都市はその消費地とし、その需給関係(青森六ヶ所村の風力発電と東京新丸ビルにおける電力消費)について書いたが、ちょうどそれを裏付けるデータがあった。「都道府県別自然エネルギー自給率」(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/7390.html)で、最も自給率の高いのが地熱発電、温泉熱利用の高い大分県の25%、第二位はヨーロッパ型の水車の利用といった小水力発電の盛んな富山県、勿論最下位は東京の0.21%である。ちなみに、原子力発電を含めないエネルギー自給率の各国比較では米国73%、英国113%、中国100%、日本はわずか6%である。
もう一つの自給率である食料は、同じようにデータ比較(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/7235.html)がなされている。これも地産地消の浸透指標として見ていくのに良いデータと思うが、自給率が最も高いのが北海道の198%、第二位が秋田の177%で、勿論最下位が東京の1%である。同じように各国比較では米国119%、英国74%、仏130%、日本は周知の40%である。(2002年度、カロリーベース比較)

確か2年ほど前、旧政権による環境技術開発などへの3兆円規模の助成支援があったが、太陽光発電や超伝導による電流ロスの解消など広義の省エネ技術が磨かれ成果が出始めているようだ。更に、昨年末新政権による「新成長戦略」が発表されたが、環境エネルギー政策の基本方針も出てきた。地方分権が、どんなスピードで、どこまでの権限と範囲で実行されるかわからないが、エネルギーと食料という生活に不可欠な重要テーマを軸に、都市と地方との格差是正や需給の在り方が政治の場で語られていくと思う。地方はエネルギーや食料の生産地として、魅力ある固有の生産を目指し、都市はその魅力を消費していくことになる。エコという視座に立てば、地方はエコヴィレッジ、都市はエコタウンが目標となる。

HVカーや電気自動車に代表されるエコ商品は官製支援はあるものの、量産化によってキラーコンテンツならぬキラープライスとして生活の多くの商品へと広がっていくであろう。勿論、「エコはお得」という新たな価値観によってだが、次のテーマとなるのが「エコは素敵」という概念であろう。この概念は、「クールジャパン」における「クール」に近い意味で、新しい時代人の格好良さとでも表現できるライフスタイル観である。米国から持ち込まれたLOHASは単なるブームに終わったが、LOHASに替わる新たなライフスタイル観が生まれてくる。そうした価値観は、人物、企業、あるいは市町村という様々なところから生まれてくるであろう。勿論、次なるライフスタイルリーダー、ソーシャルリーダーとしてであるが、私ならば「クールガール」とか、「クールカンパニー」、「クールヴィレッジ」などと呼んでみたいと思っている。それはなによりも、日本初のクールカルチャー、ジャパンスタイルカルチャーを世界に向けて発信していける、いやビジネスとして極めて大きな可能性があると考えているからだ。そのビジネスの中核となるのがやはり観光である。

勿論、グリーンツーリズムやエコツーリズムといった狭い観光ではない。狭いという意味は、単に自然の持つ生命力を五感で感じ、楽しみ遊ぶといったことではなく、それらを生活へと取り入れた日本文化、ヨーロッパを石の文化であるとするならば、木の文化、紙の文化といった生活文化の観光である。特に、地方には都市文化の波に洗われてなお残る固有な生活がある。私はその象徴として京都をそのモデルとして挙げているが、多くの地方には未だ知らない自然生活文化、産土(うぶすな)が埋もれており、少しづつ表舞台へと上がっていくであろう。
外(世界)からの眼でクールジャパンと注目されているが、今度は自ら「素敵生活」「クールカルチャー」を発信していくことだ。前回、「サービス価値再考」で「星のや 京都」と「加賀屋」を取り上げたのもそうした発信事例としてである。

ここ2年ほど「価格」に関するブログが多かったように思う。価格は重要なキーワードであるが、そのことを踏まえ「エコは素敵」というキーワードで消費を見ていこうと思っている。昨年、2010年をエコ元年と表現したが、現状は一部の省エネ製品、省エネ住宅、自然エネルギーの活用、・・・・ゴミゼロ運動、といったエコロジーの断片が生まれたにすぎない。生活は全体であり、全体を構想することが問われている。個人だけでも、企業だけでも解には至らない。産官学合同による産業起こしなどと言われるが、一番重要なことは住民、生活者がエコリーダーになるということだ。富山県のように小水力発電にチャレンジしているところもある。日本には約1800弱の区市町村があるが、1800のエコヴィレッジ、エコタウンという「素敵さ」があってもかまわない。福岡県岡垣町という田舎で「どこでもある田舎をここにしかない田舎にしたい」と町起こしをしている野の葡萄はその先駆者でもある。
そうした「素敵さ」を表舞台へ上げ、活性化させる中心は観光である。新政権の成長戦略に休暇取得の分散化などの「ローカル・ホリデー制度」が検討課題に上がっているが、こうした制度がエコヴィレッジを後押しするであろう。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:02│Comments(0)新市場創造
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