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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2006年09月20日

未来予測の方法 

ヒット商品応援団日記No100(毎週2回更新)  2006.9,20,

最近寄せられたメールに「これからヒットする商品をどのように予測するのですか」という質問があった。十数年前、ビジネス書やマーケティング書は「未来予測」ばかりであった。21世紀を前にして、という意味合いが大きかったこともあったが、そうした予測はことごとく外れてきた。当時、生産年齢人口が減少に転じたと警鐘をならし、「少子高齢化社会」に入ったことを指摘したのは堺屋太一さんぐらいであった。最近では、トフラーが書いた「富の未来」ぐらいなもので、上巻はある程度はなるほどと考えさせられたが、未来を描いているとは思えなかった。メールをいただいた方にドラッカーのことばを引用して、私なりの予測の方法論をサジェッションした。

未来について確実に言えることは2つしかない。
未来は分からない。
未来は現在とは違う。
未来を知る方法も2つしかない。
すでに起こったことの帰結を見る。
自分で未来をつくる。

つまり、自分で未来をつくらないのであれば、「すでに起こったことの帰結を見る」という方法をもとに予測していく方法しかないと私も思っている。ドラッカーの本のタイトルにもなっているが「既に起こった未来」、つまり「少子高齢化」のように動かしがたい事実を集め、それがどんな方向へと進んでいくのかを見定めていく方法である。

さて、この「動かしがたい事実」という情報は「何」であり、「どう集める」かである。私が行う方法の一つに「オピニオン情報の収集」がある。オピニオンとは時代に対し先行して意見を述べ、自らもそう行動している人たちが発信している情報である。例えば、私の場合は「ほぼ日刊イトイ新聞」の糸井重里さん、ビジネスの底流を読み解く寺島実郎さん、脳科学の茂木健一郎さん、文化人類学の中沢新一さん、サブカルチャーの大塚英志さん、文明への目線をもった数少ない指摘をされている月尾嘉男さん・・・・・時代の雰囲気を伝えてくれる人気ブログの「きっこの日記」までと幅広くチェックしている。また、話題になっている映画、TV番組、雑誌、ショップ、商品、人物、エリア、・・・・こうした「メディア」も好き嫌い別にして見たり使ったり、体験するようにしている。中でも商業施設はその時々のライフスタイルを映し出していることもあり、できる限り定点観測している。また、一緒に仕事をした仲間がメーカーや流通におり、今売れている情報もいただいている。こうした繰り返しの中から、「変化」している事実を見いだしていく方法を採っている。

例えば、こんな情報を結果として集めることになることもある。周知の相次ぐ凶悪少年犯罪、BSEや鳥インフルエンザの不安、年金などの社会保障不安、リストラ、・・・こうしたことばにならない不安の時代にいるが、数年前ある美術館で見た数点の絵に衝撃を受けたことがあった。石田徹也さんの絵(http://www.cre-8.jp/snap/390/index.html)であるが、こんな若い世代が「息苦しく」「生きづらい」時代なんだと実感したことがある。あるいは同時期だと思ったが、これでもかというぐらいサプライズばかりのCM世界にあって、谷川俊太郎さんの詩を使った「地球上の朝」をテーマとしたネスカフェの広告に強く惹かれたことがあった。ああ、静かな、大人の時代を迎えるな、というのがその時の印象であった。少し後に、書籍売り場には後にベストセラーになる柳澤桂子さんの「心訳般若心経生きて死ぬ智慧」が置かれていた。こうした「気づき」は私の記憶の底に堆積し、市場はかなり内側に向き「心理化」しているな、原点へと回帰するこころの芽が出始めたなと感じた。結果、「動かしがたい事実」とまでは断定できないが、そうした気づきが市場への着眼、キーワードといった世界につながっていくのだと思っている。

こうして集めた情報の分析であるが、ある人はノートブックに、ある人はカードにメモとして書き留めている。今なら、PCのexcellに入力して分析加工しやすくする人がいると思うし、横着な人は「はてなダイアリー」を使うかもしれない。いづれにせよ集めた情報は傾向毎にグルーピングをし、俯瞰して見る。そして、その傾向は、ドラッカーのいうように「動がしがたい事実」であるかどうかを検討する。理屈っぽくいうとそうなるが、この傾向は他の生活領域やマーケットにも等しく及ぶであろうか、その時必要とする条件はなにか、などとコンセプトの可能性について考えてしまうのが常である。そして、このブログのタイトルにあるように、仮説をもって「予測の方法」の精度を上げるだけである。以前、ヒット商品は「人為的につくれますか」という質問があったが、短期的なヒット商品の多くはマーケティングによるところが大きいことは事実である。但し、投資するマーケティングコストは利益を上回るケースが多いことも、また事実である。ビジネスは「継続」であり、誰を顧客とするのか、という市場の規定の仕方さえ間違わなければ利益を得ることは可能である。しかし、規模のビジネスを追いかけたとたん、往々にして間違いを犯してしまう。次回からは仮説としてどんな「傾向」のものが流行るか、具体的な事例を挙げて皆さんと一緒にスタディしてみたい。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 11:54│Comments(0)新市場創造
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