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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2019年11月03日

嘘を見抜く眼

ヒット商品応援団日記No750(毎週更新) 2019.11.3.

食べログによる掲載飲食店への不当な有料会員店への要請が問題となっている。その「不当」とは実際に利用した顧客の評価を点数化し食べログのサイトに公開し、顧客はその評価の点数をもとに飲食店を選択するビジネスである。公取委もサイト運営という優越的地位の乱用ではないかと調査しているとも報じられている。実は2012年にも飲食店との間に介在する広告代理店による口コミの「やらせ」が問題となっている。当時、その「やらせ」の当時者であったのが東京月島のもんじゃストリートの各店で、食べログとの有料取引をしないと宣言したことがあった。この「やらせ」を行ったのは介在する広告会社であったとし、本質としての問題は先送りされることとなった。当時、私は次のような問題の指摘をブログに書いたことがあった。

『あらゆるものが過剰となり価値が下落する、そんなデフレ時代に対する着眼について書いた。案の定というか、すぐさま「食べログ」へのやらせ書き込みについて報道されていた。ランキング順位を上げる為の組織立った書き込みが、39業者に及んでいたということであったが、既に5年程前にもブログが急速に浸透拡大した時も、やらせブログを組織的に行なう新会社が出来ていた。』
更に、次のようにも書いた。
『こうした情報の消化不良がいたるところで起きている。それが単なる消化不良程度で済めば良いが、「食べログ」のやらせ問題のように、判断基準を丸ごとネット上のランキングサイトや口コミ等に求める生活者が圧倒的に多くなった。そして、スマートフォンの普及は更に便利な道具として身近な、いやスマホ依存症のような情況に至りつつある。簡単に言ってしまうと、情報リテラシーの課題になると思うが、過剰情報時代とは、活用すべき判断基準をなかなか持ち得ない時代のことである。結果、どういうことが起きるか、膨大な情報を前にして一見選択肢が豊かであるように思えるが、逆に限られた特定情報のなかの選択となる。つまり、特定情報への集中現象が多発するということである。』

8年近く前に書いたブログであるが、ここ数年更に過剰な情報が横溢する「間隙」を縫うような白でもなく、黒でもないような「まことしやかな情報」が増加の一途を辿っている。その白黒判別し難い情報の第1は顧客の声という「情報提供源」の不確かさである。特にネット社会の匿名性に因るところが大きいが、食べログに関するテーマを書いていたところ京都市の宣伝に関し問題が出てきた。その問題とは市を宣伝する内容のツイートを有償で依頼していたと京都新聞が報じたものである。吉本興業の芸人らが投稿したツイートには、広告主が市であることを示すような表記がなかったことから、Twitterなどでは「ステルスマーケティングではないか」という批判が相次いでいる。
ステルスとは「わからないように」目的を達することで、食べログにおける「口コミ」という顧客の声として活用していくということと同じである。つまり、一方的な広告ではなく、顧客に因る評価であることで、安心して使ってもらおうという意図である。情報の時代は1970年代のTVメデイアが主導してきた。新しいスタイルやトレンドを創造提案してきたという歴史がある。少なくともネットメディアが主導するまでは責任の所在を含めて情報源=広告主を明確にしてきた。今回の京都市の宣伝などもペイドパブ(有料パブリシティ)として明確に伝えれば問題はなかった。例えばTVドラマで使われる衣装についても協賛とか衣装提供として企業名やブランド名を明確にしてきていた。しかし、ネットメディアの浸透によってその明確さは匿名世界によって消滅しつつあるのが「今」である。
食べログを見てもわかるように実態を伴わない抽象的な「顧客の声」という名のもとに他店との有意差を作るという手法である。しかも、どのように評価点となるのかその仕組みも公開されてはおらず、これもユーザー側も飲食店側もブラックボックスのままである。

また、こうした情報に関する問題はネットメディアばかりでなく、TVメディアについても「やらせ」という情報の捏造が今なお見られる。古くは1996年~2007年に放送されたフジテレビ系列の生活情報番組。毎回、健康・からだ・食に関する様々な情報を紹介し、平均視聴率は15%前後と、安定した人気を誇っていた番組の一つが『発掘!あるある大事典』である。当時奥の専門家から「無意味な実験を行っている」「データの根拠が曖昧」などの指摘が上がっており、いわゆる「納豆ダイエット」事件が起きる。制作会社である関西テレビの内部調査により行ってもいない検査データと、被験者と無関係な写真資料を番組内で表示していたことが判明。さらには、教授のコメントまでもがスタッフの創作だと明らかになった事件で、周知のように番組打ち切りとなった捏造事件である。
ここまでのひどい捏造ではないかもしれないが、最近になってもレビ朝日は「やらせ」「不適赤」な選出があったと謝罪をしている。今年3月に放送された平日夕方の報道番組「スーパーJチャンネル」で“やらせ”があったと明らかにした。それは夕方の報道番組「スーパーJチャンネル」で、デフレ時代に注目されている業務スーパーの取材に客として登場した5人が、番組スタッフである男性ディレクターの知人であった。食べログにおける「顧客の声」の構図と同じであるが、食べログにおいては掲載されている顧客の声は「干支的」「恣意的」なものはどうかがブラックボックスになっているためわからないが、テレビ朝日の場合はちゅじんが客を装っていたという事実は完全に「やらせ」であろう。

虚と実、真偽、嘘と本当、それらが混在し、変化し続ける時代そのものへの戒めとして「リテラシー」が重要であるとしてきた。リテラシーを簡単に言ってしまえば「情報活用力」のことであり、情報の受け手である私たちが情報の真偽・重要さを見極める力を持つことが必要であるとしてきた。しかし、情報洪水の中でその見極めは極めて難しい。競争の原理から見ていけば、「わかりやすくする」ことが第一で、例えばトランプ大統領による「戦略用語」として「フェイク(嘘)ニュース」という言葉がツイッターを通じて世界中に拡散されている。この「戦略用語」という意味は、政治の常套手段である「敵を創る」ことを通して、自分の主張世界をより強固にするという意味である。結果生まれたのが「分断」「対立」であったことはその後の米国の政治状況を見れば明らかである。日本の場合はどうかと言うと、消費に関して言えば「嘘」がバレれば徹底的に非難され、休止、破綻、消滅へと向かう。2000年代に入り、つまり情報の時代が本格化する時代に起こったのが「情報偽装」であった。耐震偽装事件から始まり、前述の「発掘!あるある大辞典」のような「やらせ」という情報偽装、食品偽装としては船場吉兆の「ささやき女将」で話題となった料亭の廃業。「嘘」が明確になった時の消費者の判断で明確になった事例がある。2008年に工業用米・汚染米を食用米として偽装した三笠フーズが起こした事件である。その汚染米事件は、その後食用には使ってはいけない汚染米の使用を知っていて使った美少年酒造は破綻し、知らずに使ったがそれら全てを廃棄し、正直に記者会見を行った薩摩宝山(西酒造)は逆に正直であったことから見事に復活しヒット商品となった。こうした事象を見てもわかるように「正直」に信頼をおける社会がある。更にいうならば、精進料理を源にしたがんもどきのような「もどき」食品、ことなを変えればフェイク食品を食してきた。最近ではカニカマといったヒット商品まで生まれている。「嘘」と「フェイク」の世界をわきまえた日本人の精神世界をよく表した事例である。

さて、「嘘」を見抜く力とは、嘘がわかった時に明確に「消費」の判断・態度を下すと言うことに尽きる。少し前に未来塾「居場所を求める時代」の中でTV番組の一つに『ポツンと一軒家』(ABCテレビ制作)を取り上げたことがあった。日本各地の離れた場所に存在する一軒家に暮らしている人物がどのような理由で暮らしているのかを衛星画像のみを手がかりにした上でその場所に行き、地元の情報に基づいて一軒家を調査する内容である。NTV系のライバル番組『イッテQ!』を上回る17〜18%の高視聴率を得ているという。(ライバル番組『イッテQ!』は周知の通り、「やらせ」が発覚し謝罪した番組である。)
表舞台には決して出てこない暮らし、いや人生そのもへの興味関心が高まっていると言うことである。食べログとの比較で言えば、例えば評価点が低くても「あの頑固親父が好きだから」あるいは「自分が美味しい」と思えば利用し続ければよいのだ。食べログに評価点が掲載されていない飲食店を巡るのも面白いかもしれない。不確かな評価点から外れた中に新しい「発見」があるかもしれないと言うことである。そうしたオタクのような消費ではなく、まずは自身の食体験に信頼し自信を持つことである。それは情報が嘘であったとわかった時、二度と使わないことは言うまでもない。「便利さ」の罠にはまった自分を戒めればよいと言うことだ。そうした体験を重ね、白でなく、黒でもない、グレーな時代の知恵が磨かれていく。飲食店の側に立てば、「嘘」と「フェイク」の違いが分かっている顧客を信じるということだ。(続く)


タグ :食べログ

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