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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2020年09月20日

未来を知る

ヒット商品応援団日記No771(毎週更新) 2020.9.20

未来を知る


ことごとく予測が外れる事実にマスメディア、特にTVメディアは謝罪と反省を繰り返している。先日偶然であったが、TBSの情報番組「Nスタ」を見る機会があった番組でウイークデーの午後夕方の番組である。その中でメインアナウンサーである井上貴博が視聴者に対し、これまでの放送内容に間違いがあったことに対し反省のコメントを伝えていた。新型コロナウイルスについての短いコメントであったが、「2週間後には死者が4万人に及ぶ。あるいはGoToトラベルによってウイルスが全国に拡散する。といった情報を伝えてきたが、間違いであった」とした反省の弁であった。「2週間後には死者が4万人に及ぶ」は周知のクラスター班であった元北海度大学西浦教授による数理モデルに基づくものだが、その後西浦氏は訂正のコメントを寄せているが、こうしたことは報道されてこなかった。また、GoToトラベルによるウイルス拡散説についてもTVメディアや感染症専門家はこぞってその悲惨な結果を予測していた。結果どうであったかであるが、Go To トラベルを利用した宿泊者が8月末までに1339万人に達したと発表されている。そして、明らかに新型コロナウイルスによるクラスター感染が確認された事例は10件に満たないものであった。Nスタはこうした「事実」を背景にした反省の弁であったが、まだまだ少なくなってはいるが、こうした事実を避けて構成する番組もあるようだ。感染が広がった3月には、パチンコ店がクラスター発生の元凶であるが如き報道がなされたことがあったが、こうした報道の反省は半年近くになってなされる始末である。

こうしたことを裏付けるように菅新政権に対する支持率などの世論調査が行われたが、多くの専門家の予測を大きく裏切り、周知のように新聞各紙のほとんどが60%以上で日経新聞に至っては74%の支持となっている。
(朝日新聞6+5%、毎日新聞64%、共同通信66%、日経新聞74%)
実はこうした新政権への世論調査結果の前に、安倍全総理が辞めるに至った背景に世論形成のポイントがある。潰瘍性大腸炎という難病による辞任であり、失政による辞任ではないことが以降の世論形成に作用している。辞任表明後の世論調査では内閣支持率はそれまでの不支持から支持へと大きく変化した。また、次なる総理候補として菅氏、石破氏、岸田氏の3人が候補となったが、その時の世論調査にはこれも大方の予想に反し、菅氏への支持が多い気かった。安倍政権の継承を掲げた菅氏への支持であり、党内野党として政権を批判してきた石破氏には後継者には当たらないという生活者のヒュかである。そして、結果として地方で強いと言われた石破氏を大きく話した総裁選であった。多くの評論家やコメンテーターが「世論」がなんであるかを見ずそれまでの「政治」に依拠した意見によるもので大きく予測は外れることとなる。つまり、こうした経過を見てもわかるように、「世論」は病気辞任による無念ささなど安倍氏への道場と一sた感情で世論が形成され、菅氏への期待は「叩き上げ」「有言実行」といったそれまでの安倍政権にはなかった新しさに期待感情をもったということである。ある意味、世論調査とは人気投票であり、多くのジャーナリストはその「人気」がどういうことであるのか見誤ってきたし、今もその傾向は続いているということだ。勿論、今後菅政権のぁつどうしだいではこれまで支持してきた「感情」が逆転へと向かうということでもある。

ところでこれまでのGo To トラベルの利用内容であるが、1泊3~5万円といった高級ホテルや旅館利用が多く、このキャンペーンを機会に安く泊まる理由が多く、1万円以下のホテルや旅館は少ないとのこと。これはデフレ時代にあって、金額が高い方が「お得感」が得られるからで、1万円以下の施設は独自に回数利用の「お得」を計画すれば良いということである。例えば、、近くの飲食店などとこたぼレーションし、更なる「お得」を創れば良いうということである。あるいは思い切ってそれまでのコンセプトを変えることも必要であろう。言いフル尽くされてきたコンセプトである「泊食分離」もあれば立地がロードサイドであればファミリー向けの格安ロッジといった業態もあるかもしれない。いずれにせよこの機会にアイディア・知恵をもってやってみることだ。
このGo To トラベル利用が今一つとなっているのは前回の未来塾にも書いたが、旅行する側も受入側もまだまだ恐怖心が残っており、萎縮しているからである。それは確か7月上旬に行われた読売新聞による調査で明らかになっていたので、この夏の帰省も激減するであろうことは予測できたことである。
このGo To トラベルが意味するしていることは、「ウイズコロナ」「コロナとの共生」といったことの具体的な「行動」であり、対象となった旅行先は紛れもなく「地方活性」の呼び水としての意味を担っている。それは今までの訪日外国人観光客を対象とした「観光」ではないということである。3月のブログにも書いたことだが、これまではインバウンドバブルであったとし、観光魅力の「原点」に立ち帰ることだと。私の言葉で言えば数年前から描いてきたことだが、全国各地にある「横丁路地裏」観光である。表通りの名所観光ではなく、まだまだ知られてはいないその土地ならではの小さな魅力を観光という表舞台に上げることであると。それは日本人すら知らない魅力で、その魅力に数年前からフランスの観光客をはじめ路地裏にある小さな観光が実は日本固有のテーマになっているということである。別な言葉でいえば外国観光客の「日本オタク」のような楽しみ方である。
今、出かけることに躊躇している都内のシニア世代は盛んに銀座周辺にある地方のアンテナショップ巡りが再燃している。こうした変化を見てもわかるように地方にはまだまだ宝物が眠っているということである。

ちょうど19日からの44連休の最中であるが、8月の帰省期間とは異なって多くの人が移動しはじめている。日本航空と全日空によれば、19日からの4連休では初日(19日)と最終日(22日)の予約数が8万人を超え、日本航空で去年のおよそ7割、全日空で去年のおよそ5割まで戻ってきているとのこと。新幹線の利用客も、去年の2割あまりにとどまったお盆期間に比べ徐々に回復し、JR東日本の新幹線の指定席予約状況は17日時点で去年の5割を上回っているとのこと。
10月からは除外されてきた東京都もTo トラベルに参加できるようになり、こうっした「移動」もさらに活性化されていくであろう。但し、この4連休の移動を見てもわかるように、生活者は極めて慎重であることがわかる。周知のようにトラベル事業は新型コロナウイルスの感染拡大で需要が激減した観光業界の支援策として7月22日に始ま利、宿泊旅行で7300万人分、日帰り旅行で4800万人分の予算を確保している事業である。先日の記者会見では「Go To トラベル」を利用した宿泊者が8月末までに1339万人に達したと発表した。この数字を見て成功・失敗の論議は不要である。何故なら、当初の「正しく 恐る」という命題に対し、その「正しさ」がかなり分かりはじめ、自らの判断で行動しはじめたからである。多くの誤報道や過剰な恐怖心を煽る情報を経験しながら、ロックダウンではなく、セルフダウンという自律した個人へと戻りはじめたということである。

こうしたコロナ禍の顧客を前にしているということである。先日、あるショッピングセンターの顧問の方と話す機会があった。主に出店しているテナントの動向についてであるが、政府からの助成はもとより、金融機関からの借入も膨らみさらなる苦境に立たされているとのことであった。そこでお話ししたのは、今もお元気と思うがヨーカドーの創設者である伊藤雅俊さんが常々話されていた言葉、「小売業は小さな商いで、小さなアイディア業である」を話をした。営業時間を短縮したり、シフトの編成を変え人件費を抑制したり、・・・・・・こうしたことも必要ではある。しかし、社会の変化に即したアイディア商売も必要で、菅総理の地元である横濱橋商店街では菅総理が99代ということから、99円、990円、の売り出しを組んでいる。一見つまらないアイディアのように見えるが、そうした小さなアイディアの積み重ねの中から、一つか二つヒットするものが出てくる。
かってビジネスの師であったP.ドラッカーは次にようにその著書に書いていた。

未来は分からない。未来は現在とは違う。
未来を知る方法は2つしかない。
すでに起こったことの帰結を見る。
自分で未来をつくる。

つまり、自分で未来をつくらないのであれば、「すでに起こったことの帰結を見る」という方法をもとに予測していくしかない。「既に起こった帰結」とは、次々と起こる変化、消費の変化はもとより社会の変化を観察すること。そして、それら変化は一時的なものではなく、大きな潮流としての変化、生活価値観の変化であることを検証する。更に、この変化は意味あるもの、つまり重要なことであると認識した時、その市場機会をもたらすものであるかどうかを問うこと。
今回のコロナ禍に置き換えていうならば、顧客の中に「未来」をみるということしかない。敢えて、アイディア業であるとしたのもとにかく小さな試み、小さな売り出しを組んで実行することにある。例えば東京十条の商店街に「鳥大」という鳥肉専門店がある。1日1万個売る「チキンボール(1個十円)」が人気の行列店であるが、取材に「ほぼ90%元に戻った」と答えていた。顧客の中に1個10円のチキンボールに「未来」が見えたということである。旅行に関していうならば、Go To トラベルから除外されていた東京が10月から参加することとなった。例えば、苦境のバス業界であるが、1990年代後半倒産の危機のあったはとバスは宮端さんという良き経営者を迎えて再生したのだが、それは現場による再生であった。その再生については10年ほど前に「100-1=0、マニュアルという罠 」というタイトルでブログに書いたことがあった。(是非gポチドクください)その再生着眼の一つが顧客情報の収集と活用であった。ドライバーや添乗員がその日あったお客さまの小さな声、本音をメモし、それを「お帰りボックス」に毎回入れる。そうした小さな声を集め以降多くのヒットメニューを生み出すこととなる。これも顧客の中に未来を見て、次々とアイディアメニューが生まれ再生した良き事例である。東京除外が外され、はとバスはどんな変化を見せるのか注目したい。(続く)


タグ :コロナ禍

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:08│Comments(0)新市場創造
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