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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2009年03月25日

イチローと一郎

ヒット商品応援団日記No352(毎週2回更新)  2009.3.25.

昨日は午後出かけていたのでWBCの勝利の瞬間、イチローの決勝打を見ることができなかった。ただ街に行き交う人達は一様に携帯を観ながら一喜一憂していて、WBCというイベントへの関心の高さを感じた。スポーツは筋書きのないドラマであると言われるが、まさにその通りのドラマを見せてくれた。前回、気分消費にどのように向かい合うかで、「夢を形にする試みこそ、気分消費の時代の最もふさわしいヒット商品の在り方であろう」と書いたが、今回のWBCの連覇は多くの人にとって心に効くヒット商品であったと思う。
勝利後のインタビューで、イチローは「苦しく、つらく、そしてこころが痛んだ。でも笑顔を届けられて最高」と答えていた。その顔は野球が好きで好きでたまらない「野球小僧」そのものであった。夢中になって日が暮れるまでボールを追いかけていた少年の頃を思い起こさせてくれた。そして、「神様が降りてきて」あのヒットを打たせてくれたと語っていたが、野球小僧の神様が打たせてくれたのだと思う。

昨晩、もう一人の一郎が記者会見を行っていた。周知の公設第一秘書の政治資金規制法違反の起訴を受けての会見であるが、なんでもあり、魑魅魍魎の政界を40年生き抜いてきたあの強面の小沢一郎が涙目であった。その前に行われた検察による起訴内容についても詳細は相変わらず分からないままであり、何故この時期に逮捕、強制捜査したのか、これは国策捜査ではないかという疑問が残っての会見であった。小沢一郎VS検察、あるいは民主党VS自公政権という図式で語られてばかりいるが、そこからは知りたい真偽のほどはわからないままである。
秘書逮捕から3週間、「関係者によると」という不確かな情報、膨大なマスメディア報道によって、「小沢=ダーティイメージ」が形成されてきたことだけは事実であろう。しかし、これほど素直に本音をさらけ出した政治家も珍しい。涙目の小沢一郎、弱々しく見えた小沢一郎について、もう一人のイチローの「苦しく、つらく、そしてこころが痛んだ。」というイチローの顔が何か重なって見えた。

WBCのイチローにとって、自らを見てもらう一番はフアン、日本国民に対してであった。第一ラウンドの最終戦韓国との試合に負け、日本を後にする時、記者の質問に「直接、日本のフアンに自分のプレーを見てもらう最後の試合であり、悔しい」と語っていた。多くのスポーツ紙はイチローのふがいなさを書いていたが、誰のためにプレーするのか、誰に見てもらいたいのか、極めて明快であった。
もう一人の一郎も、記者の民主党代表を続投していく理由は何かという質問に、「それは国民の判断にゆだねたい」と明快に答えていた。イチローの方は決勝打と2連覇という笑顔で終わったが、一方の一郎はこれからも裁判という長い「苦しく、つらく、そしてこころが痛む」時間を迎え、笑顔で終えることができるかどうか分からない。
プロ野球選手とプロ政治家とを単純に一緒にしてはならないと思うが、1日に二人のイチローの姿が奇妙に重なって見えた。

二人のイチローに共通していることは、誰に向かって答えているか、ある意味顧客は誰かと言うことに素直であったことであろう。記者でも、検察でもなく、相対するチーム、与党政権でもなく、テレビ画面の向こう側にいる不特定多数の国民であろう。もし私たちが学ぶとすれば、顧客を信じない限り、顧客もまた信じてくれないという原則である。
イチローがチャンスの時に打てず韓国に負けたとき、ここぞとばかりにスポーツ紙はイチローのふがいなさを記事にした。一郎についても、「関係者によると」という不確かな情報を3週間にわたって流し続けた大手新聞社、TV局。ある意味過剰な商業主義、過剰な視聴率主義、こうした過剰さを売るしかない既存メディアの情報に、最早右往左往しない国民へと成熟しつつあると思う。過剰情報時代の体験学習を経た、大人の生活者がいるということだ。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 14:52│Comments(0)新市場創造
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