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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2008年10月19日

「わけあり」競争

ヒット商品応援団日記No309(毎週2回更新)  2008.10.19.

この半年ほどブログに書いてきた流通、特に「価格」を軸にした再編について、まとめのような記事が今週の週刊ダイヤモンドに掲載されている。「流通大激変!選ばれる店の秘密」というタイトルの特集記事である。エブリデーロープライスというキーワードのOKストアを始め、銀座に旗艦店をオープンさせたH&Mやユニクロ、あるいは無印良品。JR東日本の「エキナカ」やコンビニ、更にはアウトレットに至までほとんど私がこの半年間ブログで取り上げてきたテーマである。そして、その裏側にある百貨店の衰退についてもである。

流通は生活者のライフスタイルを映し出しており、メーカーも流通も等しく顧客の生活価値観が「今」どこにあり、「今後」どう変わっていくのかを考え、行動に移る。米国のサブプライムローン問題に端を発した金融危機、結果としての世界中の株価の急落、そして乱高下。市場は金融だけでなく、生活者も等しく心理化されており、不安が消費を縮小させている。心理を左右させるもののほとんどは情報によるものである。それは疑心暗鬼の金融担当者も、生活者も同じである。

今、消費市場において繰り広げられている競争は「価格」を軸に、その理由、どんな訳(わけ)なのか、そのリアリティ競争となっている。数年前までは、例えば安いにぎり寿司を出せる理由は大量仕入れによるコストダウンによる「わけあり」であった。以降、親会社が鮮魚仲卸だからといった「わけあり」が出てくる。更には実際に漁に出る水産会社が親会社といった「わけあり」へと進化してきた。あるいは昼に出すランチのすき焼きには夜に出すA5ランクの肉の切り落とし部分を使っているから安い、といった「わけあり」まで、多種多様な「わけあり」競争となっている。

既に食品スーパーのOKストアやザ・プライスでも書いたが、従来のJAや業界による基準外・規格外という「わけあり」商品は、他の業態においても競争の中心となっている。通販における「たらこの切れ子」や「ホタテ缶」などはその良き例であろう。食品スーパーでもそうであるが、H&Mやユニクロがそうであるように、ある意味問屋などを通さない「中抜き」ビジネスが主流になってきたということだ。顧客に対し、より「好み」に応え、「わけあって」より安く、提供するということだ。そのためにも、今以上にダイレクトに顧客に向き合わなければならない。

今、「わけあり」競争の中で最大課題となっているのが、「不安解決」のための「わけあり」である。勿論、不安の根底には、年金や医療、福祉といったことへの「不確かさ」や働く場や収入更には株式市場の急落と先行き混沌といった「不確かさ」がある。これらは根本としては政治の問題であるが、地域医療などでは小児科の存続に端を発した兵庫の柏原病院のように、医師、住民、地元メディアが相互にコミュニケーションをはかり、医師不足といった不安解決に向かっているところもある。「何故医師不足なのか」という「わけ」を医師と住民が相互に認識し合うことによって、根本解決は難しくとも、改善あるいは維持ぐらいはやりえるという良き事例であろう。

情報の時代の特徴であるが、「不確かさ」に耐えることができないのが現代人であり、「何故なのか」を繰り返すこととなる。つまり、「不確かさ」は不安となって「うわさ」へと向かう場合もあるが、繰り返される「問い」によって「わけあり」も当然進化していくということである。多くの経営者やビジネスマンとの対話で、私は「何故」を3回繰り返してみては、と問題点発見の方法について話をしている。多くの場合、3回繰り返せば、コトの本質にたどり着くということだ。
消費の今は、生活者が「何故」を問い始めているということだ。何故価格が高いのか、生半可な「付加価値」など一瞬にして見破られてしまう時代である。同じように何故安いのか、大量仕入れ程度では「わけあり」にはならないという時代だ。衰退する百貨店に代表される旧来業態や旧来の手法を採り続けるブランドは、次の「確かなわけ」を創ることが求められている。そして、一番重要なことは、「何故」と問うことによって、顧客自身が変わるということである。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:52│Comments(0)新市場創造
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