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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2007年03月18日

増殖する妖怪     

ヒット商品応援団日記No149(毎週2回更新)  2007.3.18.

3月16日ライブドア事件に対する地裁の判決が堀江貴文被告に下りた。また、その数日前にライブドア以上の巨額の水増し粉飾決算をした日興コーディアルグループは上場廃止にはならず5億円の課徴金だけで済むとの報道がなされた。誰もがその違いは何か、東京証券取引所の判断する物差しは何か、疑問に思っていると思う。株式公開・上場とは英語でゴーイングパブリック、文字通り「公」のルールに従うことを意味する。資本主義の成長は常に変化する「公」を追求することであった。常に変化するとは、分かりやすく言えば「グレーゾーン」の歴史でもあった。日本においてはグローバル化という未知の世界を2000年前後に規制緩和という形で取り入れてきた。建築においては高層化と共に申請審査は官から民へと移管し、その狭間で耐震偽装事件も生まれた。同じように会計基準も時価会計基準という2つの会計がなされるようになった。その延長線上にライブドア事件もあったと私は考えている。

つまり、ここ10数年は「グレーゾーン」が現実化し、そこにビジネスチャンスを見いだす若い世代も出て来た。その代表が堀江貴文被告であろう。丁度、一年前私はライブドア事件に対し、情報の罠というタイトルでブログを書いた。詳しくはここでは書かないが、グレーゾーン化した「公」とは何かを再確認しなければならないと思う。現政府がよく使う言葉に「官」から「民」へ、ということばがあるが、私は「官」から「公」へ、「民」から「公」へ、がこれから目指すべき社会の指針であると考えている。つまり、「官」も「民」も「公」という世界を目指すべきであるとの考えである。Web2.0もそうした「公」を目指すネット世界であるが、一つのモデルとして近江商人の商売の心得である「三方よし」も分かりやすい指針の一つであると私は思っている。売り手よし、買い手よし、世間よし、の三方よしである。以前このテーマで書いた事があるので参照されたらと思う。(http://remodelnet.cocolog-nifty.com/remodelnet/2006/07/index.html

ところで株式をはじめとした金融商品からごく日常使う商品に至まで、心理商品であることは何回か書いて来たが、そうしたこころを動かすもの、それは情報である。ある意味全てが情報商品になった時代に生きている。一時期ICチップを産業の米と呼んでいた時代があったが、情報はいまや産業ばかりか生活の米となった。国勢調査の推計によれば、2007年度は「夫婦と子供」といった普通世帯を単身世帯が抜き、DINKSと呼んでいる夫婦世帯も伸長し、総世帯数が5000万を超える個人化社会となる。悪く言えば、個人化とは「バラバラ社会」のことであり、個人をつなぐ情報は極めて重要なものとなる。

いやなことばであるが盲点となっている犯罪市場が増加しているように思える。最近の事例ではホームレスに対する医療扶助を悪用した病院犯罪には驚く。必要としない検査などをしたことにして、更には病院間でホームレスをたらい回しにして儲けるといった手口である。誰も社会のセーフティネットを悪用するとは思ってはいない。医療扶助はまさに「公」として重要で大切なものである。犯罪者にとっては、「官」が持つ年間の医療扶助費用は1兆3000億円という莫大なもので、書類という情報操作だけで自動的に収入が増える見えざる世界での犯罪である。
私はオンラインゲームをやらないので確かな実感はないが、オンラインゲームで使われる通貨の売買(RMTリアルマネートレード)は既に日本国内市場では150億円、利用者は7万人になっており、RMTを専門とする仲介業者も約80社あると言われている。(欧米や韓国では1000億円規模の市場となっている)ネット上で対戦し、勝つと通貨を手に入れる事ができるのだが、ネット上でもルールのない取引が横行していると言われている。(http://www5.plala.or.jp/SQR/ff11/archives/special/rmt.html)Web2.0という「公」の世界とは正反対の「公」の世界である。

全てが情報による「見えざる世界」の中の出来事である。今、悪意ある意図、恣意的な意図が情報という衣をまとった妖怪として、現実世界・仮想世界のあらゆるところで駆け巡っている。グレーゾーン化した「公」とは極まるところ他者に感謝することから始まる倫理である、と私は考えている。社会学でいうと、道徳と倫理は異なっていて、「外」に対するルールやマナーといったことは道徳であり、法や条例として制定される。しかし、常に未知なるグレーゾーンが生まれてくる。法や条例は常に後を追いかけるだけである。倫理とは「内」なるこころの物差しである。しかし、こころの物差しは時代と共に変化するのだが、「今」という時代においては変化というより混乱していると言った方が正確であろう。誰もが情報を使いビジネスや生活をしている。妖怪という衣を纏うか否か、自身にとっての「公」は一人ひとりのこころの中で問われている。(続く)

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