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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2020年05月31日

未来塾(40)「正しく、恐る」を学ぶ 後半 

ヒット商品応援団日記No767(毎週更新) 2020.5.31.

未来塾(40)「正しく、恐る」を学ぶ 後半 



「正しく、恐る」を学ぶ


緊急事態宣言を終え、首都圏を含め段階的に社会経済を取り戻す「出口」戦略が始まった。その「出口」には2月から始まったコロナ禍の評価と、それらを踏まえた「次」の日常のあり方を模索し行動することにある。
この4ヶ月間は厚労省・専門家会議からの一方的な「要請」に従ってきたが、それら要請は感染症という疫学からの根拠によるものであった。そして、政府はやっと諮問委員会の組織に拡大し4名の経済学者を有識者として加え「出口」の指針を社会経済からの視点を踏まえたものへと進めてきた。
やっとという感がするのだが、この間観光産業や飲食業、あるいはスポーツや文化イベント業界は経営の悪化は勿論のこと倒産・失業が急速に増加してきている。休業などへの支援事業や給付金の支給など、困窮する事業者や生活者にはほとんどが届いていない状況となっている。こうしたニュースは日々報道されているのでここでは書き留めることはしない。

さて本題に戻るが、これから「出口」とすべき「行動」をどうしたら良いのか、それはとりもなおさずこれから長い付き合いとなるコロナウイルスとの付き合い方、共存のあり方でもあるからだ。そのためには本当に専門家いぎが行ってきた対策で良いのか、それは疫学的な意味だけでなく、生活者が取り入れることのできる物でなければならないということである。
まず専門家会議が予測してきたシュミレーションは尽く外れてきた。その象徴が「このままでは42万人が死ぬ」というまるで予言者のような発言であったが、死者数は700名台で人口比で言うと極めて少ない国となっている。韓国、台湾、タイなども同様で、欧米と比較スレな数十倍どころか数百倍の少なさである。新型コロナウイルスへの対応が遅れ、PCR検査も少ない日本が何故少ないのか逆に世界の注目を集めている状況でもある。ある感染症学者に言わせると、「結果、オーライでいいじゃないか」と。そんな非科学的な考えの感染症学者がいるとは驚きであるが、少なくとも「出口」をどうすべきか、今わかっている「事実」をもとに考えていくことが必要である。

「正しく」理解、そのための第一歩

今、何が正しいのか、新型コロナウイルスの正体は明らかにはなっていない。唯一、国民が疑問に思うことや、専門性の高いことの理解う促すために最新の情報を公開してくれている。専門家会議がよく使う言葉に、実効再生産数がある。人にどれだけ移したか、その感染度合いを図る指標で、1未満であると感染は縮小にあり、1以上であると拡大にあると言うもので世界各国で「出口」を考えるうえで使われる指標である。山中教授は日本の各都市からデータを取り寄せ、自ら計算し、各地域の感染状況を報告してくれている。残念なことに東京はデータが不備であったことからグラフ化されてはいないが、少なくとも国民の多くの理解に応えてくれている。新規感染者の増減で一喜一憂するのではなく、どんな感染状にいるのかを「正しく」理解する第一歩となっている。
こうした理解をしているのだが、最大の疑問は何故日本は各国と異なり、感染者数、死亡者数が少ないのか、その理由についてである。それは「結果オーライ」ではなく、どんな「出口」を目指していくのか、一人ひとりのこれからの行動に直接つながっていくからである。
ちなみに、山中教授はわかっていないことをファクターXと呼び、次のように提示してくれている。
ファクターXの候補
・感染拡大の徹底的なクラスター対応の効果
・マスク着用や毎日の入浴などの高い衛生意識
・ハグや握手、大声での会話などが少ない生活文化
・日本人の遺伝的要因
・BCG接種など、何らかの公衆衛生政策の影響
・2020年1月までの、何らかのウイルス感染の影響
・ウイルスの遺伝子変異の影響

極めてわかりやすい疑問点である。本来専門家会議が答えるべきことであるが、やむにやまれず提言してくれていると言うことだろう。

未来塾(40)「正しく、恐る」を学ぶ 後半 



山中教授もマスク着用などの生活習慣があることを挙げており、世界に誇れる国民皆保険や高い医療技術も致死率を下げていることは生活実感からもわかる。ちなみにマスクの着用は100年前のスペイン風邪が流行ったときに着用され、以降生活習慣化している。
前述の免疫学者多田富雄さんは多くの対談をしているのだが、その中で免疫をわかりやすく解き明かしてくれている。例えば、私たちは海外へ出かけ、その土地の水や食べ物によって下痢など体調を崩したことがあったと思う。勿論、現地の人にとっては何の問題もないのだが、それは図の左にある「自然免疫」が備わっているからであると。
今回の新型コロナウイルスについても何らかの自然免疫を促すようなものがあるのではないかと言うことである。実は、こうした自然免疫との関係は明らかにしてはいないが、あの山中教授もそうした何かを「日本の感染拡大が欧米に比べて緩やかなのは、絶対に何か理由があるはずだ」と指摘。その理由をファクターXと呼んでいるが、感染症研究者ではないことから具体的には語っていない。これは勝手な推測であるが、日本人の多くには何らかの遺伝子が備わっているのではないか、つまり自然免疫が備わっていると言う仮説である。
何故、こうしたことに言及するのは、医療の世界ではワクチンや治療薬の開発に役立つこととともに、私たちの生活行動のあり方に一つの「視点」を与えてくれるからである。つまり、「出口」への取組につながるからである。
注)東京新聞の解説では次のように解説している。
「獲得免疫とは、感染した病原体を特異的に見分け、それを記憶することで、同じ病原体に出会った時に効果的に病原体を排除できる仕組みです。適応免疫とも呼ばれます。自然免疫に比べると、応答までにかかる時間は長く、数日かかります。」

緊急事態宣言が解除され、全国で「出口」と言う入り口がスタートした

専門家会議からコロナとの共存を図るための「生活様式」が提示されている。とにかくあれもこれもと、大きなお世話であるようなことまで事細かなものだが、内容については具体的なものはほとんどない。当たり前のことだが、唯一確認しなければと思うことは「出来る限り接触」を避けることであろう。
ソーシャルデイスタンス、あるいは三密・・・・・・そんなこと言われるまでもなく、何十年もの間季節性インフルエンザで経験してきたことを横文字を使ったり、欧米で使われている言葉を持ち込んだりしているだけである。

未来塾(40)「正しく、恐る」を学ぶ 後半 



写真を見ていただきたい。緊急事態宣言中の東京の通勤風景である。2mの距離ではないが、少なくとも「密」な距離ではなく、ごく自然に一つの間隔をとって歩いていることがわかる。
しかも、なんと全員がマスク着用である。専門家会議に言われるまでもなく、よくわきまえた「大人」の行動をとっている。こうしたことを話すと、休業要請に従わないパチンコ屋とその開店を待つ行列を非難するTVメディアのコメンテーターがいる。できれば一定期間休業して欲しいとは思うが、行列を作る人たちの多くは「ギャンブル依存症」であり、しかも両替換金と言う違法ギャンブルは黙認されたままである。そして、一番重要なことは、パチンコ屋で大きな感染クラスターが発生したかである。そうした事実を踏まえないで非難することは「自粛警察」と何ら変わらない。
また、出来る限り外出を控えるようにとのことだが、これも山中教授が公開しているのだが、Googleが行っている世界各国の「移動」データについてもロックダウン(都市封鎖)した都市よりも東京の方が移動は小さい。移動についても十分わきまえた行動を一人ひとりとっていることがわかる。

緊急事態宣言下にも、生活者の賢明さが生まれていた

「巣ごもり」要請は守りつつ、専門家会議が提示した感染のリスクが大きい「三密」を巧み避ける懸命さは生活の至る所で見せていた。それは理屈と言うより、東京の場合は屋形船であり、大阪の場合はライブハウスのクラスター発生を実感したことによる。
そうした「密」の逆は何か、それは「オープンエア」であると誰もが考える。公園の散歩やキャンプ好きであれば家族とのバーベキュー。ジョギング好きであれな、東京の場合多摩川の土手沿いのコストなる。休みの日には河川敷のゴルフ練習場もテニスコートもいっぱいとなる。こうした光景をTV曲のコメンテーターはさも心配そうに「自粛」を勧める。まるで「自粛警察」の応援団の如き有様である。

未来塾(40)「正しく、恐る」を学ぶ 後半 



この傾向は街中の飲食店にそのまま取り入れられていく。少し前に大阪梅田や横浜桜木町の「立ち飲み」居酒屋を取り上げたことがあったが、オープンエアの店づくりは今後さらに広がっていく。閉じられた空間ではなく、外の空間と一体のような店づくりである。居酒屋は勿論カフェも食の物販も同様である。ある意味「屋台」感覚の新しい店づくりとなる。冬場はどうするのかと言う横槍が入りそうだが、博多天神の屋台村を参考にすれば良い。既にこうした試みは佐賀県では「ナイトテラス」として一つの実験が始まっている。これは店前の歩道をテラスとして使う許可を与えての実験である。

経営の指標が変わってきた

飲食店の場合、坪効率と言う判断指標がある。経営者であれば熟知しているものだが、「三密」を避けることから、従来の坪効率の考え方を変える必要が生まれる。顧客同士、あるいはスタッフとの間の距離を広くとることが必要であり、結果客数は従来と比較し半分以下となる。同じ売り上げを目指すとなると客単価を上げることしかない。もしくは賃料を下げてもらうことしかない。
出口を目指しすた^としているが、恐怖後遺症は残っており、今までと同じような客数も期待できない。この緊急事態宣言中、多くの飲食店は一斉に「弁当販売」を始めた。ある天ぷら専門店は、お弁当屋さんになってしまったと嘆いていたが、生き延びるためには必要なことであった。
勿論、弁当販売だけでは経営は成立しない。例えば、飲食チェーン店の場合、これから先の生き延びる道は「テイクアウト」や「通販」と言う方法で新たな売り上げ・利益を得ていく方法しかない。その事例は、定食チェーンの「大戸屋」における冷凍食品の通販事業である。このように他の流通チャネルとのコラボレーションや提携によって経営を維持させていこうと言う試みである。
もう一つの試みが、人件費を削減する試みで、「セルフスタイル」の導入である。人によるサービスを減らし、賃料と共に重い負担となっている人件費を、顧客自身によってサーブしてもらう仕組みへの転換である。例えば、居酒屋であればビールサーバーを用意し顧客自身にやってもらうとか、あるいは調理の多くをロボットで行うなど、人件費を抑えた経営となる。

こうした試み以外に専門店としてどう生き延びりかである。先日、東京美々卯6店舗が廃業することを決めたと報道された。少し前には152年の歴史ある歌舞伎座前の弁当店「木挽町辨松」が廃業となった。こうした老舗だけではなく、街中のある中華屋さんも蕎麦屋さんも「文化」はある。特に、寿司店などはどうすべきか悩むところであろう。江戸前寿司の場合、握ってくれる職人に相対して、すぐに食べる、そんな文化である。天ぷら然り、焼き鳥も同じである。顧客は味だけでなく、文化をも楽しんでいるのだ。しかし、そんな文化を少しの間止めることも必要である。職人も顧客も「仕方がない」ものとして理解するであろう。

全国で「出口」を目指した活動が始まった。当分の間、「恐怖」の後遺症は残っており、不安は依然として心の片隅にある。散々煽って来たTVメディア、特にワイドショーは次に秋冬の季節インフルエンザが心配であると視点をずらし不安を増幅させている。
そうした中、「セルフダウン」という成熟した賢明な市民は浮かれることもなく日常に戻っていく。そもそも「自粛」には明確な物差しなどない。一人ひとりの判断に任せられていると言うこと以外にはない。私のブログには過去のヒット商品をはじめ検索する人が多くなっている。次の「出口」模索していることがひしひしと伝わってくる。

1980年代、1990年代初頭のバブル崩壊後、大きな転換期には必ず新たな「何か」によって新たな需要をつくって来た。それは、新しい、面白い、珍しい、「何か」であった。今回の「出口」に必要なことは何かである。まだその次なる「芽」を見ることはできない。しかし、間違いなく「外」からの着眼ではなく、足元にある「内」に眠る何かであろう。1ヶ月前のブログに観光産業、インバウンド事業について少し書いたが、それは「バブル」であったと言う認識からのスタートであると。それは単なる原点回帰としての「何か」ではなく、もう少し奥にある「何か」である。見過ごされて来た何か、当たり前であった何か、小さすぎて大事に思ってこなかった何か、つまり、日常の中に埋もれさせて来たものを今一度表へとテーマにしてみると言うことである。
インバウンド的な見方に立てば、日本人がある意味「無視」して来たことに、多くの海外の人たちが「クールジャパン」としてアニメやコミックが世界の表舞台に上がったように。それは地方の観光地にも必ずあると私は確信している。今は入国制限されているが、次第にコロナ禍は鎮静化していくであろう。いつになるかそれはわからない。しかし、生き延びれた時、その「何か」は多くの人を魅了するはずである。

観光は文字通り平和産業である。その最大の障害が実は「不安」であり「恐怖心」である。いつまで恐怖が残るかそれはわからない。3.11東日本大震災の時もそうであったが、その後の「余震」によって恐怖心が蘇って来た。今回のコロナ禍も新たな感染者報道によって同様の恐怖心が蘇るであろう。
そして、原発事故によってもたらされた放射能汚染。汚染された福島は「怖い」という風評が至る所で起こったことがあった。これもまた同じようにコロナ汚染の巣であるかのように東京人を見る差別があり、しかもコロナと最前線で戦っている「病院」があたかも感染の巣であるかのような根拠のない「うわさ」が流布されている。結果、地域住民の病院利用者が激減し、病院経営が苦しくなっていると日本医師会はその窮状を訴えている。これも「恐怖心」からである。
出口を前にして「正しく 恐る」という原点に立ち返ることが、今問われていると言うことだ。









タグ :コロナ禍

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:02│Comments(0)新市場創造
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