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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2008年12月24日

巣ごもり消費の意味

ヒット商品応援団日記No328(毎週2回更新)  2008.12.24.

恒例となっている年末の記者会見でトヨタ自動車の今期決算予測は1500億の赤字決算になると発表された。米国におけるリーマンショックとは内容が異なるが、創業以来初めての赤字決算、世界最強企業トヨタまでもが、と多くの人にショックを与えたとマスメディアは報道している。自動車産業を始め、家電や機械といった輸出企業の動向に焦点が当てられているが、こうした悲観的なことを煽らないと視聴率や発行部数を稼げないのがマスコミの常だ。危機にあるというのであれば、半年以上前から、日本は次に何で食べていくのか、そのグランドデザインすらないこと自体が危機であると私は指摘してきた。

生活者はもっと前から敏感に反応してきている。ある意味動物的な感、時代の気配を消費生活という形で表現してきている。昨年ベストセラーとなった「ホームレス中学生」(田村祐著)の舞台は、あの1990年代初頭のバブル崩壊後である。田村少年は学校から帰るとリストラされた父親からいきなり「解散」と言われホームレス生活に入る訳だが、この時代に生きるとは常に「いきなり」であると多くの人は感じている。その延長線上ではないが、島田洋七が書いた「佐賀のがばいばあちゃん」のように、物質的な貧しさを超えたユーモア溢れたたくましさ、笑顔を持っているのが明治の生活者だ。いざなぎ景気を超えたと言われた2005年に封切られた「Always三丁目の夕日」のように、携帯もPCもTVもなかったのにどうしてあんなに楽しかったのだろう、と感じる人は多い。三丁目に集まって、家族っていいな、人っていいな、日本っていいなと思える「何か」を失わない限り、「次」はある。だから、悲観も楽観もしないのが生活者だ。

日経MJが今年の冬の消費傾向を「つもり消費」というキーワードで表現している。例えば、遊園地に行ったつもりでPA内の観覧車で家族が楽しむといったように、○○したつもりで、△△の代わりに、□□の気分で、といった一種の節約アイディア消費である。今、おせち料理が人気なのも、海外旅行へ行ったつもり、国内旅行に行ったつもりで、チョット豪華に家で正月は過ごそうという訳だ。JTBやJRが年末年始の旅動向を発表しているが、海外から国内へ、更に家の中へと消費移動が今年の夏と同じように起こる。結果、家の中での商品には昨年のゆたんぽのような小さなヒット商品が生まれるであろう。そうした消費動向を「巣ごもり消費」と名付けた人がいるが、まだ冬眠には入ってはいない。

ところで、今年の年末の忘年会事情を見てみると、低迷するファミレスでのサラリーマンによる忘年会が増えている。また、従来だと学生専用であった飲み放題居酒屋がサラリーマンの忘年会の場に変わってきていると聞く。夏頃のブログにも書いたが、明確に消費移動が起こっているということだ。
面白いことに、今週号の週刊ダイヤモンド「2009総予測 次に何が起きる?」の編集構成は○○VS××といった具合に異なる主張・考え方を比較した内容だ。例えば、日本経済であればプラス成長(0.2%)VSマイナス成長(1.8%)、株価であれば強気(1万3000円)VS弱気(5000円台)といった具合である。これほど幅があるということは予測はしているが、予測できない現実があるということだ。

多くの生活者にとって「安定した生活」が第一である。しかし、今年の春以降巣ごもり状態であったが、10月以降は巣の中に否応なく風雨が襲う。当然自己防衛するが、それでもかなわない時代を迎えているというのが生活実感だと思う。今日はクリスマスイブであるが、数年前までは若いカップルがティファニーを覗く姿が絵になっていたが、そんな気配を感じることのない静かなイブになる。ボージョレヌーボーの時にも書いたが、お祭り騒ぎは当分の間ないということだ。

風雨に耐えつつも必要な消費は行う。どんな消費か、それは低価格もあるが慣れ親しんだ、あるいは評判の良い店や商品というごくごく当たり前の選択となる。そして、それらは全て今までの継続した時間の結果としてある。その時だけのサプライズとか、パフォーマンスといった表層をなぞるような商品や売り方はすぐに見破られるか、もしくは却って不信が生まれる。市場・顧客は冬眠にはまだ入ってはいない。巣ごもりしながら、空を見て雨はどうかと判断し、傘をもって出かけるかどうか行動する、そんな消費移動の時代である。これから先、今以上に激しい風雨にさらされることになるが、時に小さな晴れ間もある。ハレとケという言い方をすれば、巣に籠るケの日が多くなるが、ハレの日にはそれなりの消費となる。特に、ハレの日における記念日市場は注視することだ。そうした巣から出たり入ったり移動する消費、特に「つもり消費」を把握するには目の前にいる顧客を見続けることしかない。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:45│Comments(0)新市場創造
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