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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2019年12月15日

案の定、いやそれどころではない落ち込みとなった 

ヒット商品応援団日記No752(毎週更新) 2019.12.15.

「社長からのお願いでございます」という店頭の貼り紙が話題となっている。「いきなり ステーキ」(ペッパーフードサービス)が深刻な売上不振に陥り、社長メッセージとして顧客に訴えた貼り紙である。昨年春以降、前年割れの売り上げが続き、その落ち込み幅が拡大し続けている。その原因としてはいくつか挙げられているが、やはり値上げが大きいと私は考えている。多くの専門店の失敗は値上げがほとんどであり、いきなり ステーキの場合はそのメニューに広がりはなく、新メニュー導入による価格改定=値上げという方法が取りにくい。そのため値上げは直接顧客の財布に向かい、客数減となって現れてくる。しかも、消費増税に向かう期間他の外食チェーン企業が新しいメニューの導入によって顧客の裾野を広げていったのに対し、極論ではあるが単なる出店数を伸ばしていただけである。吉野家もマクドナルドも、周知のように新メニューをどんどん投入し、顧客に向かい合っているのに「規模」の経営しかやってこなかった結果ということである。

消費のの動向については基本的には家計調査を使っているが、消費増税は日本経済の各分野にどんな変化を及ぼしているか、少しマクロ的な視点も必要ということから経産省による10月の商業動態統計の結果を読んでみた。発表された結果であるが、その落ち込み幅の大きさとどんな分野の販売が落ち込んでいるか、その内容にとにかく驚いたというのが実感であった。マスメディアは勿論のこと、ほとんどのメディアは消費増税後の「変化」について報じることはほとんどない。
まず商業販売額であるが、前年同月比▲9.1%、、小売業においては▲7.1%の減少であったとのこと。驚いたのはその業種であるが、まず自動車が▲4.0%の落ち込みとなっている。(この変化については後述する。)
百貨店・スーパー販売額の動向については百貨店は4265億円、同▲17.3%の減少、スーパーは1兆312億 円、同▲3.7%の減少となった。 商品別にみると、衣料品は同▲19.6%の減少、飲食料品は同▲1.4%の減少、その他は 同▲15.7%の減少となっている。
ちなみに百貨店の主力商品である衣料品であるが、その他の衣料品が前年同月比▲29.4%の減少、身 の回り品が同▲23.1%の減少、紳士服・洋品が同▲21.6%の減少、婦人・子供服・洋品 が同▲20.1%の減少となったため、衣料品全体では同▲21.6%の減少となった。
次にスーパーであるが、衣料品は、その他の衣料品が前年同月比▲19.7%の減少、身の回り品が同▲15.6%の 減少、紳士服・洋品が同▲14.8%の減少、婦人・子供服・洋品が同▲13.3%の減少となっ たため、衣料品全体では同▲14.6%の減少となっている。

さてどのようにこの結果を読み解くかである。まず、一番驚いたのは自動車販売でより詳しく見ていくこととする。日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会が11月1日に発表した10月の新車販売統計(速報)によると、総台数は前年同月比▲24.9%減の31万4784台と、6月以来4か月ぶりのマイナスになった。
10月に消費税が10%に増税されて初めての月次統計となったが、9月の総販売台数が12.9%増と駆け込み需要が顕在化していただけに、その反動が強く出たと言われている。9月の駆け込み需要がプラス12.9%増であったとのことだが、それほど大きな駆け込み需要はないと考えられていた。その理由としては今回の税制改革では登録車の「自動車税」が減税となるとのことであまり大きな影響が出ないと考えられてきた。しかし、より詳しく見ていくと意外にも駆け込み需要あ大きかったことがわかってきている。それは軽自動車に現れてきており、「軽自動車税」は据え置きとなったことによる。このため、軽自動車の新車需要は8月、9月と連続して2ケタ増と、駆け込み需要が強めに出ていたので、その反動も大きかったと分析されている。自動車のユーザーは極めてシビアに行動していたことが窺われる。

更に経産省のデータから各業界のデータをもう少し詳しく見ていくこととする。まず百貨店協会における10月の結果であるが、消費税率引上げに伴う駆け込み需要(9月:23.1%増)の反動に加え、台風19号 の影響による臨時休業や営業時間短縮などマイナス与件が重なり、売上高は▲17.5%減となっている。9月の駆け込み需要を考えると、ある程度頑張ったと言えなくはないが、その内容を見ていくと、国内市場(シェア93.4%)が▲17.7%減、インバウンド(シェア6.6%)は購買単価 がプラス(1.2%増)したが、円高基調の為替動向や米中貿易摩擦等の不安定な国際情勢が響き、 ▲13.8%減(256億円)と2か月ぶりに前年実績を下回っている。各店駆け込み需要を狙ったセールを組み一定の結果が得られたと考えられるが、インバウンドは7%弱と大きな比率を占めており、百貨店経営の大きな柱となっていることがわかる。また、商品別には予測通り衣料品は前年同月比▲21.4%とその落ち込み幅は極めて大きい。
百貨店とは異なる業態のSC(ショッピングセンター)はどうかと言えば面白い結果となっている。その結果であるが、10月度の既存SC売上高は、総合で前年同月比▲8.3%と前年を大きく下回った。SCも百貨店同様駆け込み需要を狙ったセールの結果から9月の売り上げは:+8.3%となり、大都市部のSCにその傾向が見られ、これも百貨店と同じ傾向であった。

ところで日常消費の柱となっているスーパーであるが、日本チェーンストア協会によるとスーパーの全店売上高は9751億円と、日数の少ない2月を除くと12年9月以来約7年ぶりに1兆円を下回った。部門別で見ると、衣料品が▲15.1%減(既存店ベース)、住宅関連品が▲7.2%減(同)と振るわなかった。軽減税率対象の食品も実は▲1.3%減となっている。
一方、コンビニはどうかと言えば、スーパーと比較しそのほとんどがFC店=小規模事業者ということから5%還元の対象となり、しかもキャッシュレスによるポイント還元プロモーションも加わり、小売業の中では一番落ち込みが軽かった業種である。こうした「お得策」と共に、店内飲食も持ち帰りも同じ8%とし、差額分2%についてはコンビニ負担という思い切った策が成功したと考えられる。小売はあらゆる機会をビジネスにつなげていくことが基本となっているが、コンビニ各社はまずは増税の第一の波を超えたと言える。

さて冒頭の「いきなりステーキ」に代表される外食産業はどうかである。消費増税前にアパレルファッション産業においては市場の再編が起きているといくつかの事例を踏まえ書いたが、いわゆる衣料品の落ち込みはその通りの数字となって現れているが、外食はどうかである。順調であった「日高屋」の既存店売上高は9月まで11カ月連続でマイナス。「大戸屋」も9月まで8カ月連続でマイナスとなっている。「長崎ちゃんぽん」のリンガーハットもマイナス成長と低迷している。増税後はどうかであるが、数字を見るまでもない。唯一壁を乗り越えたマクドナルドの10月はどうかと言えば、客数は落ちてはいるが、客単価の伸びによってプラスとなっている。

チェーン店ばかりでは消費増税による変化を100%読み取ることは難しいので参考情報として一つのレポートがある。危機が迫っていると感じた時しか参考としないのだが、今回は増税による危機がどの程度のものとなるのか考える参考情報として欲しい。それは嫌な言葉だが「倒産情報」についてである。帝国データバンクと東京商工リサーチの2つがあるが、主に帝国データバンクのプレスリリースを参考とした。
長いデフレ経済のもとでボディブローのようにじわじわと倒産件数が増えてきている。2019年上半期は3,998件となり、特徴的なことは飲食店事業者の倒産が過去最多のペースで推移してきていると指摘している。2019年の飲食店事業者の倒産は11月までに668件発生し、既に前年(653件)を上回った。過去最多となっているのは2017年の707件であるが、2019年はこのままのペースで推移すると通年の倒産件数は728件前後となり、過去最多を更新する可能性が高いと予測されている。また、大型倒産は少なく、負債1億円未満の倒産が全体の7割超を占めているとのこと。
ちなみに、消費税5%導入の1998年の倒産件数は18,988件、リーマンショックのあった翌年の時は15,646件、8%導入された2014年の倒産件数は9,731件となっている。消費増税の影響が本格化するのは2020年である。

さて、こうした「変化」が出てきているが、「消費税10%時代」をどう迎えるかである。いきなり ステーキのような規模の経営は論外であるが、市場の再編の向かい方である。先日、経営再建中の大塚家具が家電量販のヤマダ電機の子会社になるとの記者会見があったが、資金繰りに困っている大塚家具に対し増資分として44億円で合意したとのこと。つまり、別の見方をすれば子会社となった大塚家具の企業価値は44億円程度であったということだ。顧客が求めている家具を含めた新しい暮らし方への創造性など微塵も感じられないもので、そこには「顧客」は存在していない。市場の再編とは、顧客変化に対応してこそ意味がある。
「消費税10%時代の迎え方」をテーマに未来塾においてシリーズ化している。昔は流行った都心のビルであったが、今や老朽化し通りはシャッター通りとなっているが、その界隈だけは賑わっている。そんな「街」を大阪と横浜の2箇所観察してきた。何故、顧客は集まってくるのか、その発想・アイディアをレポートする予定である。(続く)

タグ :消費増税

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