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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2006年07月30日

楽習コンセプト

 ヒット商品応援団日記No85(毎週2回更新)  2006.7.30.

前回欽ちゃん球団の活動を借りて「コミュニティ事業のあり方」についてふれてみた。スポーツというエンターテイメントを借りた街おこし、地域起こしと共に、各地域盛んなのが動物園、水族館といった自然をテーマにしたテーマパークのリニューアルである。少し前に夕張市との比較で取り上げた「旭山動物園」の再生、そのコンセプトとなった「行動展示」という考え方が多くの動物園、水族館で取り入れられてきた。例えば、シロクマの行動展示では、最大の好物であるアザラシ(=観客)がさもいるかのような仕組み、見せ方が構造上作られている。アザラシ(=観客)をめがけてシロクマが飛びかかる、観客はその野生にびっくりするといった、野生のもつ行動を興味深く展示する考え方で全ての動物が展示されている。これは私たちが知らなかった野生の一面、不思議さを見せてくれている。再生に取り組む「バカもの」と共に、このコンセプトが倒産寸前の旭山動物園を救ったのである。
都市化によって失ってしまった最大のものは自然である。切り身なっている魚しか知らない子供たち。図鑑の中でしか見たことのない動物。コンクリートの割れ目にけなげに出てきた「根性だいこん」が全国で話題になる時代である。都市、特に東京に住んでいると自然が自然である気象という情報すらあまり気にかけることもなく過ごすことが可能である。交通網や地下街が発達し雨にぬれることなく目的地まで行くことができる。こうした便利さに慣れてしまっているのが都市生活者である。そして、唯一自然を感じるのが「四季」であるが、そんな季節の移ろいを感じる時間の余裕さえない。身の回りにいる動物と言えば、ペットだけである。そのペットですら人気犬の過剰交配により障害犬が生まれている時代である。ある意味でコンクリートに覆われたことによるヒートアイランド現象や突然の集中豪雨による都市水害に唯一の自然を感じている。
こうした時代にあって、エコロジーや自然世界を構えて提案したり、理屈で理解を深めようとしても、残念ながらコミュニケーションとしては成立しない。勿論、エコロジー理解者は市場として存在し、日本は世界においてエコ先進国であると思う。しかし、都市においては体験、体感する術が圧倒的にないという現実がある。こうした体験、体感するマーケティングにおいて旭山動物園が教えてくれたことは、理屈としての学習ではなく、子供たちの興味世界を入り口とした<体験楽習>こそが重要なポイントとなる。動物園ばかりか、地元市民、商店街の反対を押し切ってオープンさせた金沢21世紀美術館も同様である。現代アートをテーマとした美術館で、子供たちには理解できないというのが反対論者の意見であった。しかし、見事に悲観論者を裏切り、子供たちの人気のスポットとなった。子供たちの興味、遊び場としての美術館、というコンセプトの勝利であった。まるで歩道から通り抜けられるような美術館との導線、見るものと見られるものとの逆転がはかられた空間、声を上げてもよい自由な環境。従来の静かに構えて見るといった美術館とは大きく異なる。子供たちにとって、アートは遊び場であり、興味のおもむくままに感じ取れる、まさに学習ではなく、<感性楽習>の場となっている。
あえてこうした事例を出したのも、動物園や美術館の再生を別な視点から見ることによって、他の市場への大きな着眼になるからである。どんなところに興味が集まっているか、関心はどこに注がれているか、好きな世界はなにか、そうしたことを「入り口」に、ちょっと触れてみる、声を上げてみる、肌で感じてみる、そうした体験による楽習こそがあらゆるマーケティングに必要となっていることが分かってくる。「冷凍みかん」にしろ、「天マス」にしろ、コンセプト着眼は「思い出消費」であり、遡る時間の長短の違いがあるだけである。冷凍みかんは「学校給食」という思い出であり、天マスはそのレトロなパッケージ表現となっている。若い子たちの興味がどこにあるのかは、明確に押さえられている。しかし、ヒット商品となるにはその継続にある。そのためにはモノとしての商品魅力だけではなく、その商品を使うことそのものに新鮮さを感じ取れるような方法論が必要なのだ。つまり、××××法、○○○○式、△△△△プログラムといった方法論こそが売れるのである。例えば、冷凍みかんであれば「学校給食式」というブランドのなかの1アイテムにするのも良いかもしれない。勿論、「学校給食式」というブランドコンセプトにするのであれば、育ち盛りの子供たちにとって一番必要な「栄養バランス」がメニューコンセプトとなる。旭山動物園のコンセプトは「行動展示」であるが、私のことばでいうと、「野生式」とか、「生命式」といったコンセプト表現となる。担当される商品やサービスに、例えば方法論として○○○○式という視点で見直していくと必ず異なる世界が見えてくると思う。(続く)

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