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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2009年12月09日

過去3ヶ年のヒット商品傾向

ヒット商品応援団日記No426(毎週2回更新)  2009.12.9.

今回は少し異なった視座、過去3ヶ年の日経MJによるヒット商品の推移・傾向について書いてみたい。この3年間で何が変わり、何が変わらなかったか、ある意味2010年以降の変化の在り方が見えてくる。
2007年
東横綱 Wii、 西横綱 電子マネー
東大関 自動認識技術、    西大関 ハイビジョンビデオカメラ
東関脇 デカ盛りフード、西関脇 TOKYO
東小結 Youtube、   西小結 ホワイトプラン
2008年
東横綱 ユニクロ・H&M、 西横綱 PB商品
東大関 低価格小型PC、    西大関 WiiFit
東関脇 ブルーレイ、西関脇 パルック(蛍光灯電球)
東小結 円高還元セール、   西小結 プレミアムローストコーヒー
2009年
東横綱 エコカー、 西横綱 激安ジーンズ
東大関 フリー、    西大関 LED
東関脇 規格外野菜、西関脇 餃子の王将
東小結 下取り、   西小結 ツィッター

2007年、遠い昔のように思える位のわずかな時間経過であるが、食品偽装が多発した年であった。また、偽装ではないが、いまだに解決されない中国冷凍餃子事件が2007年末に起き、グローバル時代の食の安心安全という課題、今日の地産地消・農家レストランブームの背景となった年である。西関脇のTOKYOはグローバル時代・地球都市の象徴として東京ミッドタウンや新丸ビルがオープンした。一方では格差が叫ばれ、デフレ型商品である「デカ盛り」や「ホワイトプラン」、更にはマクドナルドを始めとした「地域価格」が全国に導入された年度である。ちなみに、この年の流行語大賞は「どげんかせんといかん」であった。こうした混迷・停滞する市場の在り方について、「まだら模様」とし、誰を顧客とするのかが極めて重要な課題となっていることを指摘した。
こうしたデフレ型商品のヒットは、2008年にはより鮮明になり、ユニクロ・H&M、PB商品、低価格小型PC、円高還元セールへと続き、2009年度へと続いていくのである。

2007年はデカ盛りフードに注目が集まったが、一方では「カロリー・ゼロ・コーラ」に人気が集まる。ダイエットでは、周知のかなりハードな「ビリーズブートキャンプ」がブームになった一方、楽して痩せる「ぷるぷるフィットネス」の手軽さが人気となる。こうした価値観の反対軸にあるような商品が売れる市場の情況を私は「振り子消費」と呼んでいた。さて、こうした振り子はどう推移してきたかである。
2008年には健康・美容をテーマとしたヒット商品はほとんどなく、2009年には「ランニング&サイクリング」が前頭に入った。それまでの過剰なダイエット、あるいはサプリメント依存症が社会問題化したような時代は終わったということであろう。終わらせたのは勿論のこと収入が減少したことにある。しかし、健康&美容というテーマへの関心がなくなった訳ではない。例えば、東京では近場の高尾山ハイキングが人気で年間250万人に及んでいる。振り子の幅が小さくなると同時に、自分の健康はお金をかけずに自分でコントロールする、そうしたセルフ型健康法へと移行したということだ。

2007年の前頭に「ニッサンGT-R」がリバイバル商品として現れている。確かその前年度であったと思うが、ミニヒット商品として「冷凍みかん」や「揚げパン」がプチ思い出消費として中学生の間で人気となっていた。小学校の給食に出された食への思い出消費であるが、年齢問わずこうした過去へと遡る消費は一つの時代特徴として存在する。3年前、私は、先が見えない停滞した時代の傾向を「踊り場」にいると表現し、こうした踊り場から過去を振り返る思い出消費はこれからも続くであろうとブログに書いていた。
こうした傾向のヒット商品は2008年には出てこなかったが、2009年には続々と出現した。そのヒットの着眼傾向は前回のブログを読んでいただきたいが、戦国BASARAから歴女が生まれ、「美少女キャラと日本の田園風景」が描かれた米通販が話題となったように、単なる回帰消費ではなく、オタク文化の一つの発露として新しいマーケティングの可能性を読み取ることが出来る。こうした傾向は、ゆるキャラブームを背景に、若い世代の「平成ロマン」として物語化されていく。

もう一つ大きな傾向はなんといっても「価格」への着眼商品である。単純化して言うならば、2007年時点では「まだら模様」状態であった市場は、2008年にはリーマン・ショックという引き金もあって急激に市場は「低価格」に覆われた。日経MJは”逆風下「お買い得」全盛”と表現していたが、それまで底流としてあったデフレ型商品が一挙に市場を席巻したということだ。こうした価値観変化・ライフスタイル変化を次のように私は指摘していた。
1、外から内へ、ハレからケへ
2、エブリデーロープライス
3、個族から家族へ
4、小さなアイディア、小さなうれしい
5、振り子消費からの脱却
6、あれこれRE(再生)アイディア、使用価値の最大化
7、流通サービスの再編
そして、前回書いたように、2009年には新たな「価格帯市場」=「巣ごもり生活」が形成された。上記のような大きなライフスタイル傾向はこれからも続く。例えば、「外から内へ、ハレからケへ」という傾向も、外食から内食へと、しかし日常(ケ)にも小さな美味しさを求め、2008年のヒット商品であった「熱いまま急っと瞬冷凍」できるような冷蔵庫や最近では5〜10万といった高額炊飯器が売れる時代である。「個族から家族へ」もそうであるが、今年は変り種の鍋が流行るであろうし、この延長線上には子供の食の遊園地ではないがエンターテイメント溢れる回転寿司も流行ると思う。巣ごもり生活は外側からは消費縮小のように見えるが、実は「消費移動」が起きているということである。これから年末にかけて、来年度の景気予測など特集されると思うが、それらを踏まえどんな消費移動が起こるか次回以降書いてみたい。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:41│Comments(0)新市場創造
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