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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2007年02月14日

知の退行現象 

ヒット商品応援団日記No140(毎週2回更新)  2007.2.14.

少子化社会を反映し、今や大学全入時代となった。大学は生き残りをかけて合併を含めた再編が始まっている。あるいは教育のサービス産業化、学生という「顧客」を目指して、様々な入学促進策が行われている。学生寮にはカラオケ設備が用意され、就職期にはメイクアップ講座までが開かれる。学生の意欲を喚起するために、各種の資格取得に対して学費免除が用意される。あるいは、面接と小論文で大学入試が行われるため、大学の授業についていけない学力低下学生には、高校程度の基礎学力をつけさせるための補修授業までが行われている。そうした大学生活においても約11%が中途退学しており、卒業しても3年未満の離職率は約30%と言われている。ここでいたれりつくせりの教育を論じはしないが、確実に学力というより知力が低下してきている。こうした知力(体力を含め)低下の主要な原因がテレビゲームにあると指摘する現場教育者(「百マス計算」「読み書き計算」で注目された尾道市立土堂小学校長の陰山英男氏)も存在している。確かに、1980年代後半にあのドラゴンクエストは400万本も売れ、ほとんどの小中学生のいる家庭にあった。この時の子供達が今高校や大学生の両親となっている。その任天堂が昨年ヒット商品DSを生み出したのは皮肉なものである。

ところで江戸時代はどうであったかというと、おそらく世界NO1の知力水準にあったと思う。義務教育がなかった時代、庶民は「指南所」(上方では寺子屋)に通い、その就学率は70〜80%と言われている。当時の英国の就学率が20〜30%と言われているので、いかに高かったか分かるであろう。ひらがなから始まり、数字や地名といった実用的な読み書きの他に、礼儀作法や道徳を教えていた。その道徳であるが、儒学者に編集させた「六諭(りくゆ)」という教科書がある。
①親孝行をしなさい
②年上のものを敬いなさい
③隣近所と仲良くしなさい
④子供のお手本となるような生き方をしなさい
⑤仕事はしっかりしなさい
⑥間違ったことをするな
先生になったのは、お坊さん、浪人、神主など教養のある人達で、授業料はあってないようなもので、八百屋の子供は授業料代わりに店の野菜などを持ってきたそうである。江戸後期、市内には約1500もの指南所があった。一方、武士階級はどうかというと、昌平坂学問所などは極めて厳しく4〜9級のクラスがあり、進級試験で次々とふるい落とされていき、最後まで残るのは10%に満たないと言われている。

昨年暮れ、2006年のヒット商品の着眼点「ヒットの読み方」の中で、私はその裏側に「知」があると書いた。任天堂DS、mixi、ダ・ヴィンチ・コード、TSUBAKI、といったところの商品であるが、「知」の欲求商品であり、知の退行現象をある意味で取り戻す商品である。ベストセラーになった養老孟司さんの「バカの壁」から始まり、最近では脳科学者の茂木健一郎さんに注目が集まっているのも、「こころ」という不思議な世界を解き明かしたいという欲求によるものだ。子供の知的社会体験商品という言い方であればキッザニアも該当する。私が好きな沖縄でも、方言を学ぶために「おばあ」を先生にした小さな場が作られつつあると聞いている。東京では散歩がブームであるが、ブームを超えてテーマを持った散歩クラブが無数存在し、東京再発見という小さな知の旅となっている。大きなマーケットとなるであろう知育玩具市場には異業種企業が一斉に参入し始めている。2005年にデジタルハリウッド大学がネット上でスタートしているが、2007年4月にはソフトバンクがサイバー大学をスタートさせる。昨年、「品格」が流行語大賞となったが、「品」は知性のなせるものである。10年前から言われてきた知価社会はやっと本格化し始めた。知的な商品・サービス、知性を感じさせる美的世界は、これからのヒット商品の基本原則となる。つまり、「知」の物語消費のスタートである。(続く)

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