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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2009年10月18日

おらは死んじまっただ

ヒット商品応援団日記No411(毎週2回更新)  2009.10.18.

前回に続き、「テーマ集積」において、この時代どんなテーマがふさわしいか書いてみたいと思っていた。しかし、昨日「ザ・フォーク・クルセダーズ」のリーダーとして活躍した音楽家加藤和彦さんが亡くなったと報じられた。「ザ・フォーク・クルセダーズ」というバンド名も、デビュー作で大ヒットとなった「帰って来たヨッパライ」という曲も、若い平成世代にとってはほとんど知らないことと思う。1965年京都の学生3人によるバンドであるが、まだラジオが力を持っていた時代で ♪おらあーしんじまっただあ……という曲は繰り返し放送され一つの時代の空気感をつくっていた。その空気感であるが、既成や規制という常識や体制に対し、Noを冗談で笑い飛ばす痛快なフォークソングで、私もそうであるが団塊世代の共感を得た音楽であった。内容はYouTubeで聞いてもらいたいが、飲酒運転で事故死したオラがこわい神様からお仕置きを受ける、そんな歌詞によるストーリーである。演奏には音を早回しさせたり効果音を入れるといった技術を取り入れ、まさに革新的なパロディミュージックであった。その発想の斬新さ、新しさの衝撃は「サプライズ」どころではなかった。そして、メンバー3人が学生ということから、わずか数年先の1968年には解散する。

おらは死んじまっただ おらは死んじまっただ
おらは死んじまっただ 天国に行っただ
長い階段を 雲の階段を おらは登っただ ふらふらと
おらはヨタヨタと 登り続けただ やっと天国の門についただ
天国よいとこ一度はおいで 酒はうまいし ねえちゃんはきれいだ
おらが死んだのは 酔っぱらい運転で (効果音)

おらは死んじまっただ おらは死んじまっただ
おらは死んじまっただ 天国に行っただ
だけど天国にゃ こわい神様が 酒を取り上げて いつもどなるんだ
「なーおまえ 天国ちゅうとこは 
        そんな甘いもんやおまへんや もっとまじめにやれ」
天国よいとこ一度はおいで 酒はうまいし ねえちゃんはきれいだ
毎日酒を おらは飲みつづけ 神様の事を おらはわすれただ
「なーおまえ 
      まだそんな事ばかりやってんのでっか ほなら出てゆけ」

そんなわけで おらは追い出され 雲の階段を 降りて行っただ
長い階段を おらは降りただ ちょっとふみはずして (効果音)
おらの目がさめた 畑のど真ん中
おらは生きかえっただ おらは生きかえっただ (効果音)

帰って来たヨッパライ/ザ・フォーク・クルセダース
 作詞・ザ・フォーク・パロディ・ギャング 作曲・加藤和彦

この時代、高度経済成長期という急速な近代化、工業化によって公害が象徴するような社会問題が多発し、更には米国によるベトナム戦争が激化し、政治に対し学生だけでなく、ミュージシャンを始め、作家も、知識人も、勿論多くの市民が政治や社会に向かい合っていた時代であった。インディーズという言葉が無かった時代、ザ・フォーク・クルセダーズや、少し前に亡くなった忌野清志郎さん、あるいは「ガンバラないけどいいでしょう」を最後に表舞台からは去った吉田拓郎も同様に、政治に、社会に向かい合い言葉を発していた時代であった。

報道によると、加藤和彦さんの死は自殺の可能性が高いと言う。そして、確かなことではないが、複数の人宛に遺書が書かれ、遺書には仕事への悩みがつづられ、「音楽でやることがなくなった」と。30年以上、一緒に音楽制作に携わってきた友人は「自分の思うようなものができないと悩んでいた。若い時には当たり前のようにできたことができなくなり、精神的に追いつめられていった」と言う。
亡くなった作詞家阿久悠さんは、晩年「昭和とともに終わったのは歌謡曲ではなく、実は、人間の心ではないかと気がついた」と語り、「心が無いとわかってしまうと、とても恐くて、新しいモラルや生き方を歌い上げることはできない」と歌づくりを断念した。歌の本質は応援歌である。応援する相手の心が見えない以上歌づくりは困難である。

作家五木寛之は鬱状態の自分に対し、『人は「関係ない」では生きられない』とし、「あんがと(ありがとう)ノート」を書き、鬱状態から脱したと著書「人間の関係」(ポプラ社刊)で書いている。人間の成長は4つの段階で変わっていく。幼少期から少年期には「おどろくこと」で成長し、やがて「よろこぶ」時代を過ごす。そして、ある時期から「かなしむ」ことの大切さに気づき、しめくくりは「ありがとう」ではないかと。そして、鬱の時代はこれから先も続くとも。
自殺という心の闇は、誰もうかがい知ることはできない。加藤和彦さんには、「ありがとう」を言い続け、しめくくりをしてもらいたかった。でも、天国の神様へ、どうぞ追い返さないでください。加藤和彦さん、ありがとう。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:48│Comments(0)新市場創造
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