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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2007年07月09日

変わらないこと 

ヒット商品応援団日記No182(毎週2回更新)  2007.7.9.

あらゆるメディアからの情報を定点観測しているが、常に思うのがその変化スピードである。私は結構新しいもの好きなのでこの春大ヒット商品となった電子マネーPASMOを使っている。勿論、JR東日本が出したスイカも使ってはいたが、JRだけではどうも使い勝手が悪かった。途中チャージをしないまま、そのままにしていたのだが、JRも私鉄もバスまでもがこの1枚で使えると言う便利さに多くの人が殺到し、周知の通り追加発売が延期になっている。こうした動きと併行するようにヨーカ堂グループではNANACO、イオングループではWAONと相次いで電子マネーが発売された。2006年の電子マネー市場は1800億円と言われ、今年度2007年には6900億円にもなると予測されている。ヨーカ堂グループではこうして集められた顧客データを分析し、顧客が欲しい商品へとつなげて行くと、その主旨を発表している。

小売業における情報についてはそのPOSデータを駆使することで他のコンビニに追随をさせなかったセブンイレブンは単なる小売業NO1という売上規模や利益だけでなく、その顧客主義について学ぶべきことは多い。今やセブンイレブンだけでなく、西武やそごうといったミレニアムグループ全体では1日で2600万人のデータが集まっている。時間帯における顧客心理を巧みに商品化させていったのはセブンイレブンであるが、同時に気候・気温による心理変化についてはかなり精度高い物となっている。最近では一番に考えているのが市場変化である。つまり、少子高齢市場で、セブンイレブンの平均年齢はこの9年間で30歳から36歳へと6歳も上がっている。「ご用聞き」というアナログ的活動をスタートさせたのも、高齢顧客を知り、より太い関係づくりのためだ。恐らく、高齢市場が本格化する数年後にはこうした活動が生きてくると思う。

ところで、セブンイレブンという業態をつくったのは鈴木敏文さんであることは良く知られている。スタート当時は東京台東区の小さな店舗でこのような売り上げを上げるとは誰も想像していなかった。そして、当初の商品は時代と共に大きく変わってきていることも周知の通りである。実は、変わらないこともいくつかある。1つは小さなこだわりと工夫する努力である。そのこだわりとは、例えば「天候」と売り上げへの工夫である。穏やかな天候の日は想定通りの安定した売り上げを示せるが、気温が2〜3度違うだけで売れる商品が違ってくる。真冬に冷やし中華は売れるであろうか?中には変わった人間もいますからでは答えにはならない。例えば、前日8度であった気温が明日は10度以上になるという予報で仕入れ商品が決まる。気温差が2〜3度違うと冷たいものもいいかなと思う人間の心理欲求を小さなテストの繰り返しによって精度の高い仕入れと売り上げに結びつける。そうした1店ごとの丁寧なスーパーバイジングに今なおこだわっている。店頭には平均3000品目あり、1年間で約70%が入れ替わる業態である。欲しい商品が並ばないかぎり売り上げはあがらない。

もう一つの変わらないことは毎週1500名もの店舗経営相談員を東京に集めることだ。効率論から言えば、年間30億もの出張経費をかけることは問題があると見えるかもしれません。しかし、先ほどの気温が2度違うだけで売れる商品が異なる業態であることを徹底させることに経営の意味があると鈴木さんは考えていると思う。そして、もっと丁寧なお店になれば更に売り上げは上がると考えてもいる。さて、「小さな」ことの積み重ねに学ぶことも必要である。そして、小さなことは「現場」でしか分からないということも学べる。また、「何」にお金を使うべきかに学ぶこともできる。私にはもう一つ、「変わるべきこと」と「変わらないこと」を学ぶが、皆さんはどう学ぶであろうか?(続く)
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Posted by ヒット商品応援団 at 11:09│Comments(0)新市場創造
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