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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2020年01月27日

何があってもおかしくない時代 

ヒット商品応援団日記No756(毎週更新) 2020.1.27.

年が明け街歩きを始めているが消費の低落傾向は深刻の度合いは増している感がしてならない。その深刻さを表すかのように10月以降の「数字」が出てきている。(百貨店協会、SC協会、スーパーマーケットチェーン協会)12月という年末の最需要期にもかかわらずマイナス成長となっている。特に百貨店業界はその度合いは深く地方の店舗の閉鎖・撤退だけでなく、百貨店自体がMDを進め店づくりにもリーダーシップを持って開発運営してきた事業業態の転換が見られるようになった。昨年リニューアルオープンした大丸心斎橋店は出店専門店にMDや売場づくりを任せる方式、いわゆる売り場を貸す不動産賃貸業への転換である。こうした事例は周知のようにDCブランド、ファッションのマルイとして一時代を画したが2007年に中野本店を閉店する。再び2011年1月にオープンするのだが百貨店型の商業施設から、いわゆる専門店のテナント編集によるショッピングセンター方式への転換が図られた店舗運営とその商業構成となっている。一言で言えばマルイもテナントによる賃料収入によって経営を行ういわゆるデベロッパー型小売業へと転換したということである。大丸心斎橋店が丸井と同じであるか正確な情報がないので断定したことは言えないが、消費の変化を映し出すのが商業の本質であることを考えるとすれば、これも一つの生き残り策であろう。
また、各スーパーマーケットチェーン協会の販売統計によると、軽減税率の対象となっている食品部門がマイナス成長になっている点がこの深刻さを表している。特に、12月は正月を迎える需要が一番大きくなる月である。この時期がマイナスであるということは、何を表しているかである。

そして、今回の消費増税で上手く「売り上げ数字」を残せたのはコンビニ業界であると言われているが、小規模事業主への支援として政府からのキャッシュレスポイント還元策とキャッシュレス企業の導入促進策によるポイント還元策が功を奏し増税後の落ち込みを少なくさせた。しかし、これはポイントという「お得」によるもので今年の6月には終了することとなる。現在、政府与党はポイント還元期限の9月までの延長を考えているようだが、果たしてオリンピック・パラリンピック終了後の10月にはどんな「落ち込み」が出てくるか恐ろしく感ずる経営者も少なからずいるであろう。
今、定額料金制の「サブスクリプション」に注目が集まっているが、顧客の固定化・囲い込み策として意味ある結果が出せているのは極めて少数の事業である。物を持たない、収納スペースも限られている若い女性暮らしには洋服のサブスクは良いかと思う。しかし、食べ放題など変化のない「定額」=「お得」は継続するのは極めて難しい。つまり「お得」の終了が消費の終了になりかねない、「お得終了ショック」を迎えるということだ。

消費増税による顧客離れが心配されていたのが飲食業界であるが、ファストフードチェーン業界にあってその準備の結果が売り上げの数字によく出てきている。牛丼大手三社も売り上げ・顧客数も落とすことなく大きな壁をひとまず超えたと言って良いであろう。特に日本マクドナルドは極めて好調で昨年2019年は連結売上高が前期比3.8%増の2825億円になる見通しだと発表した。2014年に発覚した中国製造の賞味期限切れのチキンナゲット事件以降顧客離れ・店舗閉鎖・売り上げ下落・赤字決算・・・・・こうしたマクドナルド不信からの復活を目指したカサノバ社長の店舗巡り・顧客(主婦)対話による信頼回復が図られたことを踏まえ、積極的な新商品導入が売り上げという数字につながったということである。また、こうした商品導入だけでなく、客が注文商品を座席で受け取る「テーブルデリバリー」や、来店前に注文や決済が終わる「モバイルオーダー」。これら新サービスを全国約2900店の約半数で展開したことも大きく影響している。多くの困難を超えることを可能にしたのは顧客主義の基本に立ち戻ったからであろう。

ところで中国で発生した新型コロナウイルスの感染が海外へと広がり、全世界で2700名を超える感染者が出たと報道されている。日本においても4例の患者が確認されている。中国からの報道によると流行地と言われている武漢の封鎖と共に春節旅行における団体旅行を禁止するとのこと。同じような感染症である2003年の時のSARS(重症急性呼吸器症候群)との比較で日本国内でも報道されているが、すでに中国国内では上海ディズニーランドや故宮などの観光地は閉鎖になっているとも。SARSの時は感染が治ったのは6ヶ月かかったと言われている。中国国内ではデマなど風評被害が指摘され始めているが、日本国内においてもそうしたことが起きないとも限らない。この春節には40数万二んの中国観光客が日本を訪れると予測されていた。しかし、東京や大阪のみならず、観光地においてもホテルやバスをはじめピューロランドといった観光においてもキャンセルが相次いでいる。特に訪日中国客を腫瘍顧客としている百貨店にとって予定された売り上げも望めないということである。
数年前から指摘をしているように、訪日観光は全国至る所へ、いわゆる横丁露地裏観光へと広がっている。SARSについても効果のあるワクチンは開発されておらず、有効な対策は感染源の封じ込めと消毒などによる感染を防ぐことだけである。7月には東京オリンピックが始まる。今回のような新型コロナウイルスだけでなく、他にも多くの感染ウイルスが国内へと持ち込まれる可能性はある。観光立国を目指すとはこうしたリスクを引き受け、防ぐことにある。
米国をはじめ中国在留の米国人に対し、チャーター機による帰国が検討され、日本もまた同様の避難計画が検討されているという。つまり、「感染」のスピードを超えた敏速な対策が急務となっているということだ。グローバル化とはこうした認識と対応が、至る所で必要になるということである。

こうした新型感染症リスクも消費増税という困難さもこの時代ならではのことだ。必要なことは「何があってもおかしくない時代」にいるという認識と対応である。前回の未来塾で書いた「不確かな時代」とは災害日本のことだけではない。
数年前のブログだと思うが、観光地でもない町の飲食店にふらりと食べにくる外国人が現れてくる時代であると。その時の良かった思い出がネット上で公開され、次第に人気店になる。その代表例が数年前の大阪西成のドヤ街にあるお好み焼き屋である。こうした「良き思い出」こそが日本固有のサービスであり、「顧客主義」に立脚した商売である。当初どこまでできるかという疑念はあったが、日本マクドナルドのカサノバ社長が全国を回って小さな子供のいる母親にヒアリングし、その顧客である母親に一つの答えを返したのも「顧客主義」である。その答えとは結果としての新メニューであり、新サービスであるということだ。顧客主義とはグローバル時代の原則であるということを再認識することだ。キャッシュレスポイント還元といった「お得競争」もいつかは終わり、次なる満足競争が始まる。何があってもおかしくない不確かな時代とは、顧客主義という基本に常に立ち戻ることであり、それは古くて新しいテーマであるということだ。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:18│Comments(0)新市場創造
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