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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2009年06月17日

自己解決型ライフスタイルへ 

ヒット商品応援団日記No3756(毎週2回更新)  2009.6.17.

先日、産官学の成果発表の場として「大学は美味しい!!」をテーマとした催事が新宿高島屋で行われていたので覗いてみた。世界で初めて養殖クロマグロを成功させデパ地下に卸すまでになった「近大マグロ」を筆頭に催事出店していたが、一昔前のバーゲンセール、つかみ取りセールの如き賑わいであった。学生達の発想を見てみたかった私であるが、来場者の99%は70代の女性達でその安さに殺到していた。特に、「近大マグロ」のイートインには何重にも順番を並んで待っていたり、宮崎大学が販売している宮崎牛などは午前中に完売で冷凍ケースには商品がまったくない。11階の催事場から1階ごとに降りてきたが、各フロアは閑散とし、顧客より売り場スタッフの人数の方が多い状態であった。まさに、今日の百貨店が置かれている姿を明確に映し出していた。勿論今回の催事は、学生が研究として作ったわけあり商品として、その安さと安心が集客したことは言うまでもない。

少し前に、ディズニーリゾートの集客数が減少に転じた時、本格的な消費氷河期に入ったと理解すべきであると書いた。衣食を削っても、子供にとって思い出となる遊び、特にディズニーリゾート観光を実現してあげたいという親心。そうした親心すら果たせなくなる時を、私は氷河期と呼んだ訳である。
ところで、今年のGWの結果について毎日新聞などがその傾向を分析している。結論から言うと、大渋滞を起こした高速道料金の「千円効果」は、近場の観光地は素通りで、しかも遠出したにも関わらず日帰りが多く、予測に反した経済効果であったと。当たり前と言えばその通りで、列車やフェリーより車の方が安く上がるという一点において振り替え行動したということだ。景気浮揚という観光地の経済貢献等あり得よう筈がない。今、投機マネーが東京の株式市場のみならず原油市場にも及び始め、じわじわとガソリン価格が上がり始めている。列車を使う費用と較べ、それほど大きな差がなくなるようであれば、勿論元に戻るだけである。

ところで遊び支出の傾向も消費の在り方を映し出すが、もう一つの指標が健康と美容への支出である。病気への支出はいわば生きる上での必需消費であるが、健康と美容は豊かな時代の選択消費の象徴としてある。
ヒアルロン酸もコラーゲンも売れていない訳ではない。ザ・ウインザーホテル洞爺や志摩観光ホテルのスパなどは今なお若い女性の人気があると聞いてはいる。しかし、4〜5年前に起きたサプリメント依存症が社会問題化したり、ヒトリッチというキーワードが盛んに使われていた頃と比較し、今はどうであろうか。あるいは、ひと頃ブームとなっていたプチ整形の韓国旅行、南のリゾート地でのエステ三昧、こうしたメニューが話題に上ることはない。つまり、健康も、美容も、過剰であったことを削ぎ落とし、普通に戻ったということだ。

少し前の日経MJに「フットパス」の記事が載っていた。森や田園、古い街並を散策する英国発祥のリフレッシュ法で愛好家が増えているとある。数年前にベストセラーとなった「えんぴつで奥の細道」の、その書を担当された大迫閑歩さんの言葉を思い出した。”紀行文を読む行為が闊歩することだとしたら、書くとは路傍の花を見ながら道草を食うようなもの”という言葉である。大迫閑歩さん風にいうなら、フットパスは心と身体の道草、お金のかからない健康法であろう。
あるいは、私の友人もそうであるが、日常の健康法として、通勤時一駅分を歩くビジネスマンが増加しており、「一駅族」と呼んでいる。10数年前にシニアのハイキングブームからウオーキングへ、最近ではフットパスや一駅族まで、自分で歩く健康法はお金をかけない方法である。その根底にある価値観は、激変する環境への自己防衛、自活、自助、自己解決へと向かっているということだ。

こうした傾向は既に自分で作る内食化を含め、セルフ式のGS、ホームエステ、各種ワークショップ人気、あるいはインテリア家具のIKEAもこうした傾向の中にある。そして、いつしか節約という入り口から、自己解決それ自体を楽しむことへと変化していく。数ヶ月前に、「新しい清貧の思想」が生まれると書いたことがあったが、生活者はセルフ市場を通じ、素人からセミプロへ、生活の達人へと変貌していくであろう。マスメディア、特に遅れているTVメディアはクイズのバラエティ番組から、達人のバラエティ番組へとシフトしていくと思う。
達人とは言葉を変えて言うと、プロということである。更に言うと、お金をかけずに成果を残すのがプロである。当分の間、そうした節約といったところにプロの技の焦点が当てられることになる。そうした意味で、巣ごもり消費の時代とは、生活を見直す自己楽習の時代であり、自己解決型ライフスタイルの時代ということだ。次回は恒例となっている日経MJによる2009年上期ヒット商品番付が発表されたので、私なりにまた読み解いてみたい。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:43│Comments(0)新市場創造
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