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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2020年02月11日

移動抑制が消費を直接低下させる 

ヒット商品応援団日記No757(毎週更新) 2020.2.11.

移動抑制が消費を直接低下させる 


報道されるニュースのほとんどが新型コロナウイルスの感染で埋め尽くされている。ウイルスの正体が未だわかっていないためその「不可解さ」に不安が生まれ、マスメディア、特にTVメディアが不安を増幅させている。毎日のように感染者数や死亡者数が右肩上がりのグラフで図解される。ところが米国での季節インフルエンザによる患者数が1900万人、死者数は1万人を超えたことなど日経新聞以外はほとんど報道されない。挙げ句の果ては例えばクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の寄港地鹿児島でのオプションツアーでどこに立ち寄ったか感染させたか「犯人探し」までいきついている始末である。このことは日本国内ばかりか、例えばCNNなどでは新型コロナウイルス感染のニュースにおいては、中国からの感染の「ハブ」の象徴としてクルーズ船を取り上げている。世界における感染者数の多さについては日本は際立って多いのは事実ではあるが、世界の見方と言えば感染の媒介国であるかのようなニュースさえある状況だ。そこから中国人、日本人を含めたアジア人へのウイルス差別も生まれている。TVメディアをはじめとしたマスコミによる情報の「刷り込み」から自らを守ること、ここでも過剰情報からの自己防衛が必要となっている。

そして、今回新型コロナウイルス感染で明らかになったことは、検疫における法整備と治療体制の不備であった。こうした感染症の専門家ではないのでコメントできる立場にはないが、日本と中国の経済における密接な関係が数字だけでなく「実感」できることとなった。インバウンドビジネスを見ていくと、2019年の訪日外国人は 3,188 万 2 千人、観光消費金額は4.8兆円。内中国人観光客数は959.4万人、消費金額は1.7兆円となっている。
3年ほど前から東京浅草や大阪道頓堀・黒門市場などの賑わい観察結果を未来塾でレポートしてきたが、ここ数日前の浅草も道頓堀も勿論京都においても観光客のいない閑散とした観光地となっていると報道されている。勿論中国政府による春節における団体旅行の禁止によるものでいかに大きいものであったかを実感することとなった。また、こうした閑散とした状況は日本観光が敬遠されていることを物語っている。それは前述のCNNの報道ではないが、新型コロナウイルスの感染媒介国として、つまり武漢から広がる北京や上海などと同じような見られ方をしていることの「実際」ということ実感でもある。少し前に日本感染症学会がコメントしているように、見えないところで小さな感染が国内で続いているとの懸念を払拭できない。

さて、こうしたグローバル化した時代にあって、新型コロナウイルス感染拡大の少し前まではあの「カルロス・ゴーン逃亡劇」が世界の話題の中心であった。マスマスコミ、特にTVメディアの情報で右往左往しないことだ。そして、実はこうした情報から遮断されているのが消費増税による景気、とりわけ消費の落ち込みである。前回のブログにも書いたが、インバウンド市場の落ち込み、百貨店などの小売業や観光地のビジネスに大きな影響を及ぼすであろうと書いた。そうした影響は出てきてはいるが、観光とは「移動」のことである。インバウンドビジネスとはその移動によって生まれるビジネスである。今回の新型コロナウイルスはその移動に乗って拡散するのだが、感染のスピードに対策が追いついていないという現状がある。数日前、長野白馬のスキー客を対象とした観光産業の地元担当者が、白馬は欧米客が中心で中国観光客は少ないので大丈夫であるかのようにコメントしていた。まるで考え違いをしているなと感じたが、つまり、今起きていることの本質は新型コロナウイルスは「移動」そのものにストップをかけるということである。白馬は中国人観光客が来ていないので問題はない、オーストラりアのスキー愛好家は訪日してくれるなどと間違って考えてはならない。パウダースノー好きのオーストラリア客も移動は抑制されるということである。これがグローバル時代のビジネスの前提である。白馬もニセコも浅草や道頓堀ほどではないが、基本同じであるというこだ。

この移動が抑制されるのは何も訪日観光客だけのことではない。問題なのはインバウンドビジネス市場だけでなく、国内の日本人の消費も抑制されるということである。例えば、今までであれば欲しいな、食べたいな、と思ったら長距離の移動もいとわず行動する。デフレ時代にあってはより安いものがあれば、移動にお金がかからなければ長距離でも移動するが、コスパに合わなければ身近なところで済ませる。あるいは我慢するということになる。これが消費における氷河期の特徴、その本質である。
問題なのはこうした移動抑制心理へと向かわせているのが、「消費増税」である。前々回のブログにて危機的状況にあることを商業統計の数字をもとに書いたが、その時にも少し触れたことだが、増税前の駆け込み需要が予測以上に低かったのは「消費体力」が低くなっているからであると。1997年の5%増税時、2014年8%増税時、と比較し、「駆け込める消費余力」がなくなっているからであると推測した。それは消費を牽引するボリュームゾーンである30歳代の収入が上がらず、高齢者も予測以上に消費しないことが主な理由となっているからだ。特に、高齢者の消費は今回のクルーズ船に見られたように「旅行」が消費の中心となっている。勿論、高齢者も「移動抑制」は働く。

また、旅行という移動とは異なる視点ではあるが、「海外へのモノの移動=輸出」は2018年度は順調であったが、2019年度は前年と比較し、マイナスで推移している。これは多くのエコノミストが指摘しているように米中貿易戦争による理由からであるが、今回の新型コロナウイルスによってホンダ・トヨタを始め多くの日本企業の工場が操業中止になっている。そして、周知のサプライチェーンが機能し得ない期間が出て来ている。こうした中国に生産拠点を移動してきた企業だけでなく、中国に農産物などの委託生産・委託加工している大手スーパーや飲食チェーンも多い。つまり、消費生活に密接な関係を結んでいるということである。まだその影響は出てはいないが、新型コロナウイルスの感染が中国各地方都市に拡大し長期化するとなれば、工業製品だけでなく、食品にも影響が出てくる。つまり、内需だけでなく外需もさらに厳しくなるということだ。

こうした内需・外需共に厳しい状況でどうすべきかである。まず顧客の「移動抑制」についてであるが、逆に言えば「近場」「ご近所」利用が増えてくるということである。しかも、日常利用へのウエイトが高まる。例えば、旅行であれば国内旅行で今まで行ったことのない1泊温泉旅行とか日帰りバス旅、といった旅行になる。従来の人が集まる観光地は避ける傾向となる。しかもその根底にあるのは「安全」「安心」が担保されていることが前提となる。それまでのお得な旅、気軽な旅、しかも安全・安心な旅となる。安全な旅とは、まず利用者が安全を自己確認できることが必要であるということである。それは安全の「見える化」の徹底ということになる。しかも、感染対策の見える化だけでなく、避難や危険防止といった旅の「全体」に渡るものとしてある。

デフレといった視点に立てば「お得」も進化していくであろう。政府も6月までのキャッシュレスによるポイント還元が恐らく9月まで延長されることとなるであろう。そして、氷河期における消費の最大特徴は「自己防衛」へと向かう。それは節約といったことではなく、自己抑制消費に向かうということである。今回の新型コロナウイルス対策には手洗いが必要であり、マスク着用はそれほどの効果はないとされているが、昨年12月からの季節インフルエンザの流行は予測を下回る感染であることが報告されている。これは1月後半からの新型コロナウイルス
に対する自己防衛によるところが大きいと分析する医師も多い。増税やリーマンショック、東日本大震災を経験してきたが、その消費の根底には自己防衛意識が大きく働いていた。実はそこから「わけあり」といった新しいキーワードによる商品やサービス。業態も生まれてきた。どんな時代の次なるキーワードが生まれてくるか、まだ始まったばかりであるが、間違いなく生まれてくるであろう。昨年「サブスク」に注目されたが、顧客も提供企業も、共に納得できる「デフレ消費」社会の到来を象徴するキーワードになる。前回のブログに「何があってもおかしくない時代」が始まったということである。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:06│Comments(0)新市場創造
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