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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2008年11月19日

ブランドバブルの崩壊?

ヒット商品応援団日記No318(毎週2回更新)  2008.11.19.

今バブルという言葉を聞かないことがないほどあらゆるメディアに氾濫している。日本語に直せば、過剰という言葉があてはまるが、「何」をもって過剰であるか、今ひとつ明確な答えが聞こえてこない。私の専門テーマは生活者のライフスタイル研究をベースにした消費の分析と市場創造の着眼点を見出すことにある。私は消費の現実をまず大きく2つに分けて考えていくことにしている。それは「必需消費」と「選択消費」で、前者は食費や住居費といった生きていくために必要な支出である。後者は教育費や娯楽費といったある意味無くてもかまわない支出である。日本や韓国の場合は全支出に占める教育費の割合が高く未来投資として必需消費に入るかも分からないが、「選択消費」はいわゆる「欲しいもの」消費と呼んだ方が分かりやすい。

この2つの消費は、確か1989年のバブル絶頂期に「必需消費」の支出を「選択消費」が上回り、豊かな生活時代を迎えたと言われてきた。寒さをしのぐ被服ではなく、デザインという自己表現の一つとして、「欲しいもの」消費があった。そのシンボリックな商品がインポートブランドであった。当時流行ったキーワードが、「一点豪華主義」あるいは「ひととき貴族」として、一億総中流層と呼ばれたマス市場に広がった。しかし、1990年代初頭のバブル崩壊後は、生まれたときから豊かであったポスト団塊世代の女性達がブランド市場の中心となった。そして、今回の米国発の金融バブルの崩壊、世界的な不況の波が押し寄せてきた。

今一番生活者市場が注目・関心を寄せているのが「価格」である。それは高額ブランドも同じで、今やアウトレットや質流れ催事で購入、もしくはネット上で一番安いブランド商品を購入することが当たり前となった。希少価値の高いヴィンテージ物も値下がりしていると聞く。ところで希少価値として一番高いものはと言えば、一点しかない絵画を始めとした美術品であろう。こうした美術品も全体として値下がりしていると聞く。従来の価格を構成してきた「資産価値」が崩壊しているということだ。価値はそれを求める人達の競争によって決まる。その競争とは何であったのか。資産価値なのか、美固有の価値なのか。本来の美という固有価値競争が生まれないほど、市場というパイが小さくなったということだ。そこで東京の東武百貨店池袋本店では絵画ではなく、タツノコプロと提携したアニメの版画を2〜4万円で販売する試みまで始まっている。

つまりブランド価値とは何か、その根本が今問われているということだ。前回「プロの逆襲」で書いたのも、プロは「見えないところの技」を持ち、それが大きな違いという価値となることを説明した。ブランド価値はそうしたプロの手によって、時代変化(顧客)という風によって磨かれ、それら変化は堆積し、今へと至る。そして、どんなに変化しようとも変わらない「何か」が継承される。継続し続ける顧客価値といっても良い。つまり、それほどに深い文化価値としてあるのがブランドだ。これがブランドの原点である。

ブランドも過剰というバブル崩壊の洗礼を受けている、いやこれから先も受けるであろうということだ。今月20日に解禁されるボージョレヌーボーの輸入は前年比20%減、ピーク時の2004年と比較するとほぼ半減である。輸入減は過剰在庫があることもあるが、お祭り騒ぎは終わったということだ。本当のワイン好きが、今年のワインはどうかと楽しむ、本来のマーケットに戻ったということである。悲観も楽観もない。やっと本来のブランドマーケットに戻ったと考えれば良いのだ。東洋思想に「外は広く、内は深い」という考えがある。私流に解釈すると、自分(商品)を見つめ直す外(顧客)の眼と、自分(商品)を失わないための内(アイデンティティ)なる心が共に必要である、と。ブランドばかりか、身の回りのある多くの過剰・バブルを見据える一つの視座ではないかと思う。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:45│Comments(0)新市場創造
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